人生を変えてくれた恩人・髙山善廣選手【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第27回】

VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか?

気づけば9月です。先週末は夏の終わりの恒例『24時間テレビ』が放送されていました。今年のテーマは「人生を変えてくれた人」。あいにく放送を見ていないのでどんな内容だったのかは把握していないのですが、私にも人生を変えてくれた恩人が何人かいます。

そのうちの一人が“プロレス界の帝王”こと髙山善廣選手です。「週刊プロレス」に在籍した時代、“帝王番”として長く取材を担当してきましたが、初めての取材は2000年。私は2年目の若手記者で、髙山選手は全日本プロレスに所属していて、まだ“帝王”と呼ばれる以前のことでした。

このときの取材テーマは「21世紀のプロレス、21世紀のプロレスラーに求められるもの」というもの。ここで髙山選手は「一つのことを貫くのも美学かもしれないけど、これからは何でもできるレスラーでなければいけない」と言いました。「何でもできるレスラーなら自分のやりたいことをできるけど、そうじゃないレスラーはクビにされないために会社の言いなり、奴隷になってでもしがみつくしかない」と続けました。この言葉は、私の胸にグサリと突き刺さりました。

鳴かず飛ばずの若手記者の一人だった私は、自分に力がないことを棚に上げて、思うような仕事を任されないことに不満をためる日々を過ごしていました。当時は外に出て一人で生きていく力がないため、会社に言われたことを奴隷のようにやるしか生きる道はなかったのです。一方、髙山選手はこのインタビューの後、NOAHを経てフリーとなり、さまざまなリングで自分の力を発揮し、“プロレス界の帝王”と呼ばれる存在になりました。まさに有言実行でした。

髙山選手の言葉と活躍に刺激を受けた私は、「会社の奴隷にならないで生きる」ため、日々考え、人がやりたがらないこと、やらないことにも取り組み、スキルアップに励みました。同時に“帝王番”としてその活躍を取材することでチャンスが生まれ、鳴かず飛ばずの若手からの脱却に成功。人のせいにしたり、人に任せきりになったりするのではなく、自分自身で道を切り拓く選択ができるようになりました。

時は流れ、週刊プロレスの編集長を辞任し、ベースボール・マガジン社を退社する際、髙山選手にこの話をすると「オレのせいで辞めるみたいじゃん」と苦笑いしていましたが、私は髙山選手のおかげで奴隷にならずに生きられるようになったのです。

髙山選手は私にとって人生を変えてくれた恩人です。

その恩人は現在、試合中の負傷(頸髄完全損傷)により、首から下を動かすことができなくなってしまいました。リング復帰は極めて困難と言われていますが、本人は闘うことを諦めず懸命なリハビリを続けています。そんな帝王にエールを送るべく、8月31日には『TAKAYAMANIA EMPIRE』と題した支援イベントが開催されました。

このイベントには新日本、全日本、NOAH、DDT、フリー選手など、髙山選手のライバルたちが団体の垣根を越えて集結。オールスター戦のようなメンバーが「髙山さんの力になりたい」という思いで、激しい試合を繰り広げました。会場の後楽園ホールは1500人超満員。髙山選手のファイトに勇気やエネルギーをもらってきたファンの人たちは、私と同じように恩返しをしたいという思いで集ったのではないでしょうか。

大会出場選手たちの髙山選手への寄せ書きメッセージ

そして全試合終了後、会場には髙山選手からのビデオメッセージが流れました。

「足で蹴る感覚がちょっと出てきたので、リング上で悪さばかりしている鈴木みのるの顔面をビッグブーツで蹴るのを楽しみにしています。それまで鈴木みのる、待ってろよ!」

“ノーフィアー”として生きてきた髙山選手らしく、ライバルであり盟友である鈴木みのる選手に宣戦布告し、リング復帰を諦めないという意思表示をしました。鈴木選手も「テメーのトドメはオレが刺すからそんなところでくたばるな。リングに上がってこい」と、きつい言葉でエールを送りました。

今の髙山選手はリングに上がることはできません。しかし、今も彼は必死に闘っています。そしてその姿勢で人々に力を与える、勇気を与えるというのは、リングで闘っているときと何も変わっていません。この日会場にいた誰もが、あのメッセージから大きなエネルギーをもらったはずです。

完全復活が極めて難しいことはわかっています。だけど無理と決めるのは今じゃなくてもいい。髙山選手は2004年に脳梗塞で倒れ、一時は再起不能と言われました。しかし、懸命なリハビリで2年後に復帰。復帰から3年後には全日本プロレスの至宝・三冠ヘビー級王者に輝くという見事な復活劇を見せてくれました。そんな奇跡を起こした人間が再び奇跡を起こすために闘っているのだから、我々が勝手にタオルを投げてはいけません。私たちがやるべきことは応援し続けること、復活を願い続けることです。

髙山選手に受けた恩はまだまだ全然返せていません。時間をかけて少しずつ返していくので、焦らず自分なりのペースでリハビリに励んでもらいたいと思います。

髙山選手への支援募金はこちらから↓↓

【銀行振込】

三菱東京UFJ銀行 代々木上原支店(店番号)137  口座番号:普通預金 0240842 口座名義:TAKAYAMANIA タカヤマニア

みずほ銀行 渋谷中央支店 店番162 口座番号:普通預金1842545 口座名義:TAKAYAMANIA タカヤマニア

三井住友銀行 渋谷支店 店番654 口座番号:普通預金9487127 口座名義:TAKAYAMANIA タカヤマニア 代表 高山奈津子

※通帳はすべて髙山選手の奥様がお持ちになられています。

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。