プロテインは、子どもに足りていない栄養を摂るためにも有用なサプリメントですが、市販のプロテインを子どもがそのまま摂った場合、逆効果になることはないのでしょうか。今回は、子どもがプロテインを摂取しても問題ないのかについて、桑原さんに解説してもらいました。
前の質問の回答といくつかかぶる点もありますが、結論からいえば大丈夫です。プロテインは何か特別なサプリメントではなく、あくまでもタンパク質という三大栄養素のひとつですから。
ただし、プロテインを摂取するにあたって、注意すべき点がいくつかあります。
まず、一度に大量のタンパク質が摂取できてしまうという点です。肉でも魚でも、一般の食材からタンパク質を摂る場合には、おなかがいっぱいになるという物理的な制約が入ります。ところが、プロテインの場合は20g程度のタンパク質を数十秒で摂れてしまいますから、容易に過剰摂取の状態が作れてしまうのです。子供の年齢にもよりますが、内臓も含めて体が成長過程にある場合には、とくに過剰にならないかへの注意は必要でしょう。個人差はありますが、高校生くらいになれば大人と同様とみなしてもいいのではないでしょうか。
別の注意点は、食事自体がおろそかになりがちという点です。
タンパク質が不足しがちな食事は、一般的には朝食です。そもそも、起きたばかりは食欲もあまりありませんし、眠たいとか時間がないといった負の条件もそろっています。さらに、タンパク質は腐るという性質がありますから、よほど鮮度の高いモノでない限りは調理を必要とします。つまり、手間暇がかかるのです。
結果として、朝食時のタンパク質は年代を問わず不足気味な傾向にあります。育ち盛りの子供にとっては朝に摂るタンパク質の重要性は非常に高くなりますので、このタイミングでプロテインを取り入れるのは効果的といえます。ところがその便利が故に、徐々にプロテインへの依存度が高まっていってしまうのが心配です。
プロテインを飲んでいるから大丈夫だろうといった感覚になってしまうと、一種のモラルハザードになってしまいます。あくまでも栄養補助であるという点をしっかりと意識した上で、有効活用してもらえたらと思います。
最後にもうひとつ。
大人と同様のプロテインでも構いませんが、他のプロテインとの差別化のために何か特別な成分を配合していないかのチェックはしておくといいでしょう。ビタミンやミネラル程度であれば問題ありませんが、たとえばクレアチンであるとかHMBとか、機能性の素材を差別化の目的で配合するケースもあります。成人であれば問題ありませんが、子供が摂る場合には不要な成分ですので、そういったプラスαが無い製品を選ぶようにしたほうがいいでしょう。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。