「朝、顔洗う、歯を磨く、腹筋する」高橋尚子 【名言ニュートリション】




トレーニングを日常の一部にしてみよう

愛称「Qちゃん」、今なお人気を誇る元マラソン選手、高橋尚子の言葉である。

「朝、顔洗う、歯を磨く、腹筋する」(Tokyo FM「JOGLIS:ライズTOKYO presents 高橋尚子 Keep On Running」2016年7月30日放送回)

2000年のシドニー五輪では、オリンピック記録となるタイムで金メダルを獲得翌01年のベルリンマラソンでは、2時間19分46秒の世界記録で優勝。樹立した五輪記録、世界記録、日本記録は、その後、複数の選手に塗り替えられたが、上記2つのレースを含む、出場6大会連覇を達成するなど、一時代を築いたランナーである。笑顔を絶やさぬ温厚な人柄もあり、今なおメディア露出は絶えず、根強い人気を誇っている。

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高橋尚子は、現役時代、1日2000回の腹筋をこなしていた。長距離走の選手は、競技特性から体型は細いが、ウエイトトレーニングと自重トレーニングとを問わず、いわゆる「筋トレ」を行っている。2017年8月現在で世界記録を保持するポーラ・ラドクリフや、リフティングまで行っていた野口みずきらは、積極的にウエイトトレーニングを取り入れた代表格。中には、2015年に、まだ2度目のマラソンで日本歴代8位(当時)を記録した前田彩里のように、「筋トレ嫌い」を公言する選手もいる。だが、そんな前田も、その重要性を理解し、渋々ながらも筋トレに取り組んでいる。

だが、長距離選手の筋トレには、異論もある。例えば、2015年から箱根駅伝3連覇を達成する青山学院大学の原晋監督は、腹筋運動を否定する。腹直筋の肥大は余分なエネルギー消費を招くため不要という持論から、選手たちに腹筋運動を行わせていない。

長距離ランナーの腹筋運動の是非を問うことは、本稿の目的ではない。腹筋が割れていた高橋尚子にせよ、意図的に割らないようにする青山学院大学の駅伝チームにせよ、それぞれに結果を出している。ここでは、方法論が違うと述べるに留める。

問われるのは、方法論よりも、トレーニングの習慣付けだ。今回紹介する言葉は、高橋尚子が出演するFM番組において、リスナーからの質問に答えた際の発言である。「ランニング以外に、筋トレもしたほうがいいですか?」との問いに、「絶対、したほうがいいです」、「筋トレが、物凄い相乗効果を生んでくれる」と回答。ジムに行かずとも、ベッドの上での腹筋背筋などを、10回20回でもいいから実践することを勧めている。「朝、顔洗う、歯を磨く、腹筋する。なんか、そんなような感じで、身体の一部、生活の一部に、こう加えてしまうと、すごく楽にね、筋トレをすることができます」と。

ジムに行くのが億劫と感じるのなら、シャワーを浴びに行けば良い。発想を変えて、そのついでにトレーニングをすれば良いのだ。長距離のランニングを負担に感じるなら、短時間走ることから始めれば良い。高重量の挙上が苦痛なら、低重量から始めれば良い。そのうち走行距離は伸び、挙上重量も上がってくる。習慣化されれば、トレーニングしないことで不快感が催されるようにすらなる

まずは、「朝、顔洗う、歯を磨く、腹筋する」、そんな軽い乗りから始めよう。

文/木村卓二