運転中でもエクササイズ!? 自動車用シートにもフィットネスの波




クルマ社会の問題点にシートから取り組む

自動車は便利なものですが、健康・フィットネスの視点から見ると色々と問題もあります。その1つが自動車での移動が多くなると、人々の歩く距離が短くなること。東京モーターショーでは、そんな問題に取り組む自動車シートメーカーの提案も目にしました。

それがTSテックというシートメーカーが出展していた「エクサライドシート」というコンセプト製品です。一見、何の変哲もない自動車用のシートですが、運転中にエクササイズができる機能が搭載されているとか。

見た目は普通のシートです

シートの座面に骨盤を効果的に動かす機構が内蔵されており、体幹部のインナーマッスル(主に腹横筋)を刺激して運動を促す仕組みのようです。

骨盤を支えるこの部分が動いて、体幹のインナーマッスルを刺激するとのこと

動きとしてはこんな感じです。

ただ、ドライブ中に骨盤を動かすことは運転に影響がないのでしょうか? TSテックのブースでは、実際にシミュレーターを使って体験できるデモを実施していたので、実際にハンドルを握らせてもらいました。

こんな感じのシミュレーターで体感できます

シートに腰掛けると、身長や体重を検知して、最適なドライビングポジションに調整してくれる機能も搭載されていました。実際にペダルやハンドルを操作してみると、これがピッタリ! この機能だけでもかなり便利です。

ポジション調整の操作は自動ですが、その様子はタブレットに表示されます

実際にシミュレーターで走り始めると、シートはいつも動くわけではないようです。高速道路など直線での安定走行時には「スイングモード」という運転に支障のない小さな動作で動きます。アイドリングストップするような長い停車時には「ツイストモード」という大きな動作でより運動量を増やしてくれる設計。

カーブなど操作が必要な部分ではシートは動きません

逆に信号待ちなど、停車時はシートの動きが大きくなります

運動量なども、このようにシミュレーターの画面に表示されます

実際に体験してみると、骨盤の動きは確かに運転に支障のないレベル。逆に停車中の動きはそれなりに大きく、インナーマッスルは刺激されそうな感覚でした。メーカーのテストでは、体重65kgの男性が30分間運転した場合、約100kcalの消費を確認できたとのこと。歩くのに比べると少ないかもしれませんが、確かにある程度の運動にはなるようです。

クルマがどのように動いているかは、車体側のセンサーから情報をもらってシートに転送されているとのこと。最近は高速道路で半自動運転のような機能を利用できるクルマも増えていますが、自動運転機能がONになっている場合だけシートを動かすということもできそうですね。クルマ社会の抱える問題点に、シート作りという立場から取り組む姿勢に好感が持てました。こういう研究が進んで、実用化されることを期待したいです。

取材・文/増谷茂樹