AV男優のしみけんさんにトレーニングとの向き合い方について語ってもらったこのインタビュー。若い頃からトレーニングにハマり、ジム通いを続けたしみけんさんは、9年前、引っ越しとともに転機を迎える。今回はそんなお話。
トレーニングへの向き合い方を変えたトレーナーの一言
――引越しをしてジムが変わってからは、トレーニングの仕方も変わりましたか。
しみけん 変わりました。「筋トレ虎の穴」みたいなところから抜け出したら、重量にこだわらなくなったんです。そうしたら、みるみる体がしぼんだんです。
――周りの影響が大きかったんですか。
しみけん そうですね。「あん?今日何回やんだ?死ぬまでだろ!」と鼓舞してくれる人たちがいないんです。そう言われて、回数をこなして行って、「ワー!限界だー」って白目剥いてからが本番、みたいなところがあったのに、「おまえいま白目剥いてたぞ!」って言ってくれる人がいなくなったら、白目剥く前にやめちゃうんです。弱い人間です。
しみけん 下がったというよりかは、必要以上に上がらなくなった、が正しいかも。それであるとき、新しいジムで気合を入れてやろうと思って、トレーナーを補助に付けてスクワットをやったんです。
150kgをメインセットで、ベルト2枚+手首固定+ニ―スリーブして。回数を重ねて踏ん張ったとき、血液の行き場所がなくなったんでしょうね。終わってから鏡を見たら、目から出血しそうなくらい、目の血管が破れて真っ赤になっていました。そのときにトレーナーにボソッと言われたんですよ。「怪我しません?それ」って。
――やり方を変えたほうが良いと。
しみけん その人に言われた言葉でいまでも忘れられないのが、「重量にこだわるとゴールは怪我になる」というものなんです。重量ばかりを追い求めていくと、最終的には怪我をして辞めていくことになる。確かに周りにはそういう人もいて、実際僕も肩を怪我していますし。
――実感があったんですね。
しみけん それと同じ頃、ジムにたまたま張り紙が貼ってあって。トレーニングについての最新の学術的な報告書だったんですけど、そこに「3セット以上の追い込みは意味がない」と書いてあったんです。3セットで追い込むってよっぽですよ。僕みたいに甘い人は4セット目に入ってしまうんですが、3セット以上の追い込みは意味がないと書いてありました。
――そこから、いまのトレーニングに。
しみけん はい。いまは「筋肥大」よりも、「自分の身体と対話する」とか、「自分の神経と会話するのを楽しむ」という風に変えました。例えばお父さんが子どもの運動会で転んだりすることがあると思うんですけど、あれは頭で考えている行動・仕草と、身体の行動が一致しないから転ぶんですよね。いま僕が行っているのは、年を重ねても自分が思ったように身体が動くようなトレーニング。神経・身体のすみずみと会話をするようなトレーニングになりました。
――具体的にはどういうことをされているんですか。
しみけん いまは、1セット目が1RMの30%くらいを、25~30レップス、という風にしています。
――詳しく教えてもらえますか。
しみけん 1RMっていうのは、自分の最大出力、一回ようやくできる最大重量。それが100kgだとしたら、それの30%、30kgを25~30レップス、つまり25~30回やります。2セット目は最初のセット数の1/2のレップ数になるように重量をセットする。だから15レップスで限界が来るような重量にセットするんです。だいたいそれが45kgくらいなんですよ。その次はその半分の7レップスくらいでオールアウトするように、だいたい65kgくらいになるのかな。そんな計算の方法をしていますね。
――回数が減って、負荷が増えていくんですね。
しみけん そうです。これやると、重さを扱わないので怪我をしにくくなる。だけどパンプと、やった感と、筋肉痛はある。筋肥大に繋がってるかはわからないですね。でも僕のいまの目的は身体との対話なので、これもアリかなと。身体の調子はとてもいいです。
――それって引っ越しされていまのゴールドジムに移ってからですよね。いつくらいのことですか。
しみけん このトレーニングに変えたのは去年からです。
(続く)
取材・文/安多香子
写真/中田有香