【渡辺華奈のデートするならジムがいい 第23回】ベラトール直前インタビュー




渡辺華奈選手は6月25日(金=現地時間)、アメリカ・コネチカット州のモヒガン・サン・アリーナで開催される「Bellator261」に参戦。ベラトールフライ級2位のリズ・カムーシュ選手と対戦します(渡辺選手は3位)。今回の連載は特別編として試合直前の声をお届けします。
(6月16日取材/聞き手・佐久間一彦/撮影・森本雄大)

――試合が近づいてきましたが現在の調子はいかがですか?

渡辺 今はまだいつもとあまり変わらない練習をしていますが、疲れがたまらないようにやりすぎないようにはしています。短く濃くみたいな感じですね。

――減量は順調ですか?

渡辺 メッチャきついです。今回は8㎏の減量で試合が決まってからの時間が短いのできついです。カロリーはずっと減らしているのに全然体重が落ちなくて、集中力とパワーが落ちてくるのが自分でもわかるんです。体の節々も痛くて力が出ないし、毎日ベソかいて練習しています(笑)。

――減量が試合への最初の関門になりますね。

渡辺 はい。今までで一番減量幅があって、期間が短いので、ちょっときついなという感じはあります。でも相手はもっときついと思うんです。今回は当初対戦予定だった選手がケガで、変更になったんです。だから相手は自分よりも試合決定を聞いたのは遅いはずなので、「相手もきついんだ」と思ってやっています。

――対戦相手のリズ・カムーシュ選手は経験豊富な選手です。どれくらい相手の情報は入っているのですか?

渡辺 ベラトールでの試合は1試合しか動画はないのですが、UFCのときの動画があるので、それを見て研究しています。

――映像を見た印象は?

渡辺 柔術系の選手ではあるんですけど、オールラウンドに何でもできて、試合運びがすごくうまいですね。ポイントをとるのがうまいというか、試合巧者という印象です。今まで闘ってきた選手の中でも、一番強いのかなと思っています。フィジカルもすごく強そうな印象があります。

――外国人選手はコンタクトしてみないとわからないフィジカルの強さもありそうですね。

渡辺 そうですね。外国人選手は骨格がデカイですし、日本人選手よりもフレームが大きいですよね。結構リカバリーしてくるので、試合当日に向かい合うと前日の計量時よりも一回り大きくなっていて「デカイな」って感じることがあります。

――対策は考えていますか?

渡辺 映像は見ますけど、どちらかというと、対策よりも自分を高めていくことに重点を置いています。自分はできることがそれほど多いわけではないので、得意なことをぶつけていくという形になると思います。ただ、対日本人よりは気持ち的には全然やりやすいです。

――気持ち的にやりやすいというのは?

渡辺 日本人の場合は相手のSNSが目に入ってきたり、周りにあおられたりということがありますが、遠い国でまったく知らない選手との対戦だと、そういうことを気にしなくていいので、気持ち的にはやりやすいです。邪念がなくなります。

――前回の試合を踏まえて、異国の地で闘うという部分への対策は?

渡辺 まずは持ち物を減らせるかなと思っています。前回は現地で手に入らなかったら嫌だなと思って、いろいろ持っていきすぎたので(笑)。現地に着いてからの流れとか、練習場や計量会場の場所とか、そのへんは一緒なのでやりやすいかなと思っています。

――ラインキング2位のカムーシュ選手に勝てばタイトルへの挑戦も見えてきます。プレッシャーはありませんか?

渡辺 プレッシャーはないですね。もちろん、ここで勝ってタイトル挑戦までいきたいという気持ちはメチャクチャあります。ただ、先を見すぎずにこの試合に勝つことに全力を注ぎたいと思っています。

――試合順もセミファイナルということで、主催者側の期待の大きさも感じますね。

渡辺 日本の大会でもセミファイナルでやるなんてことがないので、ビックリしました。プレッシャーはまったくないですけど、次はメインかなみたいな(笑)。

――タイトルマッチのときはメインイベントになるかもしれないですね。

渡辺 そうですね。北米の団体で日本人選手がセミファイナルでやらせてもらえるのはすごく光栄だと思います。でも自分はもともと試合順にはこだわりがないんです。1試合目にやって早く帰りたいなって思ってるくらいなので(笑)。

――試合順で準備の時間も変わりますからね。

渡辺 日本の試合は前の試合が早く終わると、出番が早まったりするんですけど、海外の試合は何時から何試合目というのがキッチリ決まっているんです。だから他の試合で自分の出番が変わることはないので、すごく合わせやすいですね。

――お話を聞いていると気負いはなさそうですね。

渡辺 普段通りです。今はただただ減量を頑張ろうという感じです。ベストのコンディションに持っていけば、あとは試合で出し切るだけですから。出し切れないのが一番嫌なので、やってきたことをしっかり出せるように調整していく感じです。そう思いつつも、自分に期待しすぎないようにしています。

――自分に期待しないというのはどういうことですか?

渡辺 自分自身に期待しすぎると、練習でやってきたことができなかったら焦ってしまったりするからです。打撃の練習もしていますが、試合ではそんなにうまくいかないかもなっていうくらいの気持ちでいます(笑)。自分の強みは他にもありますからね。そういえば今回は観客ありなんですよ。

――それは前回とは大きな違いですね。

渡辺 前回は無観客だったので、試合会場である程度自由に行き来できたんですけど、観客が入ると移動に制限が入るかなと思っています。

――お客さんは声を出して観戦できるんですか?

渡辺 UFCは観客を入れてやっていて、お客さんはマスクもしていなくて、ガンガン声を出していました。ワクチン接種がそれだけ進んでいるんだと思います。歓声があるとセコンドの声が聞きづらくなるかもしれないですけど、歓声はやり甲斐にもなるので楽しみですね。

――最後に改めて意気込みをお願いします。

渡辺 勝ち負けは後からついてくるものだと思っているので、とにかく自分がやってきたことを出し切るだけです。その前に今は「減量頑張ろう!」って気持ちです(笑)。

 

 

 

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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。MMAデビューから無敗の快進撃を続けている。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW