VITUP!副編集長の木村です。サボっていたわけではありません。編集Yが、いつもは金曜夕方に「何書こう…」とか焦ってるのに、なぜか2週連続で書きたいと言うので譲った次第です。
さて先日、宮城県塩釜市でサッカーを教えている小幡忠義さんにお話を聞く機会がありました。小幡さんは、東北サッカー協会会長を務めたことがある方で、現在78歳ながら非常にエネルギーに満ちており、塩釜の小学生たちに毎日サッカーを教えています。グラウンドに小幡さんが現れると、子どもたちが「小幡さん、小幡さん!」とみんなが寄ってきて、子どもたちはもちろん親御さんからもこの地域ではとても信頼を得ている方なんだなと実感しました。
そんな小幡さんの指導方法の一つで面白いと思ったのは、「古武術」の動きをサッカーに取り入れている点。
古武術とは?……というのを説明すると一言では難しいのですが、剣道や柔道のもとになったと言われている日本古来からの武術で、「全身を効率よく使う」ことを極めた武術と言えます。
近年では多くのスポーツ選手もこの動きを取り入れており、最近では平昌五輪で金メダルを獲得したスピードスケートの小平奈緒選手が話題にもなりました。元プロ野球選手の桑田真澄さんも取り入れているそうです。また、古武術の動きを生かすと全身の力を無駄なく使ってものを運ぶことができるため、介護の現場でも取り入れられています。
日本サッカーにおいては、欧州の選手に比べてフィジカルが弱いと言われることがありますが、小幡さんが言うには、そんなことはまったくないとのこと。
“フィジカル”、あるいは“当たりの強さ”と聞くと、いわゆる筋トレで鍛えるものというイメージがあるかと思います。もちろんそれも必要です。
ただ、本当に必要なのはそうではありません。
その最たる例が、元サッカー日本代表の中田英寿さん。彼は175cm、72kgという日本人として非常に平均的な体格ながら、ボディバランスに優れ、ヨーロッパの屈強な選手からの当たりをものともせずにプレーしていました。
決してゴリゴリの筋肉があるわけではない中田選手があのようなプレーができたのは、小幡さんいわく、「体の使い方をわかっている選手だから」とのことです。
日本人の体が弱いなんていうことはまったくなく、むしろ昔は数百キロの米俵を女性が背負って歩いていた時代もあったわけで、あれは筋肉うんぬんよりも、全身の力を無駄なく使えているからこそできたことなのです。日本人には、そういうDNAが本来はあるはず……と小幡さんは言います。
実際に、私が何も考えずに小幡さんにショルダーチャージでぶつかってみたところ、なんと90キロ近い体重がある自分が、明らかに自分より小柄の小幡さんに吹き飛ばされるという……。小幡さんは、古武術による体の使い方を心得ているため、体重以上のパワーで私を吹き飛ばしたわけです。動画や写真を撮っておらず申し訳ないですが、あれは本当に衝撃でした。
ところが、小幡さんのアドバイスでほんのちょっとヒザの向きを変えたり、力を入れるときに意識するポイントを変えたりするだけで、今度は私が小幡さんを吹き飛ばすことに成功しました。このように、意識の仕方や、ほんの少し使い方を変えるだけで、驚くほど人間の動きは変わってくるわけです。
全身を効率よく使うという点では、スポーツのみならず生活のあらゆる場面で必要なことなので、健康という意味でも古武術の動きは生きてきます。
今回はVITUP!の取材目的ではなかったためあまり詳しいお話を聞くことはできずここでも漠然とした話になってしまいましたが、今後、読者のみなさまに役立つような取材をしてきたいと思います。
1986年11月20日、愛知県出身。千葉県鎌ケ谷市で学生時代を過ごし、柏南高校を経て獨協大学へ。IT企業に就職後、2015年4月にライトハウスに入社。スポーツの書籍の編集、エンタメ誌の記事執筆などを行う。
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