※読まれる前にひとつだけご注意。「(笑)」が多く、うるさく感じる方もいらっしゃると思いますが、それくらい笑いが絶えない対談となりました。雰囲気を正確にお伝えするため何卒ご容赦ください。
髙田一也(以下、一也):今は週に何本くらいレッスンをされているんですか?
高田巖(以下、巌):トータルで25本くらいです。もちろんエアロビクス以外の仕事も含めてですけどね!
一也:では巖さんに憧れて……みたいな人もいるでしょ? 結構、そういった話を聞くんですよ。いろいろな人から「巖さんは凄い」って。女性からは「友達でいられることが嬉しいって」ことも聞いたりしています。人気があるのも人柄だと思うんです。自分を大きく見せようともしませんし。
巖:でも、エアロビクスのインストラクターって自分自身が商品で、自分をアピールしなきゃいけない部分もじゃないですか。
一也:巌さんにも「自分が自分が」っていうアピールの時期はあったんですか?
巖:それはなかったかな……、多分(笑)。
一也:巖さんは自分というものに確固たる自信があるのかもしれないですね。僕なんかは自分に自信がないから、つい言っちゃうんですよ。こんなこともやりました、あんなこともやってきましたって。ちょっと「自分すごいだろ?」ってことを言ってしまって、後から恥ずかしいことをしちゃったな~、余計なこと言っちゃったな~、って思うこともあるんです。巖さんみたいになれたら格好いいなって思います。
巖:でも、その自信が自分のレッスンやトレーニングに結びつくとは限らないですよね。自分なんかボディビルの世界ではまだ2、3年の新人……そんな浅いキャリアで、その世界に顔を出していいものか、なんて考えたり……。
一也:いつもこんな感じで接しているくせに、凄い人からも面白がって認めてもらえたり、嫌みなく付き合っていられたり……得な人ですよね。
巖:誰に認めてもらっていいのか、認められたいか、わかっていないかも(笑)。
一也:この独特な感じが巖さんの魅力なんでしょうね。それにエアロビクスで20本以上のレッスンを持ちつつ、僕のジムにもトレーニングにこられている。凄くタフですよ。僕は今の仕事をするときに「責任感をしっかり持とう」と強く考えたことがあったんです。“自分の代わり”がいる仕事が嫌だったんです。例えば自分が仕事を何日か休んでも成り立っちゃうような仕事。だから自分の代わりは絶対にいないという仕事がよかったんです。僕はこの仕事を始めるときに骨折しても絶対に休まないって決めたんですよ。僕はそこまで熱く考えてしまうんですけど、巌さんは熱く考えなくても、そういったことを自然にこなしてしまう人。巖さんが「大変だ」と思うことってあるのかな?
巖:大変なことっていえば、今アクロバット教室に通っていて、それが大変!
一也:自分でやろうと思って通うようになったんですか?
巖:去年、アクロバットの練習したら軽いギックリ腰になったんですよ。これからだってときに自分だけ畳の上で見学したっていう虚しさ(笑)! 絶対、来年にはできるようになってやる! という思いとの葛藤(笑)。
一也:目標を持って東京にきて、目標を持ってアクロバットの練習をする(笑)。興味を持ったものが、新たな目標になる?
巖:それは目標になるよね。だから今、何かをやりたいってわけでも、10年先に向かって何かをしましょうってことでもなくて、仕事や生活をしてくなかで出会いがあって、何かのキッカケがあって興味を持ったら、それが自分の目標になる。人生には無数の枝分かれの道があって、たまたま今の自分はココにいる、って感じなんですよ。だから60歳になったら何かをしようというのもないんです。それに生きている間に目標なんて変わりますもん。
一也:日本には独特の安定志向というか、好きな道に進んでも安定したいというのがあると思うんです。でも結局、安定なんてないじゃないですか、どんな会社に勤めたって。もしかすると、ということもあるかもしれないですけど、考えればキリがないけど、この社会のなかでみんなが安定を求めて生きているんだとは思うんです。だけど巖さんはそういう価値観とは違う世界を生きている。
巖:本当なら人生に明確な目標とかはあった方がいいとは思うんだよね。でも人生の中で様々な分岐点が必ず出てくるでしょ。人生、何があるかわかんないからね。でもそのときになれば、また道ができているはずだから、どっちに行くかはそのときに決めればいい。そんな道を歩いてきて、今ココにいるって感じ。
一也:僕はフリーランス、一人で仕事を生み出していくことのもろさみたいなものをすごく感じてたんです。フリーの場合、もし事故にでも遭ったりすれば、それで失うものが多過ぎる。下手をすれば仕事を手放す懸念もあります。でも、そこで終わっちゃうのが嫌だった。だから自分の分身じゃないけど一緒に動いてくれる人とか、場所があれば失わなくて済むかもしれない。そんな気持ちから、TREGISをオープンしたけども……。
巖:“髙田一也”は一つのブランドになっているからね(笑)。ま、高田巖の次だけど(大笑)。でも、僕も経営したほうがいいのかなって思うときはある。でも、やっぱり現役でいたいとも思う。
一也:自分は先のことを考えてしまうけど、巖さんはそういうのがない。だから一緒に仕事をしたいとも思うんですよ。違うタイプなので、いい影響をもらえるのもわかるし。トレーニングやボディビルの大変さを覆すポジティブさは貴重ですよ。だから悩みを抱えている人は巖さんに相談したらいいしれないですね。こういう考え方もあるのかって気づかされるはずですよ。
巖:でもインストラクターっていつも健康で人前に立っている仕事じゃないですか。僕の考え方って、その影響も強いと思うんです。そして改めて思うんですが、インストラクターの仕事をしていても、トレーニングをすれば40代半ばでも体が変わるんだと気づかされました。
一也:この対談で筋トレのよさも伝われば僕も嬉しいです。それに普通、減量を続けていくとフラフラの状態になってもおかしくないのに、巖さんはまったくそういうことがない。エアロビクスで鍛えあげられていて、体力がすごくあるからと思うんです。そこにトレーニングでの体づくりと、エアロビクスの動きが融合されたら、我々にとってもいいお手本になるんじゃないかと思っているんです。
動きを重視する職業の人も、ウエイトトレーニングがすごくいいものであり、筋肉が邪魔になるというものではないことを証明してくれているし、そしてボディビルでも認められる。その筋量を持って動けて健康で。巖さんは、もしかしたら「究極」の存在になるかもしれないですね!
(この項終わり)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP
民間フィットネスクラブを中心に、インストラクターとして活動。東京都内を拠点としエアロビクス、アクアビクス、ヨガ、調整系、ダンス系、リラクゼーションのレッスン、そしてジムパーソナル、スイミングパーソナル等、様々なカテゴリーを担当。2016年JAFスポーツエアロビック仙台オープン優勝、AFスポーツエアロビック福岡オープン準優勝。
インタビュアー
立華徳之真(たちばな・のりのしん)
パフォーマー兼パフォーマー専門の美容家・治療家・スポーツ指導者。陸上競技・体操・バスケットボール・フィットネス・トレーニング・ジュニアスポーツ・体育施設運営管理・サプリメント・スポーツボランティアなどの専門資格を所持。また柔道整復師・美容師・登録販売者・診療情報管理士として美容・健康・医学領域および出版・映像・イベント・教育・ITなどの実務をこなす。ほか殺陣やアクション、神経系コーディネーションや能力開発などの分野で活動しているハイブリッド。
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