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海軍体操を知っていますか? ③




自らの命を助けるための体操

今回は海軍体操の全身運動をいくつか紹介する。「海軍体操教範」から図版を引用しよう。読者の中には、「こんな凄いこと実際にはやっていないだろう」と首を傾げる人がいるかもしれない。だから参考資料として海軍予科練生徒の体操風景の写真を一部掲載しておく。当時の海軍の若者たちがいかに強靭な体力と柔軟な肉体を養っていたのかが分かるはずだ。

たとえば、跳躍体操などは画像1のように跳箱を跨いで胸を張って高く跳び、また画像2、3のように跳躍力で12人~13人の人柱の上を飛行機のように飛んで着地と同時に前転するなど、非常にアクロバティックで美しい。

画像1
画像2
画像3

しかし、彼らは単に美しさを競っているのではない。

跳躍の訓練は軍艦が敵にやられて、いまにも沈没せんとする時に、「全員退去」の命令と同時に、艦からなるべく遠くの海面に飛び込んで逃げるためだ。でないと、艦の沈没と同時に起きる大きな渦に巻き込まれてしまうからである。あらためて海軍体操とは、健康維持、体力増進とともに自分の身を助けるための体操と思っていただきたい。

ではさっそく全身運動を順番に見ていこう。

◆行進運動
画像4は行進運動の中の「急歩」というもので、現代の競歩に似ている。膝を伸ばし、踵より地面に着く。体重を前に移して上体を真っすぐに保って、画像のように膝はほぼ直角に曲げて歩く。このほかに体を伏して前進する「匍匐」もある。

画像4

◆跳躍運動
画像5は体を十分に伸ばすためのもので、初心者でも簡単にできそうだ。助走して片足で踏み切って跳び箱に跳び乗るとともに両足の膝を軽く曲げ、伸ばした反動で、前方に遠く、そして高く跳ぶ。この時、両腕を振り上げて、両ひざを伸ばし、つま先を下げる。

画像5

画像6は跳び箱の斜めから助走。外側の足で踏み切って、内側の足を強く振り上げ、両手を箱に置いて足をそろえて飛び越える。

画像6

画像7は跳び箱をタテに置いて、両足で強く踏み切って、跳び箱中央前で両手を着き、後ろに強く押して跳び越える。この時、背筋を伸ばすこと。

画像7

◆転回運動
画像8は助走して強く踏み切って高く跳びあがると同時に、両肘を強く後ろに振り、体は前に曲げて空中で転回して着地
する。いわゆる前方宙返り。

画像8

画像9は強く両足で踏み切って、腕を強く上げて、大きく後ろに転回しているところ。このあと手を着いて後転する。今でいうところのバク転。

画像9

画像10は膝を曲げて強く踏み切り、空中で後転して着地する。

画像10

画像11はまさに飛行機乗りを養成するためにあるような運動だ。転回機に乗って四肢を交互に屈伸させながら重心を移しながら側方に移動するもので、ドイツで生まれた「ラート」と呼ばれるものが原型だが、横転しやすいために、実際は画像12のような球体の転回機になった。この球体の中で重心移動させながら自在に転がっていく。

画像12

次回は全身運動の「懸垂」と「統斉」を紹介する。

文/安田拡了

参考資料…「海軍体操教範」(海軍教育局検閲、兵用図書株式会社発行、昭和17年12月発行)