プロレスラーとして、そして女優として大活躍中の朱里。スターダムのリングではIWGP女子王座を奪還し、来年1.4にはそのベルトを巻いて新日本プロレスの東京ドーム大会に乗り込み、STRONG女子王者・上谷沙弥とのダブルタイトル戦が決定した。その朱里は、10月末から11月前半にかけて舞台『人を殺して何が悪い?』の主演を務めた。舞台の合間にもプロレスの試合を行なうなど、すべてに全力投球の朱里の生き様とは。
“スポーツ女”が“モノが違う女”になるまで

朱里のプロレスラーとしてのスタートは、2008年10月。空手経験者という触れ込みのKG(Karate Girlの略)として、ハッスルのリングでデビューした。そのため朱里は空手の使い手のイメージが強いが、じつは習っていたのは空手の型。そして空手以外にも、小学校の頃はダンス・水泳・ソロバン・卓球、中学校ではバスケットボール部を経て陸上部に入部するなど、朱里の言うところの“スポーツ女”という生活を送っていた。
高校時代は未経験ながら公式テニス部に入部し、負けず嫌いな性格も手伝い学校のランキング戦で1位になり部長に。相手が根負けするのを待つ粘りのプレースタイルだったというが、今の朱里のプロレスの試合にも通じるものがある。

高校卒業後、女優を目指していた朱里は本格的に活動を始めた。しかし、なかなか芽が出ず、ハッスルのオーディションに参加。KGとしてリングにあがることになるのだが、練習に雑用、給与の未払いなど大変な時期を過ごしてきた。そんな中、『あんな弱っちいやつに何ができるんだ』という声に奮起し、キックボクシングを始め、最終的には日本人女子では初のUFCで勝利を挙げたファイターに成長した。
プロレスでも多くの王座を獲得し「モノが違う女」というキャッチフレーズもついた。実際、スターダムのリングではIWGP女子王座のほか、ワールド・オブ・スターダム、ゴッデス・オブ・スターダム、アーティスト・オブ・スターダム、SWA女子王座を獲得している。
プロレスも舞台も本気でやるというのを決めている

その朱里が主演として臨んだ舞台『人を殺して何が悪い?』。タイトルからして物騒ではあるが、簡単にあらすじを紹介しておこう。朱里演じる真美は、親友を反社会勢力に殺されてしまう。法の力が及ばない殺人者たちを監禁し、罪を自白させ計画を実行する——。
細かい内容はネタバレになるため割愛するが、朱里のセリフの8割は声を張る必要のあるもの。鬼気迫る演技、そして抑揚のあるセリフ回しに観客はどんどん引き込まれていった。朱里は今回の役柄についてこう語る。
「かなりパワーがいる役なので、集中力を切らせないようにすることを大切にしていました。いろいろな精神状態が渦巻いている役なので、自分と重ねるのは難しいんですけど、プロレスをやってきていることによって私にしか出せないパワーもあると思っていて、そこは強みだなと思います」
そして、この舞台の会期中の11.3スターダムの大田区大会では試合に出場した。
「プロレスも女優も本気でやるというのを決めているので、どっちも一生懸命です。(体調面では)かなり気をつけていて、寒がりなので暖かくして過ごすのはもちろん、体調を崩しそうな予兆があるときは葛根湯を飲むようにして。あと、ノドを乾燥させないように寝るときには、濡らしたタオルを干して寝るようにしています」
生と死、欲求と抑圧。人間誰しもが抱えている喜怒哀楽が詰まっていた舞台『人を殺して何が悪い?』。この充実した舞台が終わると、次の大一番は来年1.4東京ドーム大会が待っている。
「上谷(沙弥)のおかげでプロレスに興味を持ってくれた人がたくさんいると思います。それは本当にすごいことだなと思っているんですけど、自分はIWGP女子王者として、女子プロレスの面白さやすごさを広められるチャンスだと思っているので、女子プロレスを象徴する最高の試合をした上で自分が勝ちます」
プロレスと女優、両方の世界でさらなる高みを目指す朱里は、これからも『モノが違う女』の戦いを見せてくれるはずだ。
