”世界を股にかける治療家”Ken Yamamoto(ケン・ヤマモト)の連載『腰痛ゼロ革命』。Ken先生が最近、取り組んでいる新たな治療法“一本指整体”の実践編。毎日、長時間のデスクワークで「いつも腰にズーンと重い感じがあります」という編集者Nさん。リモートワークで同じような症状に悩む人も多いだろう。はたして“一本指整体”で治るのか。
編集Nさんの体を見たKen先生。
即座に「痛みの発生源」を言い当てた。
「これねえ、腰が痛いということですけど、上肢、腕から痛みが始まっているんですよ。メディカルチェックは受けました? レントゲンとか整形外科で」
Nさん「整形外科はずっと行ってないです。前に行った時は電気治療くらいで。あとは、たまに整体治療へ行ったりですね」
Nさんを治療ベッドの上で仰向けに寝かせると、Ken先生がKさんの体の状態を説明する。
「背中を見ればすぐ分かるんだけど、スペースがめっちゃ空いてるでしょう。右側は指4本分だけど、左側は2本分。このバランスの悪さが痛みになるんです」
Kさん「そういえば、普段から体の右側が重いです。首、肩、背中、それで腰はずっと重いんです」
「デスクワーク時の姿勢に問題がある」とKen先生は指摘した。
「右利きですよね? パソコンを操作する時も左右均等にはならなくて、どうしても利き手の方に負担が掛かります。1日中、前かがみでパソコンを打っていると、右側ばかりに負担が掛かって、今、右肩が腫れあがっているように持ち上がっているんですよ」
まずは両足の親指の長さをチェック。
「右の方の親指が長いの、知ってました?」
Nさん「ホントですね……。知らなかったです」
「この差がバランスの悪さで、治らない原因になっているんです」
次に、痛む箇所をチェック。
「太ももは、左は前側が痛い」
Nさん「いたたた」
「右側は痛くない」
Kさん「痛くないです。え? なんで?」
足の付け根、みぞおち、肩、首と体の各所の痛みをチェックしていくKen先生。
「では、バンザイをして」
Nさんが両手を上げて、そのまま腕を内側に寄せると、左右の手の高さが違うために両手が重ならなかった。
「ヒジを伸ばした状態で、頭の上に持ってくると、両手の高さが違いますし、指の長さも違いますよね」
Nさん「あははは(笑うしかない)」
「このゆがみを治していかないといけないんです。じゃあ、もう少し、痛みをチェックします」
片足を曲げて、胸まで引き寄せて、外側に回す。
「腰は、どっちを曲げても痛い?」
Nさん「腰は、反ると痛いです」
両ヒザを曲げて、腰を浮き上がらせる。
両足を揃えたまま、体を曲げて足を頭上へ。
両足を揃えたまま、足を外側へねじる。
Nさん「右側が痛い場所と、左側が痛い場所があるのはなぜですか?」
「体がゆがんでしまってるんですよね」
一通りのチェックを終えて、Ken先生はKさんの体の状態を解説。
「背中は、もう少し進行すると側湾症と診断されてもおかしくないくらい、右の背中が出っ張ってましたし、肩甲骨は右側がモリっと盛り上がっていました。お尻もゆがんでしまっているんですよ。
これでは、いつも辛いですし、体も重くて、動くたびに痛みを感じる状態です。これでは仕事も全力を出せない感じですよね?」
Nさん「はい、辛いです」
「じゃあ、今、痛かったところを全部治していくようにしますんで。体の力を抜いて、楽にしてね」
Ken先生は、Nさんの眉間に指を置き、目を閉じて30秒間、沈黙した。さらに、指の位置を少し鼻寄りに変えてさらに30秒間。
「よし。じゃあ両手を頭の上に伸ばして」
ヒジを内側に寄せると、両手はピタリと重なった。さっきまでは左手が上、右手が下にズレて重ならなかったのだ。
Nさん「え……。揃ってます」
「じゃあ、さっきは腰を浮かせる体勢が痛かったよね。どう?」
Nさん「大丈夫です」
体を折り曲げても、ヒザを揃えたまま体をひねっても、Nさんの腰には痛みが出なかった。傍で見ていても、柔軟性が増したのが分かる。
Nさん「なんか軽いです……」
「じゃあ、立ってみて」
背中をチェックするKen先生。
「よし、揃ってるね」
両手を動かして、Kさんはさらに驚いた様子。
Nさん「なんかずっと背中が張っている感じがあったんですけど、全然張りがないです。え、なんで?」
バンザイしても、痛みはまったくなし。
Ken先生はニッコリ。
「以上です(笑)。でも、ちょっと気になるところがあるのでそこをもう少しやってみましょうか」
Ken先生は、Nさんの右の肩甲骨に問題があるという。
「肩甲骨が上がってしまっていて、ここが問題を起こしています。全体は治っているんですけど、局所に問題を起こしてる箇所があると、また痛みが出てしまうことがあるんです」
本来、同じ位置にあるべき左右の肩甲骨がズレてしまうのは、Nさんの仕事中の姿勢に問題があるのだという。
「普段、パソコンで仕事をしている時に、どうしても利き手(右)を使うことが多くて、体の右側が前に出てしまっているんですね。それで、縮んでしまう箇所があるのでそこが取れれば問題なくなっているはずです。肩と腕を動かしてみてください」
Nさん「えー、すごいです(笑)。この仕事を始めて、こんなに腕と肩が軽くなったことはないです」
Ken先生は、Nさんの痛む箇所を調べ、ゆがみをチェックし、そうして眉間に指を30秒間置く。それで痛みは取れてしまった。
山梨学院大学の柔道部での「一本指整体」では、へその辺りだったが、いつ眉間に変わったのか。
「指を置く位置はどこでもいいことが分かったんですよ(ニッコリ)。どこに手を置こうかな、と考えて、その時に一番いいと思った位置に置いてます。
これでは、種明かしにもなっていないんですけど『優しさの気持ち』を置きに行っているだけなんですよね。それで体が治っていくことが分かったんで。優しかったでしょう?」
Nさん「はい、優しかったです。一度、『こっちか』といって、指の位置を変えたじゃないですか。あれは何の違いだったんですか?」
「もう少し下かな、と思って(笑)」
そして、Ken先生からこんな提案があった。
「これは、実際に受けてみないと分からないんですよ。受けてください」
筆者は、Ken先生の治療を6月の初取材時に受けて、体が軽く、腕や肩の動きが良くなるのは実感しているのだが。
「いや、あれから僕、また成長しちゃってるんで(笑)。全然変わっていますから」
では、と一本指整体を受けさせてもらうことにした。
(次回に続く)
取材・撮影:茂田浩司
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Ken Yamamoto
東京都出身。東海大学体育学部卒業。中学・高等学校保健体育科教員1級免許取得。23歳で治療院開業。27歳で柔道整復師国家資格取得し、整骨院を開業。30歳で目黒区医師会立看護学校卒業し、免許取得。仙骨専門治療院、整形外科、総合病院整形外科、整骨院、介護センターを経て、整骨院開業。現在は、年間300日以上、海外を中心に解剖学を基に作られたKenYamamotoテクニック(KYT)のセミナー講義並びに大学の授業などを行ない後進の育成にも余念がない。腰痛患者さんの施術を招かれる各国で行なっている。KYTは現在40カ国で使われているテクニックとなっている。