「推しを変えられて、衣装も破けました」。元アイドルの筋肉女子が、それでも筋トレを続けた理由【KURUMI(前編)】




昨年12月に開催された、ゴールドジムジャパンカップ2022。そこでの新設部門・ドリームモデル158 cm以下級の初代女王に輝いたのが、現在フィットネスモデルとして活躍するKURUMIさんだ。理想のボディを追い求めるKURUMIさんのトレーニングの原点は、じつはアイドル。筋肉とともに歩んできた、彼女の歩みに迫った。

何かで一番になって、認めてもらうしかなかった

――2022年はマッスルゲート北陸やゴールドジムジャパンカップのドリームモデルで優勝するなど活躍されました。振り返っていかがですか。

「ありがとうございます。とくにドリームモデルはあこがれの安井友梨さん考案の新部門でしたので、ぜひ出場したいと思っていました。コスチュームはドレス1種類、ポーズもフロントとバックの2種類と参加しやすく、とても素敵な経験になりました」

――かなり鍛えられていると思いますが、そもそもトレーニングの原点は?

「もともとはアイドルをしていて、トレーニングはその延長線上で取り入れたものでした。今はむしろ、トレーニングが人生の中心になっていますね」

――アイドルを目指された経緯も気になります。

「歌手の安室奈美恵さんにあこがれていたので、自分も華やかな舞台で活躍したいと思っていました。最初は地元・福岡の事務所に入って、メイドタレントのようなものをやらせてもらったのが始まりです。そこからは伊香保温泉に住み込みでフラダンサーをやったり、アイドルのオーディションを受けたりと挑戦を続けましたが、なかなか上手くいきませんでした。もうダメかなと思い始めた時、5年契約で東京の事務所に所属が決まりました」

――東京で、あこがれを形にしたわけですね。

「とはいえ、上手くいくことばかりではありませんでした。私は9人組アイドルグループのリーダーだったのですが、事務所の社長にワンマンライブをしたい、衣装をつくってほしいと言っても受け入れてもらえませんでした。そこで、どうやったら社長に話を聞いてもらえるかと考えた時に、何かで一番になれば認めてもらえるかなと思いました。それで始めたのがトレーニングだったんです」

――実績をつくって認めてもらおうと。

「はい。社長にはよく、『ひとつのことをがんばるのは当たり前』と言われていました。『複数のことをいっぺんにやって、人は初めて感動する』という教えだったと思います。だからアイドルをしながらコンテストで1位になって、必ず振り向かせようという気持ちでした。実際に2017年にSUMMER STYLE AWARDで1位を獲ってからは話も通るようになりましたし、メンバーも以前より私についてきてくれるようになったと感じました」

――努力が認められたのですね。とはいえ筋肉質になることで、アイドルの活動に支障はなかったですか。

「それはもうたくさんあります(笑)。推しを変えられましたし、せっかくの衣装もファスナーが上がらなくなってしまいました。鍛えていると、背中がどんどん大きくなっていくんですよね。1週間前にサイズを測ってもらった衣装なのに、左手を挙げた瞬間に破けてしまったこともありました」

――筋トレを辞めるという選択肢はありませんでしたか。

「なかったです。細身のメンバーに移るファンの方も多かったですけど、コンテストを見てくれた人がライブに来てくれたりしたこともありました。アイドルとしての自分のファンではないのに、その気持ちがうれしかったですね。新しい道ができた感じがして、もっと続けていきたいと思いました」

(後編へ続く)

取材・文・写真/森本雄大


KURUMI(くるみ)
2013年〜2018年には9人組アイドルユニットのリーダーを務め、現在はフィットネスモデルとして活動している。2017年夏からトレーニングを開始し、約半年後にはSUMMER STYLE AWARDでクラス優勝を達成。以降も多くの大会で実績を残し、2022年はマッスルゲート北陸⼤会で優勝、ゴールドジムジャパンカップではドリームモデル158cm以下級で初代女王に輝くなど活躍を見せた。