凝りはどんどん深いところに…【カラダ美人講座】




疲労というのはじつにに厄介なもので、そのまま放っておくとカラダの奥底にジワジワと侵入し、「凝り」という不快感をもたらす現象となって根を張ってきます。

とくに肩こりなどが慢性的になりがちなのは表層の筋肉ではなく、もっと深いところの小さな筋群に短縮が起こり硬くなってしまっているから、と言えるでしょう。


カラダの奥深いところというのは、さまざまな筋膜の延長である腱の組織が到達しており、そういう意味では、凝りがそこにまで至っている状態は、骨格をがんじがらめにしてしまうほど深刻な症状であることがうかがえます。

休日もままならないほど働きづめの人、あるいは大きなストレスを抱えている人はとくに要注意と言えるでしょう。ましてや、骨に近い筋・腱の弾力性というのは、加齢とともにより顕著に衰えてくる部位でもあります。

一方、運動を日課にしている人であれば、骨格には常に振動が加わっている状況をつくり出してくれるので、その周辺の筋・腱にも刺激を与え凝り固まった緊張を緩めてくれるという効果があると考えられます。

であるならば、凝りの慢性化を予防したり、アンチエイジングのためには、縄跳びやランニングなどの運動がお勧めと言えるかもしれません。そう言えば、ランニングを日課にされている方々は、みんな若々しいですよね。すなわち、それは「日々、カラダに適度な振動を与えている」からこそ。そういう観点から考えてみると、若さを保つためのキーワードは、弾性力の有無にあると言えるかもしれませんね。

とはいえ、この弾性力が衰えている人が、いきなり張り切って運動をしようとすると、思わぬケガに見舞われてしまうものです。顕著な例として挙げられるのが、運動会で時折見かけるお父さんたちのアキレス腱断裂。久しぶりの晴れ舞台で、我が子にいいところを見せようと張り切りすぎてしまったがゆえの悲劇です。これこそまさに準備不足の最たる例と言えます。

そういった危険を回避するためにも、まず腱につながっている筋膜にしっかりアプローチし、日頃からケアしておくことが大切です。筋膜を正常な状態に整えることは、その延長である腱にもゆとりをもたらすということ。言い換えれば、カラダに遊びをつくってあげるというのでしょうか。そうすることによって、危険はある程度回避できるというわけです。適度な運動とケアをバランスよく心がけることが、不調を取り除くための必須条件であると言えるでしょう。

さて、気温も湿度も上がるこの季節は、汗や湿気が皮膚表面に留まりやすい肌環境となっています。そんな肌環境に対して冷気(エアコンや風)が当たると水分が冷やされ、結果としてカラダを冷やしているということになってしまいます。

このように、自覚症状がないままに不調を生み出す「夏冷え」も、この時期の大敵。筋膜にも当然、よろしくありません。そのまま放っておくと、腰痛、頭痛、肩凝り、めまい、更年期症状の悪化などを引き起こしてしまうこともあるので要注意です。これは、本格的にエアコンを使用する時期の到来とともに次第に自覚してくる方が多いのですが、じつはこの時期からすでにその予兆があることを忘れてはなりません。

したがって、今のうちからいち早い対処・ケアを行っておくことが大事。 筋筋膜の緊張を生み出す要因ともなる「夏冷え」に対しては、ホットパックなどを上手く用いた効果的な方法で対応可能です。

カラダを脅かすであろうさまざまな因子に対しては、先手必勝。しっかりと準備を整えておきたいところです。

山本康子(やまもと・やすこ)

鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。

Scandic care (スカンディックケア)
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取材/光成耕司