佐久間編集長のパーソナルトレーナー百人斬られ(仮)Vol.10 佐藤凌(かたぎり塾)前編




VITUP!編集長・佐久間が全国のパーソナルトレーナーさんを巡っていく「パーソナルトレーナー百人斬られ(仮)」。今回は全国に73店舗展開中のかたぎり塾で取締役も務める、佐藤凌トレーナーの登場です。理学療法士として総合病院で働く中、なぜトレーナーの道へ進むことになったのか? 大事なのは「ホスピタリティ」と語る佐藤トレーナーの人物像に迫ります。

きっかけは筋肉とケガ。中学時代からの筋肉への憧れと、高校時代の度重なるケガによって、佐藤凌トレーナーは現在の仕事へと導かれていくことなりました。

 

中学時代から「筋肉に興味があった」という佐藤さん。これは単にムキムキの体に憧れたわけではなく、人体の構造への興味が大きかったと言います。

 

「筋肉はどういう仕組みで動いているのだろう?というところに興味があって、すごく変な中学生だったんです。それから『アイアンマン』を見るようになって、『Mr. Olympia』に出ている人たちを見たときに、どうしたらこんな体になるのだろう?ということも考えるようになりました」

 

筋肉への興味を持ちつつ、高校では甲子園を目指して野球に励む日々を過ごします。しかし、度重なるケガに悩まされることもありました。

 

「肩を痛めて、腰を痛めて、ヒザを痛めて、両足首を痛めて……というように、ケガが多くて満身創痍の状態で練習をやっていることもありました。フィジカルトレーナーさんはいたのですが、あまり詳しいケガの予防を教わることもなく過ごしていて、高校3年になって将来の進路を考えたときに、体のことに携わる仕事をしたいと思いました。そこで選択肢として柔道整復師と理学療法士が出てきて、よりいろいろなことができそうな理学療法士を目指すことにしました。中学時代から興味があった筋肉とか人体のことを勉強しながら仕事ができるなんて最高じゃん!と思っていました」

 

茨城県立医療大学理学療法科で学び、理学療法士の国家資格を取得。卒業後は大手企業立の総合病院に勤務して、心臓血管系や筋骨格系など、幅広い疾患に対して施術を行なってきました。佐藤さんは理学療法によって患者さんの症状が回復する喜びを得る反面、もどかしさを感じることもありました。

 

「慢性疾患と呼ばれる生活習慣病の方はすごく多くて、治療して症状が軽くなれば退院していきます。ただ、生活習慣が治っていないとまた病院に戻ってきてしまいます。『こうしたほうが良いですよ』というお話をしても、60年、70年と長く生きてきた方は、なかなか若造の意見で生活習慣を変えるということがなくて……。国家資格までとって本当に良くしたいと思って提案をしても、『今さらそんなことをやりたくない』と拒否されてしまうと、自分のふがいなさを感じていました」

 

佐藤さんは病院では心臓リハビリテーションを担当。心筋梗塞や心不全になった方に対してリハビリを行なってきました。リハビリで回復する患者さんがいる一方で、懸命にリハビリをしても回復には至らず、どんどん弱っていき、最後は亡くなってしまう姿を見ることもあり、「なんで理学療法士になったんだろう」と自問自答する日々が続きました。

 

とにかく人を元気にしたい!という思いが、佐藤さんが理学療法士を目指した原点であり、その原点に立ち返って方向転換することを決断します。

 

「長く生きてきて病気になってしまう方は、すでに生き方や思考が固まっていて、なかなか提案を聞いてくれないことがありました。だとしたら、生き方や思考が完全に決まってしまう前の方にアプローチすれば、その後の人生を変えられるのではないかと思ったんです」

 

病気の人を治すのではなく、病気にならないようにしてもらうという発想の転換。もともとトレーニングが好きだったこともあって、理学療法士でありながらトレーナーという道を模索します。そんなときに中学時代の同級生だった片桐祥氏が立ち上げた「かたぎり塾」の存在を知り、外部講師としてジムに関わることになります。

 

「パーソナルトレーナーはダイエットやボディメイクは得意ですが、一方で肩こりや腰痛、体の不調や機能改善へのケアに苦手意識がある方もいます。片桐の考えとしては、トレーナーはそういうところも診ていけるような存在にならなければいけないということで、私に外部講師の依頼がきたんです」

 

およそ1年間トレーナー陣に理学療法士として自身が学んできたことを伝える外部講師を務めたのち、かたぎり塾の事業拡大に伴い、片桐氏から「トレーナーの育成やマネジメントをしてほしい」と、正式なオファーを受けました。そして佐藤さんは総合病院を退職して、かたぎり塾に入社します。

 

理学療法士であり、トレーナーとなった佐藤さんが大事にしているのは「ホスピタリティ」だと言います。

 

「病院は具合が悪くなった方が来てくれます。しかし、ジムの場合は何もしないとお客様は来てくれません。どうしたら来てくれて、通ってくれるようになるかを考えたら、ホスピタリティはとても大事だと思います。トレーニングの質を突きつめていくことは当然として、ここに来たいと思ってくれる空間つくりも大切です。たとえば高級フレンチに行ったら、料理が美味しいのはある意味で当然じゃないですか。もっと価値を感じる部分というのは、入店してからのエスコートや、店員の立ち振る舞い、料理を持ってきたときの会話など、空間すべての値段がついていると思っています。ジムもそれと同じで、かたぎり塾は1回7,700円と安価だとは思いますが、安かろう悪かろうではダメ。ジムに入室された瞬間から退室されるまで、細かい部分まで意識をしてお客様に空間を楽しんでいただきたいと思っています。体を動かして気持ちがいいというだけでなく、この場所に来たら元気になれる空間として認知していただけるところを目指しています」

 

多店舗展開しているかたぎり塾だからこそ、このホスピタリティの精神をはじめ、機能解剖学、基礎的なエクサイサイズは外さないことなど、不可欠な部分を徹底しています。そこにプラスして、トレーナー個人が学んだエッセンスを加え、それぞれの引き出しでお客様にとって最善のトレーニングを提供することが大事というのが佐藤さんの考え。自身も理学療法士だからできるトレーニングを心掛けています。

 

「トレーナーはトレーナーとして良い面があって、理学療法士には理学療法士の得意な面があると思うので、それを掛け合わせて良い方向に向かえたらと思っています」

 

トレーナーと理学療法士の二刀流は、ボディメイクやダイエットはもちろん、体の不調、機能改善にも力を発揮します。佐藤さんは多くのお客様に元気を提供するべく、これからも二刀流で奮闘していきます。

 

というわけで、次回は実際のトレーニングの様子をお届けします。

 

 

【トレーナーPROFILE】
佐藤凌(さとう・りょう)
1994年生まれ。山形県出身。茨城県立医療大学理学療法学科卒業。大手企業立の総合病院に理学療法士として勤務し、心臓血管系や筋骨格系などの幅広い疾患に対して施術を行なう。予防医学の重要性を感じ、パーソナルジムを運営する株式会社かたぎり塾に入職。トレーナー研修やサービス設計、新店舗開発などに従事し、約10ヶ月で取締役に就任。現在は、腰痛・肩こりに悩む人々に対して、他者依存ではなく、自己解決できるアプローチを啓蒙している。

 

【店舗情報】
かたぎり塾
2022年8月現在、関東を中心に全国で73店舗経営中。
〔料金〕※税別
月4プラン=28,000円(週1回60分、月4回)
月8プラン=54,000円(週2回60分、月8回)
回数券4枚=32,000円(※有効期限なし)
LINE食事サポート=10,000円(期間は2週間)
※ウェア、シューズ、タオル、運動後のプロテイン完全無料。

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアン、パラリンピアンの取材を手がける。