「私は、失った時間のことは、決して考えない」ネルソン・マンデラ【名言ニュートリション】




失った過去を嘆くよりも、未来を見据えること。その姿勢でネルソン・マンデラが成し遂げた、人種間の歪みの矯正に比べれば、たった1人の自分自身の体を変えることは、いともたやすい。

「私は、失った時間のことは、決して考えない。そこにあるのだから、プログラムを遂行するのみだ。それは、私のため、綿密に計画されている」
I never think of the time I have lost. I just carry out a programme because it’s there. It’s mapped out for me. –Nelson Mandela (from a conversation with Richard Stengel, 3 May 1993. https://www.nelsonmandela.org/content/page/selected-quotes Copyright © 2010 by Nelson R. Mandela and The Nelson Mandela Foundation)

ネルソン・マンデラの名は世界史に太字で記されるものであり、その業績は言わずと知られたものである。だが、マンデラが逝去して4年の時が流れている。27年間に及ぶ獄中生活が終結した1990年から27年が経過した現在、その軌跡を簡単におさらいしてみよう。

反アパルトヘイト闘争に身を投じたネルソン・マンデラは、1962年8月5日に逮捕され、1964年6月12日に終身刑が確定し、1990年2月11日に釈放されるまで、四半世紀以上にも及ぶ獄中生活の大半を、悪名高き監獄島、ロベン島で過ごした(現在はユネスコ世界遺産)。1993年12月10日、アパルトヘイト廃絶への活動を評価され、ノーベル平和賞を受賞。1994年5月9日、南アフリカ大統領に選出され、以来、1999年に引退するまで人種間の和解に努めた。

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今回紹介するのは、当時『タイム』誌の記者であり、後にアメリカ第44代大統領バラク・オバマの下、2014年から2016年にかけて国務次官(広報・文化交流担当)を務めることになる、リチャード・ステンゲル(Richard Stengel)との会談における発言である(1993年5月3日)。「私は、失った時間のことは、決して考えない」と述べ、「そこにあるのだから、プログラムを遂行するのみだ」、さらに「それは、私のため、綿密に計画されている」と続けている。

この発言は、手紙やメモ、あるいは録音記録から引いたマンデラの語録集”Notes to the Future: Words of Wisdom” (Nelson Mandela,‎ Atria Books, NY, 2012)の82ページにも記されているが、ステンゲルとの対話全体の内容が不明である。だが、マンデラの大統領就任以前の1993年ということ、プログラムが単数形で述べられていることから推測するに、この言葉は、恐らく以下の様に解釈されよう。「私は、投獄され失った27年間を嘆いたりはしない。正式にアパルトヘイトを廃絶するのみだ。世間の支持は得られており、大統領選は、もうすぐだ」。

マンデラの壮大な人生から離れ、その言葉を自分自身に当てはめてみよう。怠惰な食生活、あれこれの理由でジムに行かない日、これらは過去のことだ。過去は現実だが、消すことはできない。ならば未来を見据え、過去を嘆くのはやめよう。よほどの僻地でなければ、ジムはある。ジム通いせずとも、肉体改造や健康増進の情報を得ることは可能であり、自宅でもロードでもトレーニングはできる。そう、環境とプログラムはそこにあり、あとは実行するのみだ。人種間の憎悪を超えて世界を変えることに比べれば、自分の体を変えることは自分の意志だけの問題であり、容易なことなのである。

参考
The Nelson Mandela Foundation公式HP (https://www.nelsonmandela.org)

文/木村卓二