ボディビル(女子の場合は女子フィジーク)コンテストの決勝には、音楽に合わせてポージングを披露する「フリーポーズ」審査というものがある。ボディビルは好き勝手にポーズを取っていいわけではなく、選手はダブルバイセップスやサイドチェストなどといった、ルールで定められた規定ポーズを順番にとっていく。全員が同じポーズを同時にとっていき、その上で比較・審査されていくのであるが、そんなボディビル競技においてもっとも自由度が高く、自己アピールができるラウンドが、このフリーポーズである。
時間は男子ボディビルは1分、女子フィジークは30秒。フリーポーズの組み立て方は選手によってさまざまであるが、さきに曲を選び、その曲に合わせて自分の得意なポーズを組み込みながら構築していくというパターンが多いようだ。
さて、このフリーポーズ。使用される曲にも傾向があり、ハードロック系の音楽は根強い人気を誇っている。ボン・ジョヴィ、とくに「It’s My Life」はボディビルの会場に行けば必ずと言っていいほど耳にする定番ソングだ。
プロレスの入場曲を使用する選手も少なくはなく、ここ数年のあいだで増えてきたのは新日本プロレスのオカダ・カズチカ、棚橋弘至のテーマ曲。本年度の大会では、マニアックなところでは、蝶野正洋の初期のテーマ曲「FANTASTIC CITY」、また大日本プロレスの関本大介のテーマをチョイスしている選手もいた。
ちなみに今年、男子ボディビルの会場でよく聞かれた曲は、なぜかフレディ・マーキュリーの「I was born to love you」。女子フィジークでは、トレンドを反映するかのように、オースティン・マホーンの「Dirty Work」を使用する選手が多かったように思える。観戦しながら「35億」と心のなかでつぶやいたのは筆者だけではないだろう。
フリーポーズはその選手の個性が現れるので、コンテストの華とも呼べる、重要な見どころの一つ。どんなに練習を積んでも、選手は予選を通過し、決勝に進まないとフリーポーズを演じることはできないのだ。いわば、これは決勝進出者のみに与えられた特権とも言える。