筋肉痛になりにくいのは追い込み方が足りないから?【筋肉博士の最終講義】




書籍『石井直方 最終講義 筋肉まるわかり大事典』よりⓒベースボール・マガジン社/ニューロック木綿子

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トップレベルのボディビルダーでも、毎回のトレーニングで筋肉痛になっているわけではありません。筋肉痛にならなければ筋肉が鍛えられていないと思うのは間違いで、それは筋肉が適切に回復する状態になっていると考えることもできます。

週2〜3回のトレーニングで筋力が順調に伸びている時は、通常、2〜3日後には筋肉は回復して元気よくトレーニングできる状態に戻っています。そういう時、筋肉痛はあまり起こりません。

もちろん、初心者が1〜2回目のトレーニングで筋肉痛にならない場合は、適切なトレーニングができていないと判断するべきです。また、トップビルダーでも、お正月などに2週間ほど休んでトレーニングを再開すれば筋肉痛になります。そのように、筋肉痛は鈍っていた筋肉をしっかりトレーニングできた証しにはなります。

マンネリ化したトレーニングの内容を変えた後なども、慣れていないファクターが入ってくるので筋肉痛が起こりやすくなります。それは新しい刺激が筋肉に加わった目安と考えればいいと思います。

筋肉痛が起こるメカニズムは少しずつわかってきていますが、じつは2回目以降のトレーニングで筋肉痛が起こりにくくなる理由は解明されていません。どんな人でも、1回トレーニングを行うと、次回のトレーニング後の筋肉痛は軽減されます。2回目は少し筋肉痛が残っている状態でトレーニングを行うことになるかもしれませんが、3回目になると筋肉痛はほぼ起こりません。

いくつかの研究結果から、2回目以降の筋肉痛を軽くする効果は半年ほど続くということがわかってきています。ただ、そうした効果のメカニズムが完全に解明されるのはまだまだ先になるでしょう。

これまでの筋肉痛の実験は、筋トレというよりは、筋肉をわざと壊すような方法で行なわれてきました。ですから、そこで証明されてきた結果は、一般的な筋トレには完全には当てはまらないと思います。筋肉痛を起こすことだけを目標にしたトレーニング刺激はいくらでもありますが、それを行なうと筋肉が腫れてしまったり、回復の遅い筋肉痛が起こってしまったりするので、筋肉を育てていきたい人は避けるべきです。

一般の人のトレーニングの場合、筋肉痛の有無にこだわる必要はなく、むしろ使用重量や回数の伸びなどの数値データを基準としたほうがいいでしょう。

※当記事は、書籍『石井直方 最終講義 筋肉まるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社/2025年12月発売)からピックアップした内容をWeb用に再構成したものです。

解説:石井直方
1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。東京大学名誉教授(運動生理学、トレーニング科学)。力学的環境に関する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究。日本髄一の“ 筋肉博士” としてテレビ番組や雑誌でも活躍した。『筋肉の科学』『トレーニングのヒント』(小社)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)、『スロトレ』(高橋書店)など著書・共著は多数。ボディビルダーとしてもミスター日本優勝(81・83年)、IFBB ミスターアジア優勝(82年)、NABBA 世界選手権3位(81年)などの成績を収めた。2024年8月20日、69歳で逝去。正四位瑞宝中綬章を受章