病院でもらう薬と市販の薬は何が違うの?【ドクター長谷のカンタン薬学】




風邪をひく、頭痛、筋肉痛、二日酔い……日常生活では何かと薬のお世話になる機会も多いもの。薬はドラッグストアやコンビニでも簡単に手に入る時代。だからこそ、飲み方を間違えると大変!  この連載では大手製薬会社で様々な医薬品開発、育薬などに従事してきた薬学博士の長谷昌知さんにわかりやすく、素朴な疑問を解決してもらいます。
※この記事は、2018年に投稿した内容を再編集してお届けするものとなります。

Q.病院でもらう薬と市販の薬は何が違うの?

(C)k_katelyn – stock.adobe.com

まず病院で医師から処方される薬のことを医療用医薬品と言います。こちらは、医師が病気を診断し、その治療を目的として処方されます。一般的にはドラッグストアで買える市販薬よりも有効成分の含有量が多く、副作用が強いと言われています。そのため、医師が処方した後に、薬剤師が患者さんに合っているかを確認し、副作用や飲み合わせなどの注意事項を説明することが義務づけられています。

では、市販薬はどういうものなのか? 市販薬は、患者さんが風邪や胃痛、胃もたれなどの症状に応じて、処方箋がなくとも自分で判断して購入できる医薬品です。ある程度使用経験が増えて副作用などの問題がないとわかってきた医療用医薬品が、市販薬として販売されるようになります。このような市販薬はスイッチOTC薬と呼ばれます。OTCとは「Over The Counter」の略で、薬局のカウンター越しに売られる薬という意味。医療医薬品から市販薬にスイッチしたということで、スイッチOTCと呼ばれています。解熱鎮痛薬としてよく知られている「ロキソニン」もスイッチOTCの一つです。

OTCなどの市販薬は、副作用の強さによって、第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品に分類されています。第一類医薬品は、最もリスクが大きいとされており、ドラッグストアで購入する場合も、薬剤師に相談した上での購入となります。第二類医薬品には一般的な風邪薬が多く、こちらは第一類医薬品よりも少し制限が緩くなり、副作用や飲み合わせの注意はあるものの、患者さんへの説明は「努力義務」となっていて、必ずしもしなければいけないというわけではありません。第三類医薬品は整腸剤やビタミン剤などで、こちらは患者さんへの説明は必要とされておらず、コンビニやインターネットなどでも購入ができます。

市販薬購入の際に注意したいのは、自分の症状に合った薬を入手するということです。たとえば、一口に「胃薬」と言っても、症状によって使い分ける必要があります。具体的に言いますと、「胸焼け」の場合は、胃酸の出すぎが原因ですので、胃酸の分泌を抑え、粘膜を回復させる「ガスター10」のような薬が必要なりますが、「消化不良」や「胃もたれ」の場合には、消化を促進し胃の働きを正常にする「キャベジン」のような薬が必要なります。

もちろん、これは風邪の症状の時も同じです。熱、ノドの痛み、咳、鼻水など、いろいろな症状が現れますが、自分の症状を把握し、薬剤師に相談するなど、症状に適した薬を購入しましょう。病院に行って診察してもらった上で薬を処方してもらうのが一番かもしれませんが、年末に近づくにつれて忙しくなり、病院に行く時間がないという方もいると思います。そんな方は有効に市販薬を使用してみてください。

最後に、市販薬は安全性が確かめられているとはいえ、使い方を間違えると取り返しのつかない事態になることもありますので、用法・用量をきちんと守ってください。また、薬はアルコールによって効果が増強されたりすることもあるので、そういった点にも十分注意が必要です。


長谷昌知(はせ・まさかず)
1970年8月13日、山口県出身。九州大学にて薬剤師免許を取得し、大腸菌を題材とした分子生物学的研究により博士号を取得。現在まで6社の国内外のバイオベンチャーや大手製薬企業にて種々の疾患に対する医薬品開発・育薬などに従事。2018年3月よりGセラノティックス社の代表取締役社長として新たな抗がん剤の開発に注力している。
Gセラノスティックス株式会社