「そのお腹でよく人前に出られますね」【筋トレおやじ鼎談④】




本誌でもライターとして活躍する木村さんと、トレーナーの清水さん、それに本誌編集長の藤本という同世代の3人が、自分たちの経験から“おやじ”世代のトレーニングへの取り組み方や、トレーニングを巡る今昔を振り返る鼎談。今回はコンテストに出場する理由と、なぜトレーニングを続けるのか? について。
聞き手/VITUP!編集部

藤本 元々は興味がなかったというお話しですが、そんな清水さんがコンテストに出場したきっかけはどんなことだったんですか?

清水 その頃通っていたジムで、周りの人たちに「出てみればいいじゃん」と言われて、気のない返事で「そうですね〜」なんて応じていたらその話が広まって外堀が埋まってた感じですね。今さら「出ません」とは言えないような。出ることになったからには、手を抜かずにがんばりましたが。

木村 それで優勝してしまったのだからスゴいですよね。その路線でもっと上に行きたいとは思われなかったのですか?

清水 それは全くなかったですね。昔から「海が俺のステージだ」と公言していたくらいなので、競技の世界で上に行くより、普通の人たちに「かっこいいですね」と言われるほうがうれしい。もちろん、ボディビルダーの人たちの体のスゴさはわかりますし、尊敬もしているのですが、あそこまでの体の人たちがビーチを歩いていたら、普通の人たちはきっと驚いてしまいますよね? 一般の人たちが「ああなりたい」と思える体、男性から見ても女性から見てもいい体と思われることが理想です。

藤本 確かにコンテストというか競技になってしまうと、世間の価値観とはかけ離れたものになって行きがちですね。

清水 競技である以上、誰かに勝たないといけないわけですから、より大きく、より絞ってとなっていくのは仕方ないことだと思います。ただ、自分の場合はやはり女性にモテたいという思いもあって始めてますので(笑)、キツイ思いをして女性にびっくりされるような体になったら悲しいかなと。もちろん、簡単になれるものではないですけど。

木村 なるほど。確かにトレーニングをしている人たちは必ずどこかでモテたいという気持ちがありますものね。藤本さんはコンテストに出続けていますが、そのきっかけは何だったのですか?

藤本 私も清水さんと似たような感じでしたね。ジムの仲間とある大会に「みんなで出ようぜ」という話になって、がんばって減量して当日会場に行ったら出場するのは自分だけだったという(笑)。

清水 でも、その後も大会に出続けていますよね? その理由は?

藤本 初めてのコンテストだったので、減量のやり方もわからなくてガリガリになってしまったんですよ。そんなこともあって「このままでは終われない」と次の年も出場しました。出ないことは簡単なので、出られるうちは出ておこうという思いもあって、所属するジムや大会は変わっても今のところ毎年出場しています。

木村 何となくですが、気持ちはわかりますね。私も今でも格闘技やトレーニングを続けているのは、若い時に燃え尽きられていないからだと思います。それまで、ずっと柔道やラグビーをやって、そこそこの成績も収めてきたのに大学ではラグビーをやらなかったんですよ。そこで燃え尽きられていないので、今でも体を動かし続けているのかもしれないですね。

藤本 でも、若い時に燃え尽きて体を動かさなくなってしまうより健康にはいいと思います。

清水 私もこの歳でトレーニングを続けていると「よくそこまでストイックになれるよね」と言われることがあります。でも、そう言ってくる同年代の男性というのはだいたいお腹もかなり出ていて。私からすると、そのお腹で人前に出ることのほうが、よっぽどストイックだと思うんです。メンタルの強さが要求されるというか。実際に言うことはないですけど「そのお腹でよく人前に出られますね」とは思います。

木村 それは強烈ですね(笑)。でも、確かに我々の世代になるとお腹も出てきますし、足腰などの筋肉は弱ってくる。そういう世代こそ、実はトレーニングをするべきなのは確かだと思います。

(つづく)

撮影/Aki Nagao
木村卓二(きむら たくじ)
本業はTVディレクター。コーチ経験も有するラグビーを中心に、格闘技やサッカーなど、各種競技の中継に携わる。また、複数の言語に通じ、ラグビー日本代表スクラムコーチの通訳(フランス語)、FIFA W杯ブロードキャストリエゾンオフィサーなども歴任。ラグビー日本代表や世界各国のS&C(Strength & Conditioning)コーチたちに感銘を受け、自らも究極のトレーニングを求める研究を開始。NESTA(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)認定パーソナルフィットネストレーナーの資格を所持する。(写真左端)

清水康志(しみず やすし)
日本ボディビル・フィットネス連盟2級指導員。2012年に出場したボディコンテストをきっかけに、トレーナーとして活動開始。30歳を過ぎてから本格的なトレーニングに取り組んだ自身の体験をもとに、「トレーニングを始めるのに遅すぎるということはない」「安全に正しく取り組めば必ずよい結果が出せる」をモットーに幅広く活動中。