プロレス解説者の柴田惣一さんが取材したプロレスのアレコレを紹介する連載「柴田惣一のよもやま話」。今回のテーマは「プロレスラーの意外な好物」前編「アボカド」です。
「森のバター」と言われるアボカドは、栄養価が高く脂肪もたっぷり含む食品として知られている。
歌舞伎の市川團十郎も大好物として、重宝している。食べるだけではなく、肌に塗っているそうだ。歌舞伎役者は自ら施す白塗りで肌荒れに苦しむというが、團十郎はアボカドで肌荒れを防いでいる。
アボカドといえばメキシコ。1970年代からメキシコで長らく活躍した故・グラン浜田もアボカド好きだった。ただ、そのころは、日本ではあまり知られていなかった。
日本に帰国すると和食を食べまくっていた。「日本は何でも美味しいね。やっぱり和食はいいなぁ。寿司、天ぷら、すき焼き、そば、冷奴、塩辛……。毎日食べたいよ。でもね、日本にいると、ひとつだけ食べたくなるものがあるんだよ」と笑っていた。それはアボカドだった。
アボカド? ピンとこず浜田に聞いてみると「種が大きくて食べられる部分は緑。野菜ではなく果物。醤油をかけるとマグロのトロの味がする」と教えてくれた。
帰国中は、来日外国人選手と同じように、東京・新宿の京王プラザホテルを定宿にしていた。日本一の繁華街・歌舞伎町は徒歩圏内。ところが、当時はメキシコ料理店もあまりなかった。「エルアミーゴ」など限られており、アボカドはまだまだ珍しかった。「メヒコが恋しいと思うのはアボカドかな」という浜田の笑顔が忘れられない。
元より体に良いモノには敏感なプロレスラー。アボカド信奉者は何人もいるが「レインメーカー」オカダ・カズチカのアボカド好きも筋金入りだ。
新日本プロレスに入団する前、メキシコ修行に励んでいた。10代後半の3年半をメキシコで過ごしたのだ。思い出の味だろう。
19歳で新日本に入団している。東京・野毛の道場で「大器」と期待されながら、ヤングライオンとして日々を送った。道場のちゃんこ鍋などを基本にして、バランスの良い食事を心がけていた。
人任せではなく自ら考える男である。鶏ささみやブロッコリーを取り入れるなど、良いと言われるモノを積極的に取り入れていた。
190センチを超える長身に、人並み外れた運動能力……プロレスラーとして恵まれた体を無敵に仕上げるために、さまざまなチャレンジも忘れなかったという。
到達した一つの原則が「アブラの取り方」だった。若いころは「アブラはよくない」と思い込んでいたが、必要なアブラがあることを知る。そのアブラを体に取り入れるのに役立つのが、メキシコ修行時代にイヤになるほど口にしたアボカドだった。
栄養を吸収するのに欠かせない不飽和脂肪酸を含んでいる。その上、食物繊維やビタミンEも豊富だ。
その素晴らしさに気づいたコロナ禍の頃。試合数が減った時期には、一日一個のアボカドを摂取するようになっていた。
「動ける頑丈な体」こそ、目指す理想のボディ。そのためには炭水化物と脂質の程よいバランスを取ること。アボカドに加えて魚も良いアブラを供給してくれる。
日々の食事は元よりビッグマッチ前の食事で体調を仕上げる。肉などメイン料理に、アボカドソースがポイント。チリソースやタバスコ、パクチーを加えて味変も楽しみながら、鉄壁の体をつくり上げていた。
新日本プロレスの頂点を極め、米AEWに移籍し大活躍している。類まれなる才能だけでなく、自ら考え模索する姿勢こそが、日本が産んだスーパースターの源だろう。
そしてそれを支える重要な食品がアボカド。約20種類のビタミンとミネラル、カルシウム、植物繊維……まさに「森のバター」であり、β‐カロチンやルテインなど脂溶性栄養素の吸収を助けてくれる。
アボカドをもっともっと取り入れたいと思う今日この頃である。(敬称略)


