猪木が鬼の形相「俺の温泉まんじゅうを食ったヤツは?」 甘党レスラーたちの意外な素顔




プロレス解説者の柴田惣一さんが取材したプロレスのアレコレを紹介する連載「柴田惣一のよもやま話」。今回は食事にもこだわるプロレスラーの意外な素顔です。

【写真】甘いものからしょっぱいものまで 食にこだわるレスラーたち

レスラーに限らず体づくりには運動と同じく食事が大切。質量ともに大事で、摂取する栄養素のバランスも欠かせない。

かつてレスラーは「飲め食え」と、とにかく量ばかりが強調されていたが、最近は栄養学など科学的分析も進み、栄養補助食品の活用も考慮されている。団体から食事のとり方などについて指導をすることもある。

「とにかく食べろ」の時代から、精神論だけでなく科学的な裏付けを自ら勉強していたのが、初代タイガーマスクこと佐山聡だった。食事だけでなく新たなトレーニング法などにも取り組んでいた。いち早くワープロ、パソコンも取り入れている。

となれば、一般的には体づくりには良くないと思われる「甘いモノ」とは距離を置いていたと思いきや、じつは大の甘党だった。

ある日の地方サーキット。猪木に地元の後援者から、土地の名物「温泉まんじゅう」の大箱が差し入れられた。さすがに試合直前にはいただけない。試合前3時間は食べない、というのが当時のルールだった。猪木は「試合が終わったら食べるから、誰も手を出すなよ」と、試合後を楽しみにリングに向かって行った。

猪木を筆頭に藤波辰爾、佐山など甘いもの好きが揃っていた新日本プロレス軍団。みんなが控室に鎮座する温泉まんじゅうを前に唾を飲みこんでいる。緊張感の中「こんなにたくさんあるんだから、少しぐらい」と佐山が手を出した。「うん、うまい」1個、2個……止まらない。続いて藤波らも「じゃ、俺も」とほおばった。

猪木が勝利し控室に凱旋。一息つくと「さて、いただくか」と温泉まんじゅうの箱を開けた。すると、明らかに減っている。大量の温泉まんじゅうが数個になっていた。

「誰だ? 俺の温泉まんじゅうを食ったヤツは?」と鬼の形相で目をむく猪木。リング上でも見せないほどの怖い顔だ。顔を見合わせ沈黙する新日本勢。と猪木の視線が止まった。藤波の口角に何とあんこがついていた。

「お前か」というと同時に鉄拳制裁。猪木は体罰を嫌っていた。手を出すのはよほどの場面に限られていたが、好物を横取りされた恨みは特別だったようだ。食べ物の恨みは恐ろしい。

もちろん口答えなどできるはずがない。「すいません」と首を垂れる藤波。普段なら漢気あふれる佐山が、この時ばかりはいつの間にか、その場からいなくなっていた。一番多く食べていたのだが……。

甘いものには目がない佐山。ずっしり重たい羊羮1本を一気食いすることもあり、好きなものを前にすると人が変わってしまうのかも知れない。「体が要求しているんだから」といつものストイックさはどこへやらである。

昨今、体調が心配されていた佐山だが、愛弟子4代目タイガーマスクの引退記念試合(7月7日、東京・後楽園ホール大会)で、リングに上がり挨拶。それどころか久しぶりにファンの前で、軽やかなタイガーステップを披露した。

なおも4代目タイガーマスクと組みあうなど元気に動き回った。レスラー、関係者は元より、ファンもホッとさせた。以前から「待っていてください。カムバックします」と口にしていたが、ここにきて言葉に力強い説得力がでてきた。

佐山だけでなくジャイアント馬場の大福好きも知られているが、意外なほど甘党が多いレスラー。真壁刀義は「スイーツ真壁」としてテレビ番組にレギュラー出演し、ケーキなどを紹介していた。

思えば適量の糖分は健康と脳のためにも必需品だが、塩分も大切。塩からいものを好むレスラーも甘党に負けず劣らず多い。

塩昆布を愛するのが関本大介。塩昆布を「塩っぺ」と友人の様に呼んでおり、手放さない。めんつゆもお気に入りで、そばはもちろん多くの食品をめんつゆで楽しんでいる。

塩分過多も糖分過多と同様、体には良くないが「汗で出てしまうから大丈夫」と高笑い。塩っぺとの親交を深める関本だった。(敬称略)