――しなやかさが求められるダンサーは、体幹を意識しているようですが、それは簡単にいうと、腹筋に力を入れるということ？
中野 平たく言うと、そうですね。けど、基本的にはずっと、自分の体の全部を動かしているんですよ、ダンサーの場合は。だから、1カ所の筋肉を集中して鍛えていくということは、あまりなくて。例えば、手が引っぱられると、脚が上がって、そうするとお腹に力が入るとか。つながっているんですよね、動きって。
――ダンス経験のない一般女性ができる、しなやかボディのつくり方って、ありますか？
中野 常に何かで頭を上から吊られている感覚を持つことが、非常に重要だと思います。私は今でもダンスを教えているんですけど、日常から生徒さんに気をつけてほしいと思っているのが、これ。頭のつむじが、ずっと引っ張られている感覚であってほしい。これだけで、変わるんですよ。体幹の負荷もかかっているし、姿勢をキレイに保てる。姿勢がよくなると、体幹も鍛えられる。毎日繰り返すことで感覚って研ぎ澄まされるので、なかった筋肉がついてくれば、感覚としてわかるようになってきます。
――柔軟性は、どのようにすれば身につきますか？
中野 私の場合はちっちゃいときから、「開脚して寝なさい」とか「寝る前の1時間は、開脚して上半身を床につけていなさい」とか、先生から言われていたので、柔らかくなったんですけど……。
――スパルタすぎて、一般女性のお手本にならない（笑）。
中野 ハハハ（笑）。そうですよね。大人になると、なかなか難しいですけど、寝る前に絶対にストレッチをするようにしています。あと、準備体操が大事って言われているんですけど、動く前のストレッチより、動いたあとのストレッチのほうが大事だと思います。ちゃんとクールダウンをしてあげると、体は柔らかくなるし、筋肉がヘンな形でつかなくなる。逆に、運動後のストレッチをしてあげないと、固い筋肉になってしまって、どんどん固まってしまう感じが、私はしています。
――ストレッチの大切さは、モデルさんが常に言葉にしていますよね。さて、ダンサーからプロレスラーになったとき、トレーニングはどのように変わっていきましたか？
中野 体を大きくしようとしました。「筋肉ではなくて、脂肪をつけろ」と言われたので、まずは体重を増やそうと。なぜかって言ったら、ケガをしないため。高いとこから落とされたり、投げられたり、潰されたりしたときに、自分に脂肪がないと、骨がすぐ折れちゃうんです。なので、脂肪をつけたんですけど、そうすると、動きづらい。それでいて、プロレスラーって観られる人だと思うので、見た目も美しくないといけない。だから、ラインもキレイにしていこうと、筋肉のトレーニングを始めました。今は、ダンサーだったころより体重は重いんですけど、見た目は細く見えるんじゃないかなぁって……勝手に思ってるんですけど（笑）。
――体重の、具体的な変動を教えてください。
中野 53～54㎏から、ピークは64㎏までもっていきましたね。今は55㎏あたり。食べていたなぁ、昔は……（笑）。
――増えた脂肪を落としながら筋肉をつけていく過程では、どんなことをしましたか？
中野 糖質と脂質をカットして、タンパク質を3時間置きに20ｇずつ摂りました。朝起きて鶏肉を食べて、昼食で鶏肉を食べて、15時に鶏肉を食べて、18時にプロテイン、21時にプロテイン、みたいな生活を2カ月ぐらい。最初は死ぬかと思いましたよ、飢餓状態で。タンパク質であれば、鶏肉以外でも大丈夫なんですけど、胸肉やササミが一番適していますよね。結果、ダンサーのときよりも、筋量が増えました。筋肉の量を増やしながら、脂肪を落としたんですね。食事制限をしながら、筋肉を落とさないように、落とさないようにって。
――3時間ごとの摂取って、難しそうですが。
中野 トレーナーさんに教えていただいたんですけど、私も最初、それをやれって言われたときは、不可能じゃないかなって思ったんです。でも、家で朝、おにぎりを握る代わりに、鶏肉を蒸して塩をかけて、ラップをして持っていく。それだけでいいんですよ。ご飯が鶏に変わっただけ。外出していて、なかなか難しいときも、3時間経ったら、鶏を出して食べるだけ。それさえも難しいというときは、プロテインを溶かしておいて、ペットボトルに入れておけば補給ができるんで。始めてみると、意外と簡単です。
――普通の女の子じゃ、心が折れてしまいそう……。
聞き手／伊藤雅奈子 撮影／神田勲
＜取材協力＞
ヒロ鍼灸整骨院
