【My Training Life】Vol.09丹野博貴(会社経営者)




アスリートから一般のトレーニーまで、それぞれのトレーニングとの向き合い方を紹介する連載「My Training Life」。今回登場するのは、会社経営者として充実の毎日を送る丹野博貴さん。紆余曲折を経てトレーニングと出会った、彼のこれまでの人生について聞いた。

企業によるフランチャイズ加盟店の獲得のサポートや、法人向けの広告支援を行なう「セスグモ株式会社」を経営する丹野博貴さん。鷹揚で快活、人当たりのよさそうな雰囲気は誰からも好かれそうで、「できるビジネスマン」のオーラが漂う。新卒で入った営業会社で、半年でトップの営業成績に輝いたというのも頷ける。しかし、丹野さん自身は当時のことを「苦い思い出」として記憶している。

「すぐに結果が出せた分、まったく周りの人の話が聞けなくなってしまったんです。歩合制で羽振りもよかったので、金使いの荒さに離れていく友達もいました」

このままではいけない。そう思った丹野さんは一念発起して会社を辞め、稼ぎの高い営業会社に入社。グループ会社の社長まで昇進するものの、その会社も3年で倒産してしまう。

「人を大切にできていなかったと思います。合わない人はドンドン遠ざけて、周りには自分の意見を聞いてくれる人のみを置く。そんななかで時代は “営業”というリアルなものからインターネットへと代わっていきました。僕はその時代の流れを読めず、最後は業績が縮小していることにも気づけませんでした」

うまくいかないことが続いたが、落ち込んでばかりはいられなかった。会社をたたんだあとはすぐにインターネットの広告会社に就職し、フランチャイズの比較サイトの立ち上げに関わる。そこで丹野さんは、停滞していた人生の流れを変えるきっかけを掴む。

「仕事でいろいろな経営者の方に会って話をすると、みなさんトレーニングをされていたんです。聞いているうちに面白そうだなと思って、自分も始めることにしました」

朝に強かったため、7時にジムへ行くことにした。朝のジムは、通勤前のビジネスマンで賑わっていた。日経新聞を片手にランニングを行い、集中してトレーニングをしたあと仕立ての良いスーツに身を包んで颯爽と通勤する彼らの姿は、丹野さんにとって刺激的なものだった。

「忙しい合間を縫って朝ジムに来ている人たちって、みんなトレーニングだけじゃなくていろんなことにたいするモチベーションが高いと思うんです。そういう環境に身を置くことで、自分ももっと頑張らなきゃと思えました」

丹野さんはそこで持ち前の社交性を発揮し、「わからないことは全部教わりました」と積極的に先輩トレーニーたちから学んだ。周囲の人を敬い、積極的に教えを請う。トレーニングという未知の世界に身を置いたことで、社会人として大切なことを知ることができたのかもしれない。人との接し方、自身の考え方に変化が現れると、仕事の業績も上がり、異性にもモテるようになった。

インターネット広告会社での勤務を5年続けたのち、務めた会社が分社化してしまう。取締役として新会社に参入するものの、32歳の時に独立して現在の会社を立ち上げた。最初の1年間は月の収入が学生の時のバイトくらいの月収というときもあり、2人の社員の給料を払うのが困難なこともあった。先行きが見えず、不安な日々が続いていたなかで、丹野さんの希望の光となったのはトレーニングだった。

「メンタルは強くない方で、不安で眠れない日もありました。『なんとかしなきゃ』と思ったときに、真っ先に頭に浮かんだのがトレーニングだったんです」

当時はゴルフにハマっていてジムからは足が遠のいていたが、起業半年後にトレーニングを再開。ジムは丹野さんのパワースポットなのか、トレーニングでエネルギーを得ると一気に売り上げが伸び、たくさんの良縁に恵まれた。

「またトレーニングするようになってからは、休日も空いている時間はほとんどジム通いに費やしました。ベンチプレスで60kg上げられるようになった頃には会社の業績も上向いて、いろいろなことがうまくいくようになりました。具体的な数字で覚えているので、かなり嬉しかったんでしょうね」

トレーニングはコツコツ続けていけば確実に成果が出る。60kgしかあげられなかったベンチプレスもいまでは100kgがあげられるようになった。仕事も同じだ。コツコツと続けていけば成果が出る。会社は着実に成長を続け、現在は5名の従業員を抱えるようになった。

「これからは、もっと良い組織をつくっていきたいと思っています。昔は売上ばかりを重視して、それに失敗してしまいました。そのあとたくさんの経営者の方に話をきくなかで、大切なのは社員の幸せだと気付きました。自分自身も謙虚でいようと思えるのは、失敗した過去があるからこそだと思います。トレーニングも、身体を壊さずにずっと続けていければと思います」

控えめながらも、前向きな目標を掲げる丹野さん。これからもいろいろなことを経験しながら、会社経営者としてもトレーニーとしても進み続けていく。

取材・文/安多香子

★VITUP! アンケート★

【はじめたきっかけ】
朝の時間がもったいないと思ってスポーツジムに通い始めた。

【プラスになったこと】
仕事の集中力が3倍くらい上がる。メンタルが強くなる。

【好きな種目と理由】
ベンチプレス!
胸筋が大きくなると、見た目や姿勢が良くなる。

【モチベーションの保ち方】
ムキムキな人しかいないジムに行って、環境を変えるか、パーソナルトレーニングで追い込んでもらう。(これオススメ)

【やる気が出た一言】
「筋トレやってますよね?」って言われるとうれしい。

【トレーニングに求めること】
けがをしないように、無理するときは補助を付ける。

【これからの目標】
数値の目標はないですが、外国人みたいにムキムキになりたい。