【技アリ☆トレーナーズ】ランニングトレーナー奥山智也②

ひと味違った「技」という強みを持っているトレーナーを紹介していくこの企画。コーチ+治療家+アスレチックトレーナー、と三要素を併せ持つランニングトレーナー奥山智也さんを引き続き紹介する。
前回はこちら

さて、せっかくランニングの楽しさに目覚めても、ケガがそれを邪魔して走れなくなったらもったいない。奥山さんがさまざまなランナーに接していて、ケガにつながりやすい傾向として顕著なのが、オーバープロネーションだという。

オーバープロネーションは日本語で「過回内」と訳されることが多い。
プロネーション(回内)とは着地したときの衝撃を分散するために、足底を内方向に回転する、人体の自然な動きのこと。しかしプロネーションが過剰になるのは問題だ。

「内側に傾きすぎて、着地の時に足のアーチ(土踏まず)が潰れてしまっている状態は、とても多くの人に見られます」

オーバープロネーションの典型的なゲガの例として奥山さんが挙げたのは、シンスプリント、足底の筋膜炎、鵞足(がそく)炎だ。

シンスプリント(過労性骨膜炎)では脛(すね)の内側に痛みが出るのが代表的で、繰り返しのランニングやジャンプを過度に行った場合に発症しやすい。

「扁平足の人は衝撃をうまく逃すことができず脚に伝えてしまう。またオーバープロネーションで脛の筋肉が過剰に引っ張られます」

足底筋膜炎は足裏のかかと部分、土踏まず、母指球のあたりに痛みを感じる症状。アーチをささえる筋膜に衝撃がかかりすぎて、支え切れなくなって痛みが出る。

鵞足炎(がそくえん)は、ヒザが内側に入る動きが習慣化していて、膝下の少し内側にある鵞足部が痛んでしまう症状だ。

オーバープロネーションの場合、ランニングシューズの減り方としては、かかとの外側と親指の付け根付近がすり減りやすい。

「かかとから着地して、すぐ拇指球(親指の付け根)で踏んでしまっている人が少なくありませんが、かかと→小指側(小指球)→拇指球と自然に3点の重心を移動していけば体に負担がかかりにくくなります」

ケガをしない、あるいは再発しないような走り方は、自然にパフォーマンスアップにつながる。

どこに気をつけたり、鍛えたりすれば、それが可能になるのか。奥山さんは、それぞれの個性に合わせて、柔軟な発想で総合的に判断してメニューを組んでいくという。

それは〈一般的なコーチ+治療家+アスレチックトレーナー〉と視点を切り替えられるから可能になるのかもしれない。

柔軟な発想ということでいえば、ひとつの指導例が印象に残っているという。

あるテレビ番組で、ランニング超初心者の女性が2ヶ月後のフルマラソンに挑戦するという企画があり、そのコーチ・伴走者として奥山さんが依頼を受けた。女性は、自己流で走っていたがケガをして足を痛めてしまい、最長で約10kmの距離しか走れないまま本番を迎えてしまった。

奥山さんは作戦を練った。非常に多くの参加者がいる大会で、スタート時から正直にペースを守って走ろうとすれば、人をかき分けてポジションを覚悟しなければならず、大きなエネルギーを費やしてしまう。それでは、後半で足が止まって動けなくなることが予想された。

そこで奥山さんは、最初は女性を歩かせて雰囲気に慣れさせることにした。冷静さを保ってから走り始めることで、見事に完走することができた。

奥山さんにとってもかなり難しいミッションだったが、状況に応じて最善をつくしたことで結果につながり、ランニングトレーナーとしての自信がついたという。

また、クライアントからわざわざ手紙をもらい、「奥山さんに指導を受けて本当によかった」と御礼されることもあり、そんなときはトレーナー冥利に尽きるという。

専門家としての指導力はもちろん大切だが、一緒に目標に向かって進むという姿勢が伝わっているのだろう。

奥山さんの出張パーソナルトレーニングは1時間1万円(交通費込み)が基本。
またORC(おっくん ラン コーチ塾)を主宰。走るだけでなく、身体の使い方や動き作りを中心にランニングの基礎を構築するランニング塾。
場所は東京都立光が丘公園(練馬区)月1~2回 グループレッスンで参加費は2000円
問合せはメール
または【RUNART足の治療院-駒沢公園-】 TEL03-6450-9365

奥山 智也(おくやま・ともや)
厚生労働省認定 柔道整復師。全米公認 ストレングス&コンディショ二ングスペシャリスト。Jaft認定パーソナルランニングコーチ。SMART Tools認定IASTMセラピスト。パーソナルトレーニングを中心に行い、「RUNART足の治療院-駒沢公園-」では、 痛みの「治療」とパフォーマンスアップのための「コンディショニング」の両方を担当できるトレーナー兼治療家としてランナーをサポートする。日本テレビ番組企画で<東京マラソン伴走トレーナー>を勤めた経験もある。

取材/押切伸一