座りながら10分でできる「背腹運動」
地球には重力があるため、生物はあらゆる形で重力の影響を受ける。歩行もそうである。四肢動物は頭を前に突き出して歩行するため、四肢で頭を支えることができない。人間は重い脳を持っているため、この歩行では、頭が下がってバランスが悪くなる。そのために直立二足歩行となり、重い頭を背骨が支えて構造的な安定を保っていると言える。しかし、細かく見ていくと、そうではないことがわかる。湾曲した背骨で重い頭部を支えるのだから、背骨に付随する頸椎や腰椎にズレが生じるのだ。それが腰痛などの一因になる。
西式医学の西勝造氏によると「特に頸椎は第一番、第四番。胸椎は第二番、第五番、第十番。そして腰椎は第二番と第五番は狂いやすい。これらの椎骨が狂ってくると内臓各器官の機能が悪くなる。こうした椎骨の狂いは『金魚運動』でも矯正できるが、背腹運動なら前後左右総合的に矯正されていく」という。
ではさっそく「背腹運動」のやり方を解説していこう。
この運動は神経と筋肉を整える準備運動をしてから始まる(準備運動の図は西勝造著作集第一巻より転載)。
以上の準備運動を1分以内で終わらせてから「背腹運動」に入る。
「背腹運動」は正座して、両膝を開く。また掌を開いて脱力して膝に置いてからスタートする。
まず、脊柱尾骨を支点にしてちょうどメトロノームのように左右に体を振る。振る理想的な速さは脊柱運動往復を1回として10分間で500回を標準とするが、最初からできるわけがないので徐々に慣れて500回に近づいていきたい。
同運動は脊柱運動とともに腹部運動も行うが、脊柱運動で左右に傾いたときに下腹部の中心を押し出すように力を入れるのが腹部運動である。つまり脊柱運動1往復で右に傾いたときに腹部運動1回、左に傾いたときに1回というように行っていくから腹部運動は標準1000回となる。
さて「背腹運動」の効果は脊柱の矯正もあるが、腹部の運動によって腹腔神経叢を刺激して、腸全体の循環を促進することで吸収機能を高め、さらに便秘を予防して、宿便を排泄していく。
また、西勝造著作集第一巻によると「背部運動は交感神経を刺激し、腹部運動は副交感神経の太宗である迷走神経を興奮させる。この両神経は常に拮抗状態にあって、背腹運動によって両神経を100%働かせて、健康体の神経的基礎を建設する」として、「背腹運動」は脊柱と腹の運動によって健康体にしていくと断言している。
ちなみに背腹運動をしている写真は西式医学の西勝造氏である。
文/安田拡了
参考資料…西勝造著作集第一巻「西医学の基本」(1983年、柏樹社発行)