「ボディビルってかっこいい」と・横川尚隆④【人物クローズアップ「筋の旅人」】




日本選手権は別格です

ボディビル業界で“ポスト鈴木雅”の最右翼と言われている横川尚隆のインタビュー第4弾。今回は日本選手権での6位入賞と憧れの鈴木雅選手について。

 
――日本選手権では初出場ながら決勝に進出し、6位に食い込みました。ステージでは鈴木雅選手と並んでポーズをとるシーンもありました。

横川 憧れの鈴木さんと並んでいるなんて、信じられなかったです。まさかそんな日が、こんなにも早く訪れるなんて思わなかったです。ステージに出て、初めて緊張しました。

――それまでは?

横川 まったく緊張したことはなかったです。今回は初めてガチガチに緊張しました。でも、すごく楽しかったです。鈴木さんと並んだことは、一生の思い出になると思います。

――鈴木選手から距離を詰めてきて、並ぶことになりました。

横川 新人の僕なんかと並んでくれて……。僕がボディビルを始めるキッカケになった人ですからね。うれしくて、ステージで泣きそうになってしまいました。

――ボディビル業界では、鈴木雅選手の最右翼と目されています。

横川 僕もそのつもりでボディビルに転向しました。“鈴木雅2世”と言われることもあるんですが、2世で終わるつもりはありません。僕は鈴木さんを越えるために、ボディビルをやっているんです。そこにしかモチベーションはないかもしれません。憧れの人に勝ちたいという気持ちでやっています。だから、鈴木さんに勝ったら、ボディビルを辞めるかもしれません(苦笑)。

――実際に鈴木選手と並んでみて、実力差は感じましたか。

横川 まだまだかなりの差があるなと思いました。僕には筋量が足りません。今回はたまたま6位になりましたが、僕よりも筋量が多い選手はたくさんいました。ファイナリストになかでは、僕は筋量は少ないほうだと思いました。そんなことを感じたのも初めての経験でした。

――横川選手といえば、武器はバルク(筋量)というイメージがあります。

横川 バルクに関しては多少の自信はあったんですが、舞台が日本選手権になると、まだまだですね。あの舞台は別格すぎました。バックステージにいる段階で「僕はまだまだだな」って思いました。映像とか写真とかで見ていたイメージとは、まったく違いました。

――日本選手権の常連選手たちとの面識は?

横川 あったんですが、コンテストで闘うために仕上げてきた“本気の体”を間近で見たのは初めてだったので。驚きましたね。僕は6位になれたのは筋量ではなく、全体的なバランスとか体のアウトラインとかを評価してもらえたからだと思います。ベースとなる筋量を増やすことが来年に向けての課題だと思います。現状維持のままだと、順位は下がると思っています。

――ただ、初出場で6位というのは前例のないすばらしい成績です。今後、さらに大きな注目を集めていくと思います。

横川 自分の気持ちとしては、いまはひと段落というか、少し落ち着いた状態にあります。去年の東京選手権での敗北から抱えていたものがなくなったので、楽しく、ノビノビと取り組めています。

――年季が必要とされるボディビルで20代の選手が活躍するのは久々のことです。

横川 いまは若いたちの間ではフィジークやベストボディが人気を集めていますが、同年代の僕が出場することによって「ボディビルってかっこいいんだな」と思ってもらえればいいなって思っています。フィジークやベストボディなどと比べると、ボディビルって入りづらい競技だと思うんです。敷居が高いといいますか、「あんなに筋肉をつけられない」とか「僕には無理」とか「かっこよくない」とか思われがちなんですが、そういうイメージを少しでも払拭できればと思っています。

――では最後の質問です。来年の目標は?

横川 僕のなかにはすでに決まっているのですが、いまはまだ言えないです(苦笑)。以前はすぐに大きなことを言っていたんですが、こういった(発言を控える)ところも少し大人になれたような気がします(苦笑)。来年もみなさんに驚いていただけるような成績を残せるようにがんばっていきます。

横川尚隆(よこかわ・なおたか)
1994年7月生まれ。東京都出身。身長170cm、体重75kg(オン)、97kg(オフ)。2015年にオールジャパン・メンズフィジーク選手権172cm級で優勝した後、ボディビルに転向。16年の日本ジュニア選手権で優勝し、世界ジュニア2位入賞。17年の日本選手権で6位入賞。

聞き手/藤本かずまさ
撮影/やまなか順子‵(イメージ写真)、藤本かずまさ(コンテスト写真)