サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第78回は、「脂肪があったほうがダメージは軽減される」というプロレス界の噂の真相に迫る。
■脂肪が減ると受け身がつらくなる
私の知る限りにおいて、それは事実ですね。
それぞれの競技には適正体重というものがあって、選手は一番パフォーマンスを発揮しやすい体重を目指します。その中で体重別競技の場合は、自分が減量をした上でどの階級が最もパフォーマンスを発揮できるか、試行錯誤しながら見極めていく必要もあります。
一方で、プロレスも含めて体重制限がない競技や選手の場合は、基本的には大きい(重い)ほうが有利になりますが、それでもその中で自分に最も適した体重を探し、目指します。
プロレスは「受けの美学」などと表現されるように、相手の技を受けきるという不文律があります。また、入門して最初の練習も受け身から始まります。これはどんなアマレスのエリートであったとしても、あるいは柔道のメダリストレベルでも同様です。アマレスや空手などの格闘技には受け身の概念が薄い競技もありますし、柔道の場合でも柔道の受け身とプロレスの受け身はやり方も受け方も違いますから、一から徹底的に行ないます。
受け身の取れない攻撃によってケガをした場合は攻撃した側の責任ですが、受け身が未熟でケガをした場合は受け側の責任とも言えます。その際、どの部位においても強烈な衝撃を吸収しなくてはならないため、ある程度の脂肪がないとダメージが大きくなります。肉体改造やボディビルなどに挑戦するプロレスラーも少なくありませんが、減量に入って脂肪が減ってくるとひたすら受け身がつらくなると、減量中のプロレスラーは皆、口を揃えて話します。
新日本プロレスの棚橋弘至選手などは、受け身の衝撃を吸収する脂肪と見映えの肉体のギリギリの線を、じつに見事に融和させている例かもしれませんね。プロレスラーとしての肉体という観点から見ると、完成形に近い気がします。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。