89歳が語るボディビルを通じた夢 58歳の階級別日本王者が紡ぐボディビルへの愛と情熱の言葉【プレイバック2025】




「何歳になっても筋トレやボディビル競技は続けられる」という言葉はよく聞くが、それを実際に感じられるのが、年齢別の日本大会「日本マスターズボディビル選手権」だろう。

【フォト&ムービー】キング・オブ・マスターズに輝いた須江のボディ

8月31日に新潟県で開催された日本ボディビル・フィットネス連盟主催の「第37回日本マスターズボディビル選手権大会」は、男女40歳以上の選手のみが出場し、年齢別に分かれて戦う日本大会。40歳になり「マスターズ」に足を踏み入れた選手もいれば、80歳を超えた選手もいる。

最高齢の選手は、今年も金澤利翼、89歳。大会後に声を掛けると、この年齢になっても「夢」を持つことの大切さを話してくれた。

「私はね、93歳まではボディビルを現役で続けて、そこから先は130歳まで生きたい。それはおそらく無理なことなんですよ、誰が考えてもできないと思うことです。でも、ひょっとしたら、こうして質素な食事と規則正しい生活習慣でトレーニングを続ければ、可能ではないんじゃないかな。夢を常に持ち続けることが大切。もしその夢を達成できなくても、夢を持って過ごすことで生き続けられると私が示し、世の中のおじいさん、おばあさんに知らせたい。ボディビルの世界記録をつくって、それが済んだら今度は人類の世界記録もつくりたい」

また、この大会で総合優勝に輝いたのは、58歳の須江正尋。芸術的な背中の筋肉を武器に日本のトップ戦線を走り続け、2023年も70㎏級日本一に輝いた。だがここ2年は若手の押し上げもあり、今年、初めてこの日本マスターズに出場した。

彼もまた、いつまでも衰えぬボディビルへの愛と情熱を語ってくれた。

「なかなか十分に戦った実感がないと、去年1年間の大会の中で感じている部分がありました。ただステージに立って終わっていくだけという感じもあり、ちょっと寂しいなと。もっとステージで戦いたい。(中略)この競技を続けてきたのは、本当にステージに立つのが好きだから。私たちはある意味でステージに立ってポーズをとるだけですけど、そこでは審査員の皆さんや観客の皆さんと、ポーズをとるごとにやりとりが生まれるんです。それがボディビルであり、そういう機会をもう少し楽しみたい」

人生の中で多くの時間をトレーニングやボディビルに費やし、情熱を燃やしてきた男たちだからこそ紡げる深みのある言葉。日本マスターズ選手権の意義は、そんな彼らの言葉を後世に伝えていくことにあるのかもしれない。