今年4月に引退した“女子プロレス界の横綱”里村明衣子が「現在の女子プロレス界の象徴」と称した選手、それがスターダムの安納サオリだ。安納は「休みはいらない」と宣言し、スターダム以外にもOZアカデミーにも参戦、とんでもない試合数をこなしている。その安納、ここ最近は大きなケガもなくデビュー10周年イヤーを迎えたわけだが、体づくりの秘密に迫るインタビュー全3回の1回目はプロレス生活とケガ対策のお話を。

柔軟性がある意識はなくて、むしろ硬いほうだと思っていた
安納サオリは今年5月にプロレスデビュー10周年を迎えた。そのしなやかな身のこなしは誰もが認めるところだろうが、当時の安納はほとんどスポーツ経験がないままデビューしていた。
「スポーツは何もしていなくて、運動神経がすごく悪いんですよ。私は走るのも嫌ですし、体育の授業が大嫌いでした……。部活もバレーボール部に 1ヶ月半だけいただけで……ダンスとバレエは小さい頃からやっていたんですが、体を動かしていたのはそれくらいですね。柔軟性があるという意識はあまりなくて、むしろ硬いほうかなと思っていたくらいでした。でもプロレスをやってみて、柔軟性があってケガをしにくい体なんだと気づくことができました」
その言葉の通り、安納は大きなケガでの欠場をほぼ経験していない。
「私がケガで休んだのは、2021年に腰の骨を3本折って4ヶ月ぐらいですかね…。(折れたのは)大突起のほうだったんですが、1mmずれていたら神経に触れて選手生命に関わっていたといわれました。ブリッジも、絶対できないようになってしまっていたそうです」

背中のトレーニングは欠かさない、その理由は……
安納がケガをしないように、日常生活も含めて欠かさないことがあるという。
「今は柔軟性がそこまであるとは思わないんですけど、ケガをしにくいのはそれもあるかなと。でもストレッチは絶対にしますね、寝る前も試合前も。あとここ1年くらいは体幹トレーニングもしています。インナーマッスル系を鍛えることで、立ち姿も全然違ってきますし。体幹トレーニングに行けない期間が長くなると、体が整っていないと感じるようになりました。
以前は本当に筋肉がなくて、デビュー当時はぽちゃぽちゃやったんですよ。でも、プロレスラーになって360度見られるということは、背中まで見られるんだなと。自分の後姿の写真を見たときに、すごく絶望したことがあって、背中のトレーニングも絶対に欠かさないようになりましたね」
2023年4月、安納は6年ぶりにスターダムに参戦。それ以来、COSMIN ANGELSの一員としてスターダムに欠かせないレスラーとなった。当時の安納は32歳、試合数が増えたことで肉体が変化した。
「(スターダム参戦以前の)フリー時代は結構細かったんですけど、スターダムでの試合数が増えてきて、受け身を取る回数がもう3倍ぐらい上がったんですよ。受け身の数が増えると、体も鍛えられて大きくなってきたなと。(体力は)今の方があるかもですね。昔のほうが疲れやすかったんですけど、今は試合前に“絶対疲れないアップ”をしています。内容は秘密なんですけど(笑)、試合前に息上げをしておかないと、いきなり試合をするとしんどくなってしまうので。試合前に心拍子を上げておくことで、試合中に心拍数を上げても疲れないんですよ。そのアップを取り入れてからのほうが、調子が良くなったと感じています」(12月2日、朝5時30分公開の#2へ続く)
