柔道家なら誰もが載ることを夢見てきた雑誌「近代柔道」(通称・キンジュー)が、7月発行号をもって休刊することが発表されました。キンジューは小学校の頃から読んでいて、大好きな雑誌なので、すごく残念です。
初めてキンジューに名前が載ったのは小学生のときです。東京都の大会で入賞すると、後ろのほうの記録のページに名前が載って「キンジューに名前が載った!」と、うれしかった記憶があります。高校生くらいになると全国大会で結果を残していたので、写真付きで載るようになって、読むのがどんどん楽しみになっていきました。
大学時代、自分は“キンジュー係”でした。これは何かというと、まず、大学では2年生になると、一人最低一つは係を持つことになっていました(1年生は雑用全般)。主務やVTR係、外国人係など、いろいろな係がある中で、自分は“キンジュー係”だったんです。「近代柔道」や機関誌の「柔道」、それから「柔道新聞」といった読み物を注文したり、届いたら、みんなが取れるところに置いて、「近代柔道が届きました!」と報告する係です(他にトレーニング係もやっていました)。
自分は柔道オタクなので、キンジューを隅々まで読んでいました。その中でもとくに好きだったのは、最後のページにあった「りれーとーく」という連載です。これは「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングみたいな感じで、登場した人が次の人を紹介して、また次の人が次の人を紹介して……とリレーをしていく連載です。
この楽しみにしていた連載が、自分に回ってきたことがあったんです。東海大学の先輩で全日本の優勝経験もある平井希さんからの紹介で出番がきました。このコーナーは実績がなかったり、知名度がなかったりしたら出られないので、「次に出てほしい」と連絡があったときは、「りれーとーくに出られるなんて!」と、本当にうれしかったです。ずっと見てきたページに自分が出るのは不思議な感覚でした。
他に好きだったのは強化選手名鑑です。これには自分も掲載してもらっていました。強化選手全員の顔写真と、生年月日などのプロフィール、趣味や座右の銘なども載っていて面白いんです。自分が載るのもうれしいし、他の選手の情報を見るのも楽しみでした。
高校時代は学校が渋谷だったので、歩いていると雑誌のアンケートをお願いされることがあり、それに答えると図書券がもらえるということがありました。だいたいのアンケートには「読んでいる雑誌」という欄があって、友だちは「Popteen」とか「Seventeen」とか、いかにも女の子っぽいものを書くのですが、自分は「近代柔道」と書いてました。それくらいの愛読書でした。とにかく休刊は残念な気持ちでいっぱいです。
読書という部分でも、自分は柔道ばかりかもしれません。パッと思い浮かぶのも、木村政彦先生の「わが柔道」くらいです。そんな自分がこれから読もうと思っているのが、竹内徹先生著、佐藤宣践先生監修の『ワールド柔道』です。
これは柔道の技術書ですが、実演モデルとして登場しているのが、秋本啓之さん、福見友子さん、飛塚雅俊さん、ベイカー茉秋選手、ウルフ・アロン選手とすごい人ばかりで、技一つひとつに相四つバージョンとケンカ四つバージョンがあるのがいいですね。
女子で唯一、登場している福見友子さんは自分がJRにいたときのコーチでお世話になった方です。以前、福見さんはインスタに一人打ち込みの動画をあげていて、一人なのに相手が見えるくらいキレキレの動きでした。そんな福見さんの技術も紹介されています。
柔道の話を始めると止まらなくなります。結局、何が言いたいかというと、「柔道サイコー!」ということです。
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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW