デスマッチ志向の、とある覆面女子レスラーがSNSでこうポストした。『綺麗な体がもったいない』とよく言われるという。続けて『幼少期にした透析やらなにやらで昔からツギハギだょ』(原文ママ)と。そう、JUST TAP OUT所属のrhythm(リズム)はこの24年という人生の中で、さまざまな身体のトラブルをクリアしてきた。そして、その先に行きついた死生観は、少し特別なものに……。そのrhythmに聞く自身の体との付き合い方、第1回はプロレスとの出会いと幼少期の体のトラブルのお話を。

【写真】病気と付き合いつつ闘う女子レスラー・rhythmのフォト集
TAKAみちのくの試合に衝撃を受け、プロレスとの縁がつながる
rhythmがプロレスに興味を持ったきっかけ、それは新日本プロレスとゲーム『龍が如く』のコラボだった。
「中学3年生のときに『龍が如く』をやっていて、そのときに新日本プロレスさんとのコラボでYTR、矢野通さんがキャラクターで出てきたんですよ。それでハマってしまって、プロレスとは何ぞやと。それで『NJPW WORLD』(新日本プロレスのサブスクリプションチャンネル)にも入って。そうなると生観戦したいじゃないですか。自分の地元が東京なので、後楽園ホールにも20分くらいで行けるので、矢野さんを見に行こうと。大きいお兄さんたちがぶつかるのがプロレスなんだろうなと思いながらお母さんと一緒に、見に行ったんです。そうしたらたまたま『BEST OF THE SUPER Jr,』というジュニアヘビー級の選手の大会で、矢野さんが出ないという(笑)」
しかし新たな出会いが、rhythmの人生を大きく変えた。
「その日(2017.5.17)の第1試合が『獣神サンダーライガー vs TAKAみちのく』というカードで、自分の思っていたプロレスと違って『こんな選手たちもいるんだ!』と。後楽園ホール2DAYSのチケットが取れたので、翌日の『ウィル・オスプレイvsリコシェ』も見てすごいなと……めちゃくちゃ惹かれたんですよ、プロレスに。それでその日に『タイチ vs TAKAみちのく』という試合があって、10分近い試合で触れ合ったのがラスト10秒だけで。何だこれは、と。こんなこともできるの?プロレスって、と。何も触れなくても人の心って動くんだなと思って、代表(TAKA)に興味を持ちました。
ウチのお母さんが飲食店をやっているので、代表が当時の団体でポスターを貼ってくれる場所を募集していたので応募したところ、代表が自ら来たんです。ウチの家族って、お父さんが183cm、お母さんが173cm、お兄ちゃんが186cmなので、当時高校1年生だった私を見て『お前もデカくなるからプロレスラーにならないか?』と誘われまして……両親は大反対ですよ。やっぱり体が体なので。見るのはいいけど、やるのはさすがにダメだろうと。なので、とある社会人プロレス団体で、週1回、部活のような形で始めたんです」

aHUSにり患し人工透析をした幼少期
2019年、TAKAはJUST TAP OUTを旗揚げする。その際に、高校3年生になっていたrhythmにも声がかかりプロレスラーの道を歩むことになる。ただrhythmにとってのネックは、前述の通り「体が体なので」だった。
「小さい頃に食中毒…O157にかかっちゃって。そのままaHUS(非典型溶血性尿毒症症候群/指定難病109)という病気にかかってしまって、腎臓が普通の3分の2くらいしか機能しなくなっているんですよ。入退院を繰り返して、人工透析もしました。なので、消化器系がダメで、タンパク質や塩分を取りすぎてはいけないんです。小学校のときはもうほとんど食べられるものがなくて。給食のときも好きなものも全然食べられなくて、特別メニューでした。特にフルーツは栄養がありすぎて食べられないので、友達が気を遣って自分に見えないところで食べてくれていましたね。薬が置いてある場所もクラスの皆が知っていて、自分が飲み忘れないようにしてくれていました」
そして中学校に上がってからは、伝染性単核球症にり患してしまう。
「伝染性単核球症は小さいときに罹ると症状は軽いんですけど、大きくなってから罹っちゃったので…しかも別名『キス症』ですよ(笑)。もちろんそんな経験はなかったんですが、腎臓が弱いので40度以上の熱に血尿も出てガンガン削られましたね……。それでなんで罹ったのかといったら、小さいときからボランティア活動が好きで、幼稚園にボランティアに行っていて子どもたちにチューされたからだと…。
入院はしなかったんですけど、1か月くらい熱が出たり出なかったりで。しかも月経が重くて、授業中に座っていることができなくなることもありました。貧血になって、朝礼で倒れたこともありますし。月経のほうはピルで何とかして、腎臓は弱いままデビューすることになりました」
