ランニングは特別な道具が必要ないため、気軽に始められる運動のひとつです。しかし、長く走り続けているうちに足を痛めてしまうこともあるかもしれません。そこで今回は、学生時代は箱根駅伝に出場した経験を持つ山田賢児トレーナー(Y personal training gym)へのインタビューを通して、ケガをしないためのランニングフォームや必要な道具について紹介します。
細かい動きは意識しないほうがいい
――目標設定に関するお話を聞いて、「これなら続けられそうだな」と感じました。ただ、前回も挫折しやすい理由のひとつとして挙げていたケガはやはり怖いところです。ケガをしないためにも、フォームで意識すべきポイントはありますか。
山田 ケガをしないためには、いきなり走り出すのではなく、一度姿勢を作ってから歩き出すといいです。まずは肩幅で立って両手をバンザイするように高く上げると同時に、つま先立ちになります。次にゆっくりとかかとを下ろしつつ、腕を体の横に下ろします。こうすることで背筋が伸び、ウォーキングとランニングに適した姿勢が作れます。これがケガをしにくいフォームの簡単な作り方です。
――腕の振り方や走る時の感覚など、細かいところは意識しなくてもいいのですか。
山田 むしろ意識しないほうがいいです。普段無意識でやっていることを、いきなり「意識して」と言われても難しいですよね。とくにランニングは止まって確認することができないので、動きの中で細かいことを意識するのは、よほど体の使い方に慣れていないと難しいと思います。
――いろいろなことを意識しすぎて、結局ぐちゃぐちゃになってしまったら意味がないということですね。
山田 そうです。まず意識するのは姿勢。姿勢を整えて歩き出して、背筋が伸びた姿勢で走り始めることが理想的なランニングフォーム作りの第一歩です。だから、まずは背筋が伸びた姿勢を毎回作れるように整えましょう。歩き出したら(走る時も)腕を後ろ側へ振ることを意識すると、ウエストの周囲の筋肉がよく動くようになります。
靴さえ整えれば、スーツで走ってもいい
――ランニングには装備も重要だと思うのですが、服装や靴はどんなものを選べばいいですか。
山田 装備で一番大事なのは靴です。靴だけはランニングに適したものを用意しましょう。自分に合った靴を選べば、足を痛めにくくなります。また、足が痛くないということはストレスも少ないわけですから、継続がしやすくなります。靴さえあれば、スーツで走ってもいいんですよ。
――スーツでもいいのですか!?
山田 スーツでも走れないことはないですから(笑)。例えば皆さんもスーツを着ていたとして、会社に遅刻しそうだったら走りますよね。その距離が長ければ、もはやそれはランニングです。服装はどんな格好でも走れるのですが、靴だけは自分に合ったものを用意しないと足を痛めてしまいます。
――なるほど。しかし、これからランニングを始める人にとっては、ランニングシューズを買うこともハードルが高いと感じる人もいると思います。
山田 ランニングシューズを持っていない人が、「今ある靴でちょっとだけやってみよう」と思ったら、適度なクッション性があるスニーカーであればいいのではないかと思います。ただし、ランニングを続けたければ走るのに適したシューズを買ったほうがいいです。ランニング用のシューズは圧倒的に走りやすいですし、普段の外出にも使えるという意味でも、これを機に買うのは悪くないと思います。
――ランニングシューズを買う場合は、やはり専門店に行ったほうがいいですか。
山田 そうですね。専門店の店員さんに聞いて、自分に合うものを選んでもらうのがいいです。自分で選ぶ場合の注意点は、アスリート向けのランニングシューズを選ばないということです。そういった靴は速く走ることに特化して設計されているので、逆にケガをしやすくなってしまいます。なので、まずは初心者向けやゆっくり走る人向けのシューズを売っているコーナーに行って、最低3足は試着して1足を選んでほしいなと思います。
――自分に合っていると考える基準はありますか。
山田 選ぶ時はちゃんと両足で履いて、その場で足踏みをした時に小指やつま先に少しでもあたっていたら、その後足が痛くなってしまうかもしれないのでやめたほうがいいです。サイズの目安は、かかとを合わせた時に、足の指と靴の間に人差し指を押しあてたくらいの隙間があるイメージです。
★次回はランニングをする際の注意点について
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山田賢児(やまだ・けんじ)
千葉県出身。学生時代は陸上選手として活躍し、東京農業大学在学時に箱根駅伝に2回出場。その後3箇所のジムで指導を経験し、2021年に東京都、飯田橋に「Y personal training gym」をオープンさせた。ランナー経験を生かした有酸素運動指導のみならず、2014年の東京都北区フィジークでも入賞を飾るなど、ボディメイクにも取り組む。有酸素運動、ボディメイク、栄養指導の3つの側面から健康にアプローチする。
(所有資格)管理栄養士、フードスペシャリスト、加圧トレーニングインストラクター、加圧トレーニングサイクルインストラクター、日本ストレッチング協会ストレッチングトレーナーパートナー、日本ボディートレーナー協会整体師。
取材・文/シュー・ハヤシ