「卓上の格闘技」の魅力を体現!アームレスリング日本王者・坂本英隆が川崎の熱戦を制す




2/13(日)、神奈川・カルッツかわさきにて、「JAWA presents アームレスリングトーナメント」が開催された。本大会は非公式大会ながら、昨年に続き日本アームレスリング連盟(JAWA)のサポートの下で行なわれ、ルールもJAWAの基準に則って実施。そのため国内トップクラスの実績を持つ選手が出場するなど、大きなにぎわいをみせる大会となった。

中でも大混戦となった「Sクラス/右ライトハンド」で優勝をはたした坂本英隆は、「猛獣」の愛称で親しまれている現役全日本チャンピオンだ。過去10度の全日本制覇をはたした坂本は、得意技である「ガッチリ」(相手の手首を巻き込んで引き込む技)を駆使してトーナメントを駆け上がり、見事に優勝を飾った。

そんな坂本がアームレスリングを始めたのは、過去に仲間内で行なった腕相撲がきっかけだったと言う。そこで人一倍が強かった坂本は、本格的にアームレスリングの大会に参戦するが結果は3位。闘争心に火が付き、どんどん競技に夢中になっていった。

「アームレスリングは、数ミリのポジションで勝敗が左右されるスリリングな競技です。集中して、いかに相手よりも早く有利な場所をとるかの緊張感がたまらないですね。“卓上の格闘技”と言われる由縁もそこにあるのではないかと思います」

選手として本格的に活動するようになった坂本は、ケーブル種目やプリーチャーカール、懸垂などで鍛えつつ、対人練習で勝負勘に磨きをかけていく。すると戦績はどんどん上昇し、ついには全日本大会で優勝を重ねるようになった。そんな中、王者と呼ばれるようになった坂本に壁が訪れる。

「今から3年前、大きなケガをしてしまいました。アームレスリングはヒジを酷使するので、神経が圧迫されて小指と薬指に痺れが出たんです。指で物を掴むこともできず、握力も20㎏まで落ちたときは流石に参りましたね。これはまずいと思い、手術を決意しました」

アームレスリングにおいて命とも言える握力を失った坂本だが、約1年半のリハビリの末に復帰をはたした。歯科技工士として差し歯をつくる仕事をしていることもあり、手先の細かい作業がリハビリの効果を底上げしてくれたと言う。

「復帰後は中々調子が戻りませんでしたが、やっとほぼ100%に近い状態で闘えるようになってきました。今回の大会で、その実感を強く感じましたね」

強さを取り戻した坂本が次に目指すは、今年6月に栃木県で行なわれる「いちご一会とちぎ国体」だ。前回は準優勝だった雪辱を晴らすべく、頂点を目指して鍛錬に励む。

「国体ももちろんですが、チャンスがあれば世界大会にも出場したいです。世界には過去3回出場しているのですが、最高で6位までしか行けていません。次こそはもっと高いところに行けるようにがんばります」

大会への出場に加え、2021年からはパーソナルトレーナーとしても活動をスタート。進化を続ける“猛獣”は、新たな挑戦にも全力でぶつかっていく。

「トレーナーとして筋トレ指導はもちろん、アームレスリングの指導も行なっていきます。気づけばアームレスリング歴が27年になったので、長年自分が培ってきたものを伝えていきたいと思います」

取材・文・写真/森本雄大