力自慢、また筋肉を誇示する時にほぼ100%と言っていいくらいアピールする部位が上腕二頭筋でしょう。
肘を曲げ、グイっと力を入れて上腕の筋肉を隆起させるのは、もはや定番。上腕二頭筋という単語は知らなくても、力こぶと言えば大多数の人が「腕の筋肉」をイメージするはずです。
それだけメジャーで目立つ筋肉だけに、筋トレ初心者がまずアプローチする部位としてもトップ3に入ることでしょう。ここでは上腕二頭筋を中心に、肩から肘の間(上腕)の主要な筋肉を紹介しつつ、効果的なトレーニング法をいくつか紹介します。
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【上腕二頭筋】
長頭と短頭で構成され、肩関節と肘関節をまたいで肩甲骨から起始する二関節筋です。肘を曲げる動きはもちろんのこと、前腕の回外(右手だと時計回り、左手だと反時計回り)にも大きく作用します。肩関節の屈曲(腕を垂らした状態から、前方に腕を挙上)にも作用しますが、貢献度は高くありません。
上腕二頭筋長頭の起始部分が上腕骨の結節間溝と横上腕靭帯が形成するトンネルを通ることから、過度の使用により「上腕二頭筋長頭腱炎」を起こし痛みを引き起こすことが多々あります。アームカールの動きで痛めることもあるだけに、トレーニングの際には注意が必要です。
<上腕二頭筋・長頭>
・インクライン・ダンベルカール
傾けたベンチに胸を張った状態でもたれかかります。手のひらが上に向くようにダンベルを握り、上腕は固定したまま肘関節を屈曲。負荷が抜けないところまでダンベルを挙げるよう心掛けましょう。
<上腕二頭筋・長頭/短頭>
・ダンベルカール
肩を落として、やや猫背気味の状態で立ちます。上腕二頭筋の起始が肩甲骨のため、背中を丸めることで起始と停止が近づき、より収縮効果が上がります。また手を伸ばした状態で手のひらを内側に向け、肘関節を屈曲させると同時に親指が外側に向くように捻ると、より効果的に短頭に刺激を入れることができます。肩関節の屈曲動作を入れると長頭の収縮力が上がるので、鍛え分ける際には、捻りを加える(短頭)、肩を屈曲させる(長頭)で分けてみましょう。
【上腕筋】
上腕二頭筋の深層に位置する扁平な筋肉。肘関節に近い尺骨に停止し、その部分は前腕の回内・回外時にそれほど位置が変わらないため、肘を屈曲させるすべての動きに強く関わります。
中でも前腕を回内した状態では、上腕二頭筋よりも強く働きます。よって前腕中間位か回内した状態で肘を屈曲する筋トレを行なうと、より効果的に上腕筋に負荷をかけることができます。
<上腕筋>
・リバースカール
手の甲を前にした状態で直立し、前腕を捻らずに肘を屈曲させます。屈曲させる作用は上腕二頭筋と同じですが、手の甲を上に向けた状態で行なうことで上腕二頭筋の関与を減らし、上腕筋に効率よく刺激を入れることができます。
【上腕三頭筋】
上腕でもっとも大きな割合を占める筋肉と言えば——。多くの人は力こぶを形成する上腕二頭筋をイメージする人が多いかもしれません。
ところが答えは上腕二頭筋ではなく、上腕三頭筋が上腕の筋肉量の約2/3を占めています。上腕の筋肉の中でもっとも体積が大きいため、腕を太くしたい人は率先してアプローチすべき筋肉と言えるでしょう。
<上腕三頭筋・長頭>
・フレンチプレス
両手にダンベルを持ち、垂直に両腕を挙上。そこから肘関節を屈曲した状態からスタートします。上腕を垂直方向にキープしたまま、サッカーのスローインのような動作で肘を伸展させます。ダンベルは一つでも構いません。
<上腕三頭筋・外側頭>
・ナロウ・ベンチプレス
通常のベンチプレスよりも手の幅を狭めます。間隔を狭くすることで大胸筋の関与が減り、より効果的に上腕三頭筋の外側頭に刺激を入れることができます。肩甲骨を開いた状態で行なうと、さらに効果的になります。
<上腕三頭筋・内側頭>
・スカルクラッシャー
水平な場所に仰向けになり、手のひらが上になる形でバーを握ります。上腕は固定し、手のひらを上にしたまま肘関節を屈曲。名前にある通り、スカル(頭蓋骨)、すなわち額めがけて手の甲を振り下ろすようなイメージで行ないましょう。
監修:岡田隆(日本体育大学教授/博士)、八角卓克(株式会社LIFE BUILDINGフィットネス総合研究所上席研究員)
実技モデル:三嶋教夫、柿夏芽、水沢充裕
撮影協力:スタジオバズーカ