ベンチプレストレーニング解説編【三土手大介が伝授する4スタンス理論×トレーニングvol.9】




近年は多くの識者がさまざまなメディアでトレーニング情報を発信し、「いったいどれを参考にすればいいんだ、何が正解なんだ」とトレーニーたちが頭を悩ませがちである。そのような中、個々の身体特性を引き出す「4スタンス理論」をベースに指導にあたっているのが、元パワーリフティング世界チャンピオン・三土手大介さんだ。全9回に及ぶ三土手大介さんのシリーズも今回で最終回。実践編第4弾は、ベンチプレスについて4スタンス理論の観点から解説してもらった。

ベンチプレスは細かいセッティングが多い

ジムでのトレーニングと言ったら、ベンチプレスが浮かぶ人も多いのではないでしょうか。じつはこれまで紹介したスクワットやデッドリフトと比べるとセッティングが多く、難しい種目なのです。ここでも大切なのは、土台づくり。正しい形でアーチをつくることが重要だと三土手さんは言います。

「アーチをなぜつくるのかと言うと、肩や首の付け根、首筋、肩甲骨で土台をつくるため。ここがバシっと決まると、腕を曲げて伸ばすための通り道ができます。それによって、肩などに極端に負担がかかることもなくなります」

モデルを務めたA1タイプの編集部員・中野は、ベンチプレスは学生時代ぶり。当時はアーチをつくることも、足を使うこともしておらず、ただひたすらに上半身のみでバーベルを持ち上げるようにやっていたようです。

「タイプによって、体の折り目が違います。トップリフターを見ても、形が違うのがわかると思います。A1タイプは、とくに股関節や鼠径部(そけいぶ)の伸展がポイント。また、肩と首の付け根を柔らかく使いたいタイプなので、そこを固めずに柔らかく収めてあげることで、アーチができやすくなります。加えて、アーチを保つために足裏全体でしっかり踏ん張って、首筋がベンチ台に密着するように意識することも大切です」

また、バーベルの握り方も意識するポイントがあります。

「手にしっくりくる形にしましょう。A1タイプであれば、じつはコツは簡単。バーベルを伸びるゴムだと思って、外側に引っ張るような感じで握ってみましょう。手のひらの中にバーベルが斜めに入るので、クロスタイプのA1にとってはバシッと決まる握り方になります」

こうして土台をつくったところから、バーベルを上げ下げしていきます。足をしっかり踏み込みながら、やや斜め下におろして、また斜め上に上げていく。上げたところでグラつかないために、やはり地面をしっかり踏むこと。なるべく等速で上げ下げすることもポイントです。

「ベンチプレスは、一つ一つをちゃんと意識してセッティングして、それを無意識でできるまで反復していくと精度が上がってきます。でも、腹筋トレーニングの解説でも言いましたが、自分のタイプと異なる形でセットされた中でやって、そのキツさから『効いた』と勘違いしがち。それでは意味がありません。自分のタイプの形でやって、ケガなく安全に強くなっていきましょう」


これまでインタビューと実際にトレーニングの解説をしてもらいましたが、共通して言えるのは、誰かの真似をしてそれを正しいフォームと思うのではなく、自分のタイプに合った形でやるのが大切であるということ。それこそが、あなたにとっての正しいフォームとなります。自分でそれを見つけるのは簡単ではないですが、今回の連載を読んで、見て、自分の体のタイプにより興味をもってもらえると幸いです。


文・撮影/木村雄大

三土手大介(みどて・だいすけ)
1972年8月26日生まれ、神奈川県横浜市出身。ウエイトトレーニングジムNo Limits代表。レッシュマスター級トレーナー。一般社団法人レッシュプロジェクト理事。
高校3年生のときにパワーリフティング競技をはじめ、20歳のときに全日本選手権110キロ級で史上最年少優勝。次々に日本記録を塗り替え、世界大会にも積極的に参戦。2000年の世界選手では、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトでトータル1トンを記録し、ベンチプレスは当時の世界記録を塗り替えた。現在はトレーニングジムNo Limitsの代表として、トレーニングの指導にあたっている。自己ベストは、スクワット435キロ、ベンチプレス360キロ、デッドリフト320キロ、トータル1060キロ。4スタンスタイプはA2。
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