アマチュアレスリングでの輝かしい実績を引っ提げ、今年1月にプロレスデビューをはたした山岡聖怜(やまおか・せり)。マリーゴールドでのデビュー前から“美少女JKレスラー”として注目を集めていたが、もちろんプロレスラーとしてのポテンシャルも折り紙付き。“スーパールーキー”の冠に偽りはないことを証明している。
そんな彼女がデビュー後にあたり、悩んだことのひとつがプロレス特有の技術だったという。
「私の場合、受け身の多さに抵抗はなかったです。プロレスはそういうものだとわかってきたし、そんなプロレスが好きで入ってきたので。でも実際にとってみると、プロレスの受け身って本当に難しいですね。とくにある程度できるようになってからなんですけど、後ろ受け身が急に怖くなった時期があって。それまではバンバン取ってたのに、怖さを知るとできなくなってしまって…」
ロープワークや受け身の習得は、どの新人にも必須科目。それでいて、彼女のように怖さを知ってから伸び悩むケースも多い。そんなときはもうとにかく数をこなしていくしかないようだ。そのうえで、彼女には周囲からの声が練習へのモチベーションを上げてくれるという。
「すごく悩んだ時期もあったんですけど、そんなときには周囲からの期待が励みになりました。応援してもらっている声が支えになったんです。確かに周りからの期待ってプレッシャーになるかもしれないけど、そのプレッシャーがなんだかんだと自分の背中を押してくれるんですね。こんな悩みで立ち止まってる暇はないぞってね。実際、ネガティブな声もありますけど、だったら練習して覆してやろうって思えるんです」
そこから得意になったのがドロップキックだという。もちろん、アマレスでは使わない技だ。それでいてドロップキックはプロレスの基本技。美しいドロップキックを見ると、“プロレス見に来たな”という気分にもさせてくれる。「自分のドロップキック、大好きなんです」と、山岡はプロレスで習得した得意技に自信を持っている。美しいドロップキックをさらに磨き、自分にしか出せない、他者とは違うドロップキックに仕上げていくつもりでいる。
では、アマレス時代と共通するプロレスの練習はあるのだろうか。
「ええ、ありますね。まず普段のことからなんですけど、たとえば歩き方。歩き方ひとつをとってもトレーニングになります。普通に歩いていても意識すれば筋肉ってつくんです。階段を上るときだったり、少しつま先立ちしたり。そこはアマレスのときからほぼ変わらなくて、今も意識して歩くようにしています。アマレスとプロレスでは使う筋肉も違うんですけど、基本、変わらないところもあります。違うところと言えば、プロレスは“お肉”も大事ってことですかね」
受け身を取るときにある程度の厚みが必要ということなのだろう。かつてはそれが定説だったが、近年では必ずしもそうではなくなり、バキバキでいわゆる“カッコいい体”のレスラーも増えた。それでいて、彼女のように実体験からある程度分厚い筋肉もほしいと考える選手もいる。
では、筋肉をつけるためなど、日頃から取り組んでいるトレーニング法とは?
「自分は、あえてマシンとかあまり使わないようにしています。なぜなら、動いてつける筋肉を大事にしたいので。器具でいま使うとしたら、チューブとか握力をつけるハンドグリップですね。あとは自重のトレーニング。具体的には腹筋、腕立て伏せ、スクワットといった本当に基礎のところですね。あとはアマレスもプロレスも、体幹が大事です。ここは共通しているところで、体幹を鍛えるには、プランクが一番ききますね。また、走ることでは坂道ダッシュ。そのあと、呼吸を整えるように歩くのも大事だと思っていて、散歩したり走ったり繰り返すというのを結構するようになりましたね」
練習にはもちろんプロレスのスパーリングも加わる。そして練習後にも、食事を含めて体のケアは欠かせない。アマレスからプロレスに転向した山岡のボディケアとは、どういうものなのか?
「体、筋肉を大事にしたいので、プロテインとか、鶏むね肉、卵、納豆、ブロッコリーはけっこう意識して取っています。そこは増量減量関係なくやっていますね。もともと鶏むね肉とか野菜とか好きなので、同じでも苦にはなりません。あとは食べたいもの食べられるようにチートデーを作って、揚げ物を食べたいときは、チートデーに摂るようにしています。そんな感じで、どんどん筋肉がついていくのを実感しています。試合を重ねていくとメッチャ筋肉痛にもなるんですよ。これで、試合って筋肉にすごい負担をかけてるんだなとわかります。
なので、しっかりとケアすることは欠かせませんね。整体に行ったり、寝る前に湿布を貼るのを忘れないように。お風呂に浸かりながら、柔軟運動とか、塩もみでマッサージもします。けっこういろいろ試してみたりしてますよ。いま一番いいなと思ってるのは、夜寝る前に湿布を貼る。ふだんから脚にはけっこう負担かかってるじゃないですか。歩くだけでも負担はかかるし、試合で闘えばなおさらですよね。なので、痛くなくても負担はかかっているので、湿布を貼って寝ると、気持ちよく朝を迎えられるんですよ」
一度はケガで断念したアスリートとしての自分。しかしプロレスに出逢い、まったく異なる形ながら新しい夢が生まれ、それを次々と叶えている。「プロレスラーになって本当によかったです」と山岡は言う。そんな彼女は、まだ18歳。いずれはマリーゴールド、女子プロレス界を牽引していく存在になるだろう。プロレスラー山岡聖怜にかかる期待は大きい。