「マットの上だけで完結しない力を育む」神秘なるヨガの世界! ACO先生が解説(3)

日本におけるヴィンヤサヨガの草分け的存在であるACO先生がヨガの世界を紐解くインタビューシリーズ。3回目となる今回は、ヨガとの向き合い方について解説していただきました。

 

フォークが投げられなくても野球ができるように

――初心者はまず、どのようにしてヨガを始めて、ヨガと向き合っていくべきなのでしょう。

痩せたいとか、あのポーズがしたいとか、落ち着きたいとか、もてたいとか。始める動機は何でもいいと思います。どのようなキッカケで入ってきてもらってもびくともしないくらい、ヨガの間口は広いので。そして、始めてみて続けていくうちに、「呼吸法が好き」とか「最後の屍のポーズが好き」とか、自分にとって続けていくための動機が見つかるのではないでしょうか。

――体が硬いとかポーズが難しそうとか、ヨガを始めることにハードルの高さを感じてしまっている人もいるかと思います。体が硬くてヨガのポーズができないからといって、ヨガができないわけではない?

フォークボールを投げることができなくても、野球はできますよね。ポーズは、あくまで「ポーズ」にしかすぎません。また、難しいポーズが一瞬できかたらといって、健康や幸せになれるわけではありません。

――クラス選びも重要なように思えます。

体を動かすこと、呼吸、瞑想。この三本がちょうどいいバランスで成り立っているプログラムで、自分の今のレベルとちょうど相性が合うようなクラスを受けた後は、心と体が自分のスペースを取り戻したような感覚になります。それまで培ってきた自分の人生、自信や優しさも取り戻せます。すると自分に余裕が出てくるので、外に対しても優しくなれます。ただ、これはヨガがもたらすすごくいい効果でもあるし、また一つの勘違いでもあるのです。

――勘違い、ですか。

マットの上だけでなく、思い通りにならないことの多いマットの外の世界でも、中庸性を養っていけるようになるといいですね。「中庸」は、相反する二つのものが存在しないと成り立たない。二つのものが存在しないと成り立たない。相反する二つのものの間を行ったり来たりしながら軸を見つけていく力を、ヨガは育んでくれます。

――日常生活のなかで生じたさまざまなズレを修正できる、ということですか。

吸うことが得意な人は吐くことが上手になります。吐くことが上手な人は吸うことがうまくなります。これは私が主宰しているテンセグリティー・ヨガでも大事にしていることなのですが、相手と息を合わせられるようになるのです。
たとえばお仕事ではクレーマーの人への対応だったり、営業であったり。あるいは親子関係、上司と部下。まず呼吸を合わせて相手のリズム、相手のトーンに合わせることで、相手のことが好ましく思えてくるのです。すると相手も、こちらのことを好ましく思ってくれ、そこに一体感が生まれるようになる。
そしてそこで寄り添うからこそ、相手のスキを見つけやすくなる。柔術と一緒ですね。プッシュ、プッシュで押し合うんじゃなく、まずは相手と均衡なバランスを取って、そこから呼吸をずらしてこちらの側に引き込んでいく。ヨガではありとあらゆるパーソナルスペース、社会の中で役立つことを学べます。

――ヨガには「自分自身と向き合うもの」というイメージがあります。しかし、実際は外の世界が存在して初めて成立するものなのですね。

現在のヨガの先生の80%くらいの方は内観、内観なんです。でも、私は「内観だけでは幸せになれない」と考えています。マットのなかで、クラスのなかでは「ああ、私はうまくなった」と思えて、いざ自宅に帰るとやっぱり親とか夫婦関係で言うべきことが何も言えない、とか。それは、マットの上だけで完結してしまい、リアルな外の世界とは何の関係性も築けていないからです。大切なのは、「自分の外」と「自分」との相関関係だと思います。

取材・文/安 多香子 写真提供/テンセグリティー・ヨガ事務局

ACO(吉川あこ)
1961年、愛知県名古屋市出身。ACOYOGA代表。愛知大学法経学部経済学科卒業。米国オレゴン州ポートラド州立大学心理学部卒業。ヨガ道場にてハタヨガを学んだ後、内外のスタジオ、ワークショップ、TTにて各種ボディーワークを習得。日本におけるヴィンヤサヨガの草分け的存在として多くのインストラクターに影響を与えている。20年以上にわたる指導経験の後、行き着いた現在のスタイルを「テンセグリティー・ヨガ」と名付け、ボディーワークで学んだ知識を随所に入れて、自己安定能力を引き出しながら全身の気のバランスを調えるアプローチを開発中。2013年からテンセグリティー・ヨガの指導者養成講座を全国主要都市で開催。近年は陰ヨガの普及にも力を注ぐ。
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