多くの市民ランナーをサポートするクラブチーム「e-Athletes」ヘッドコーチの鈴木彰さんに、コロナ禍にも対応した最新ランニングノウハウを伝授していただくこの連載。第6回のテーマだったマラソンも含め、ランニングにはさまざまな楽しみ方があります。最終回は、クラブやチームに入るメリットと走ることの奥深さをうかがいました。
「原点はランニングを楽しむこと」
私がヘッドコーチを務めるe‐Athletes (イー・アスリーツ)のようにランニング界には、たくさんのクラブやチームがあります。特定の志向性や考え方を持つ方が集まってコミュニティになっている場合が多いので、そのようなクラブに加入しようと考えても自分の目指すべきところを把握していないとミスマッチが生じてしまいます。他のスポーツもそうだと思いますが、自己流で突き進んでしまうとろくなことありません。走ることは誰にでもできたとしても、綺麗に走ることはなかなか独学では難しいです。間違ったトレーニングをやることはケガにつながってしまいますし、それがつまらなくて続けられないという方もいます。ですので、コーチや先輩ランナーがいるコミュニティに入って、正しい形を学んでいくのがいいと思います。
現代社会では情報が溢れています。ネットで検索すれば山ほど情報が出てきますし、書籍も毎月何冊も出版されます。そういう環境で初心者に限らず多くのランナーが困っているのは、何を信じたらいいのかわからない。方法が見つからないというよりは、情報が多すぎて何を選べばいいのか困ってしまうということです。たくさん情報があるからといって、手当たり次第取り入れるのではなく、信じられるものを絞り込んだほうがよいでしょう。
同じランニングですから、白と黒くらい違うことはないですが、茶色かグレーくらいの違いはあります。気になった方法を試してみて、自分でいいなと思ったものだけに絞って取り組んでいくのが間違いないと思います。
そういった意味では、ランニングは本当に奥が深いと思います。ただ走るだけではなく、練習方法や技術もさまざまな種類がありますし、いくら学んでもキリがないです。単純な運動にもかかわらず奥が深いから、長く続けられている人がいるのだと思います。初心者に多いのは、自分の志向性とは違うのに、他人に合わせてしまうケース。それでは何が楽しいのかわからずにやめてしまうことが多くなります。
たとえば、健康増進を目指している方は、必ずしもマラソンを走る必要はありません。学生の部活動ではないので、誰かと競争をする必要はないのです。ストイックにチャレンジするのではなく、肩の力を抜きながら自分の目指す場所にゆっくり進んでいきましょう。原点はランニングを楽しむことです。その気持ちを失わずにいれば、走ることを通じて、得られるものが増えていくと思います。冬は夏よりも体への負担が少ない絶好のシーズンです。ぜひ、みなさんもランニングを始めてみましょう!
取材・文/高野昭喜
鈴木彰(すずき・あきら)
NPO法人あっとランナー代表理事、e-Athletesヘッドコーチ。日本体育協会公認陸上コーチ。東京学芸大学教育学部卒。中学から本格的に走り始め、高校・大学・実業団を経て1989年に指導者に転身。走歴40年、指導歴は30年を超え、大学生アスリート・トップ市民ランナーから、初心者、そして中高年ランナーを多数指導する傍ら、自らも生涯現役を標榜して走り続けている。1985年に初マラソン。ベストタイムは2時間20分43秒。日本陸連普及委員、ランニング学会理事を歴任し、2001年にクラブチームを形態としたランニングスクール・e-Athletesを設立した。