インターハイに向けて役に立つかもしれない、たぶん役に立たない話。【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第171回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 7月です。2021年もあっという間に半年が過ぎていきました。

 

さて、夏といえば高校生にはインターハイがあります。私自身、高校2年時、3年時とインターハイには2度出場しています。今回は高校最後の大一番に挑む学生さん向けに、もしかしたら役立つかもしれない話、たぶん役に立たない話をお届けしましょう。

 

まず基本的な情報をお伝えしておくと、インターハイの正式名称は全国高等学校総合体育大会。高校総体とも呼ばれる、高校スポーツ最高峰の祭典です。戦後間もない頃は、それぞれの競技がバラバラの時期に全国大会を開催していましたが、1963年に高体連が各競技の全国大会を統合して開催するようになったのが始まりです(野球の甲子園は高野連主催なのでインターハイではありません)。

 

サッカーは冬の選手権、ラグビーは冬の花園、バレーボールは春高バレー、バスケットはウインターカップなど、インターハイ以外の注目大会もありますが、高校スポーツに取り組んでいる多くの学生が目指す頂点がインターハイになります。

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インターハイの前には各都道府県別に全競技の出場者が集う、結団式がおこなわれます。出身地である神奈川県は全体的にスポーツが強い県で、私の年代も各種目で有力選手が多く存在していました。ラグビーは相模台工業が、バレーボールでは釜利谷高校が全国王者として君臨していた年で、個人競技でも有力選手が多く、結団式は非常に活気のあるものでした。

 

式ではいろいろな偉い人たちが何か喋るのですが、高校生はそんなに話をしっかり聞いていません。その中で唯一覚えているのが、釜利谷高校バレーボール部の蔦宗浩二監督(当時)の話です。春高バレーを制した名将として蔦宗監督が講演を行ない、「大会で勝つための心得」みたいな話をしてくれたのです。

 

その内容の一つが睡眠です。インターハイともなると試合前は緊張して眠れないというケースが多々あるので、「こうしたら自分は眠れるという必勝パターンをつくっておけ」という話でした。試合にベストコンディションで臨むためにも睡眠は大事。この話を聞いた後、自分なりの睡眠必勝パターンをつくることにしました。

 

布団に入ってすぐに眠れるときは何もしません。しかし、減量期間に入ると空腹と試合が近づく緊張もあってすぐに眠れないときがあります。そこで必勝パターンの投入です。私は頭の位置と足の位置を180度入れ替えて寝るということを必勝パターンにして、大会前は寝るスイッチを入れることにしました。必勝パターンを投入して「寝るぞ」という意識になるだけで、すんなりと眠りに落ちていけていた記憶があります。

 

そして迎えたインターハイ本番。個人戦は初日が1~3回戦(私は第二シードだったので2回戦から出場)、2日目が準々決勝~決勝というスケジュールでした。初日の前日、3年間の集大成を前に気持ちは高ぶっていましたが、必勝パターンを投入して、すんなり眠ることができました。

 

よく眠れたこともあって体調は良く、試合は順当に3回戦を突破して2日目の準々決勝へ。試合後、前日の計量後から3.5㎏増加していたため、再び減量。制限時間内になんとか体重を落として2日目の計量もパス。これで何も気にすることなく、食事ができるようになったため、とにかく食べられるだけ食べてしまいました。

 

その結果、緊張して眠れない、気もちが高ぶって眠れない…ではなく、お腹がいっぱいすぎて眠れないという事態が発生。必勝パターンの投入の有無に関係なく明け方まで眠れず…自分の体調管理の甘さで撃沈しました。

 

個人的には眠るための必勝パターンをつくるのは、良い試みだったと思っています。緊張してしまうタイプの人は、普段からそういうルーティンをつくっておくのも良いと思います。そして体調管理という意味では睡眠だけでなく、食事も大事。くれぐれも食べ過ぎには注意してください。

 

以上、あまりに役に立たない話でした。

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアン、パラリンピアンの取材を手がける。