魚の赤身・白身は、筋肉の性質の違い【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第85回は、魚それぞれの特性と赤身・白身の関連について。

■魚は速筋か遅筋かではっきり分かれている

マグロやカツオのように、つねに海の中を泳いで成長とともに生息場所を変えていく魚を回遊魚と言います。回遊魚も魚ですから当然、エラがありエラで呼吸をしていますが、エラ自体を動かす筋肉がないために口をあけて泳ぐことで、水(酸素)をエラに取り入れなくてはなりません。

魚も人間と同じで、通常は夜になると水中の岩陰などでひっそりと休み、陽が昇るのを合図に活動を始めるのですが、回遊魚の場合は完全に止まって寝てしまっては酸素が入ってこなくなるので、夜通しつねに泳いでいます。夜は代謝を落とし、ゆっくりと泳ぐようにして体を休めるモードに入るのですが、それでも完全に止まって休むことはないのです。

そうなるとつねに筋肉を動かしておく必要がありため、当然、遅筋が発達していきます。マグロの肉が赤いのは、筋肉中に酸素を蓄えるミオグロビンのせいなのです。これもつねに動いているため、大量の酸素が必要となります。

一方でヒラメのような白身魚はあまり動くことをせず、動く瞬間だけはものすごいスピードを出すという典型的な速筋です。瞬間的なスピードは速いですがつねに動く必要がないため、筋肉内にはそれほど酸素を蓄えておく必要もなく、必然的にミオグロビンは少なくなり色も白くなるというわけです。

動物においてもチーターやライオンといった肉食動物は速筋が多く、瞬発力はあっても持久力はありません。逆に補食対象となっている鹿やヤギなどの草食動物は、おっとりした動きながらも持久力に富んだ遅筋が多いのです。

ただし動物の場合は速筋と遅筋が完全に区別されておらず、比率としてどちらが多いかといった具合なのに対して、魚の場合は明らかに速筋か遅筋かで分かれていますので、マグロは赤身、ヒラメは白身と見た目ですぐに判別がつくのです。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。