自身のトレーニング体験をもとに漫画化
ーー 筋トレ と 女子高生 という今までになかった組み合わせは、どんなところから生まれたのでしょうか?
「作画を担当する MAAM さんが 萌系女子 の 絵 が上手なので、それを活かした原作をと担当編集者から声をかけてもらったのがきっかけでした。ちょうど、私が長いことブランクが空いていたトレーニングを再開した時期で、パーソナルトレーナーさんから色々と教わっていたタイミングだったので、これを上手く漫画化できないかなと考えました。男がトレーニングしているところを描いても誰も読まないですし、 カワイイ 女の子の絵の力を借りて、自分の趣味を広めていこうという企みも少しありました(笑)。それで編集担当者に提案したら、割とすんなり話が進み、数週間後には ネーム を描いていて、あっという間に連載が始まりました」
ーー漫画の原作というのは、実際どんなことをするものなのですか?
「人によって様々ですね。文章で ストーリー や 台詞 を書く人もいますが、私の場合は自分でも漫画を描いていたので ネーム という 絵コンテ のようなものまで描きます。おおまかなコマ割りを決めて、登場人物の台詞や動きなんかを描き入れていきます。それを元にMAAMさんが作画をしますので、それを下描き段階で見せてもらい、OKだったら本格的にペン入れなどの作業をしてもらう感じですね」
ーーご自分でも漫画を描いていらしたんですね。トレーニングはブランクがあったとのことですが、何年くらいされていたのですか?
「たぶん高校生の頃からなので、10年にはならないと思いますが、結構体を鍛えるのは好きでした。ただ、完全に自己流でやっていたので、怪我も多かったですね。学生の頃はベンチプレスが好きで、そればかりやっていたら手首を痛めて握ることができなくなってしまったり……。今思えば、最初にちゃんとした知識を身に付けておくべきでした。この作品には、そんな思いも込めています。そのうち、漫画の中でも怪我への対処法なども取り上げたいですね」
トレーニングについては正確な記述を心がけている
ーートレーニングを再開されてからは、 パーソナルトレーナー を付けているとのことですが、やはり自己流でやるのとは違うものですか?
「全然違いますね。まず正しい知識に基いてやれば怪我のリスクを最小にできる。パーソナルトレーナーの方の知識はとても深いので、作品中のトレーニングの解説なども基本はトレーナーの方々に聞いた話がもとになっています。あと、自分のフォームやクセなどは自分ではチェックできませんし、初心者の人ほど最初の何回かだけでもパーソナルトレーナーさんに付いてもらうといいと思います」
ーー作品の中に出てくる解説が妙に正確だとおもったら、パーソナルトレーナーの人の話がベースになっていたんですね。
「あとは トレーニング 関連の書籍で基本的な知識を確かめたり、競技をやっている人たちや、アマチュアのトレーニング愛好家など色んな人に聞いた話を総合しています。同じトレーニングについてでも、人によって説明の仕方が違ったりもするのですが、そういう場合は信頼できる書籍で確認しています。やはり人間の体に関することですから、怪我や故障につながる可能性があるようなことは描けませんから。その点は気を使っています」
ーー作品中の随所に トレーニング や ジム にまつわる“あるある”的なネタが出てきますが、それはそういう取材に基いているわけですね。
「あとは自分の体験ですね。わかる人にニヤリとしてもらえればうれしいですね。ただ、実はトレーニングと同時に格闘技の練習も再開していまして、その練習中に怪我をしてしまって今はあまり、ジムに通えていないのですが……」
ーーだいたい週に何回くらい通われているのですか?
「今は週1回くらいになってしまっていますね。多い時は週3回くらい通っていましたが。連載を開始した時の目論見は、作品の取材をしながら自分もマッチョになれれば一石二鳥だと思っていたんですけどね」
読者に健康的な習慣を始めてもらいたい
ーー作品中に登場するジムや登場人物にはモデルはいるのですか?
「ジムは私の通っているところをイメージはしていますが、ジム内は撮影できないので、作画上は資料がないんですね。だから、あまり細部までは描いていないと思います。登場人物については、こんな子がいたらいいなという仮想の存在です。ただ、作品を描くにあたってキャラ表といって身長や体重、性格などを細かく書いたプロファイルデータみたいなのは作って作画の MAAM さんと共有しています。そういう細かい部分まで設定しておくことで、 キャラ が リアル に動き出すんですよ。それぞれの キャラで、ジムに通っている目的も違います。主人公の 紗倉ひびき は痩せること、 奏流院朱美 は筋肉フェチで、 上原彩也香 は格闘技。教師の 立花里美 は加齢で体がたるまないようにと、目指すものが異なります」
ーーでも、それぞれに目的がリアルというか、共感できる部分があるからこそ読者の人気があるのでしょうね。
「そうかもしれませんね。痩せることが目的だと、ジムに通うといっても有酸素系の運動をイメージする人が多いと思いますが、徐々に痩せるために筋トレをするという知識も広まってきている。そんな時期的なタイミングの良さもあったと思います」
ーー連載開始直後から思った以上に反響があったとのことですが、読者からの声で印象に残っているものはありますか?
「やはり作品を読んだことで『ジムに行ってみようと思います』とか『ジムに通い始めました』といわれるとうれしいですね。こっちの世界に引き込んでやったという達成感があるというか(笑)。でも、良くない趣味に引っ張り込もうとしているわけではなく、一番伝えたいのは“運動を習慣にするのはいいことだ”ということなので、作品を通して1人でも多くの人にメッセージを伝えていければと思っています」
©作画:MAAM 原作:サンドロビッチ・ヤバ子 / Shogakukan 2016.
取材・文/増谷茂樹
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