近年ジムが多く誕生し、その用途も多様になってきている。そこで本企画では、独自の取り組みをしているジムに取材を敢行していく。今回訪れたのは東京・池袋にある「パーソナルトレーニングジム Clara」。昨年オープンしたばかりの、オタク女子向けのパーソナルジムだ。第1回目は、一見結びつかないオタク×ジムが誕生したヒストリーに迫った。
Claraのスタジオは池袋Aスタジオ・池袋Bスタジオ・池袋Cスタジオの全部で3店舗。今回は池袋Aスタジオにお邪魔した。店内にはアニメのフィギュアやポスターなどが多く見られ、まさにオタク文化とトレーニングジムが融合した空間となっている。
オタクと言えば推し活、コラボカフェ、イベント、コスプレなど、非日常ともいえる世界を楽しんでいるイメージがある。そんな中、オタク女子のジム通いには、いったいどのようなニーズがあるのだろうか。
今回、取材にご対応いただいたのは(株)クララボ代表取締役のSAKUさんと、トレーナーのSAINAさん。
まずはご自身も筋金入りのオタクだというSAKUさんに、ジムの特徴や設立の経緯などを伺った。
「オタクの健康を支えたい」という思いで一念発起
――オタク向け女子専門パーソナルジムを設立した経緯は、どのようなものだったのでしょうか。
「私も推し活やコスプレなどを長年続けているのですが、その中でも推し活に打ち込むあまり無茶をしがちな友人をたくさん見てきました。同人誌作家の友人が食事も忘れるほど作品に没頭して救急車で運ばれたり、ライブでペンライトを振り続けていた友人がライブ後には疲労困憊になっていて、みんな私より早く倒れてしまうのでは? と不安になったんです。友人はもちろん、これから会うかもしれないオタク仲間の健康をなんとかしたいと思って、ジムを設立することにしたんです」
――通常のトレーニングジムではなく、オタク女子向けにこだわったのはなぜでしょうか。
「以前は私もパーソナルジムに通っていました。ただその中で、ムキムキの男性トレーナーさんに『コスプレのために腹筋を割りたい』などと打ち明けづらかったんです。オタクの趣味って受け入れてもらえるか不安なんですよね。コラボカフェに行った写真もキャラが映っているので、食事報告の連絡にも気恥ずかしかさがありました。ですので、本音で話せてオタク女性も通いやすい、楽しくトレーニングできるジムをつくろうと思ったんです」
――オタク女子のお客様からは、実際にどのような要望があるのでしょうか。
「最初にカウンセリングシートを記入していただくのですが、本当にいろいろなニーズが見えてきます。多いのが『推しに恥じない体になりたい』、『ライブを楽しむために体力をつけたい』、『着たい衣装がある』などですね。他にも『痩せたらコスプレしたい』、『長時間のゲームに耐えられる体になりたい』、『遠征も辛くない強靭な体がほしい』、『日々の原稿執筆で体力がきつい』などもありました。オタクの活動では、イベントで長時間移動したり、タイトなスケジュールを実行することもあります。そのため、かなりの体力が必要になるんです」
――ちなみに「推しに恥じない体」とは。
「これにはいろいろな意味がありまして(笑)。推しのキャラクターや芸能人が出るライブやイベントに行くためにきれいになっておきたいというのはもちろんですし、夢女子ってわかりますか」
――うーん、ちょっとわからないです(笑)。
「オタク界には夢小説という文化があるんですけど、自分とキャラクターの恋愛模様を描いていたりするんです。推しのキャラに本当に恋している『夢女子』としては、恋愛対象に想いを抱くような形で『推しに恥じない体』と言ったりもするんです。キャラの身体に近づきたいコスプレイヤーさんもいらっしゃいますし、一口に推しに恥じないと言っても、色々な思いが詰まっているんですよ」
――そういった思いをしっかりぶつけられるのは、オタク女子にとっては願ってもないことですね。トレーナーはどのような方が在籍しているのでしょうか。
「9名のオタク女子トレーナーが在籍しています。管理栄養士の資格を取得している方や、トレーナー歴17年の方もいたり、本格派のトレーナー陣ですよ。今日来てもらっているSAINAトレーナーもすごいんです」
代表のSAKUさんが絶賛するSAINAトレーナーは、どのような方法や思いで指導を行なっているのか。次回は、自身もアニメを愛するオタクだというSAINAトレーナーのインタビューをお届けする。
(第2回へ続く)
取材・文/森本雄大
写真/森本雄大
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