アライメントトレーニング① <つま先立ちメソッド>【目からウロコ! カラダ・ニューアングル】




視点を変え、発想を変えると体は目覚める!「なるほど、そうだったのか!」の、発見やセオリーを知れば一歩進んだトレーニングが見えてくる!
『つま先立ちで若返る!』(飯田潔 著/文響社)P74-75

つま先立ちでいい姿勢を作る

いい姿勢にはたくさんのメリットがある。これは誰でも知っていることだ。ところが、姿勢をキープするのはなかなか難しい。

「背筋を伸ばして!」「お腹を引っ込める!」「アゴを引いて!」などの注意や意識づけだけでは長持ちせず、すぐに元の猫背や反り腰などに戻ってしまう。このやり方で維持できるのはよほど意志が強い人だろう。

また、いい姿勢というときは、ほとんどの場合が静止した体の状態を指している。しかし、静止させようと意識すると体が緊張してしまうのでスムーズに動くことができない。どのようにでも動ける実用的な姿勢であることが重要なはずだ。

こうした問題を解決するためには、実用的ないい姿勢を自然に見つけられる(感覚的にわかる)ことが大切になってくるはず。体の感覚として定着していけば忘れないからだ。

その手段として、「つま先立ちになる」というメッソドがあるらしい、との情報を聞いた。つま先立ち? バレリーナの立ち方かな? というぼんやりとした印象を持っていた。

つま先立ちのメソッドを「つま先立ちで若返る!」(文響社)という一冊の本としてまとめたのが、アライメントトレーニング指導者でフットトレーナーズ代表の飯田潔氏だ。

読んでみると、シンプルかつとても納得できる内容が盛りだくさんで、何度も「なるほど!」と膝を打つ本だった。
これはぜひ実際の指導内容を知りたい!ということで、飯田氏を訊ねてみた。

飯田潔氏は、スキー用品の輸入会社からキャリアをスタートさせた、シューズとインソールと足の専門家だ。日本オリンヒック委員強化コーチングスタッフをつとめ、全日本スキーチームのテクニカルスタッフとして、ソルトレイク、トリノ、バンクーバーという3つのオリンピックに帯同するなどして、上村愛子など数多くの選手をサポートした。

現在は幅広いジャンルの、プロからアマのアスリート、また足腰の不調などに悩む人まで含めて、シューズ選び、インソール製作、トレーニングでケアしている。

「インソールを使うことで良い結果が出ますが、それだけですべてが改善するわけではない。足元のことをやるのに体全体を知らないといけないと思って、トレーナーの資格も取り、体とインソールの関連や、効率よく体を使うことを追求してきました」(飯田氏)

そこから、「つま先立ちメソッド」をはじめとする「アライメントトレーニング」の発想が生まれた。アライメントとは 姿勢や動きを大きく左右する、人間の骨格の配列・並びのことだ。

アライメントが崩れていると関節や筋、靭帯などに負担がかかってケガの原因になる、またスポーツでは、力を地面に伝えらないなどの問題が発生し、ジャンプ力・スピード・瞬発力などパフォーマンスを低下させてしまう。

つま先立ちはなぜアライメントを整え、いい姿勢を自然に導くのか?

人の体重(自重)を支えているのは足裏だが、どの部分に体重がかかるかによって姿勢は大きく変わってくる。重心が極端に前に行けばつんのめったような状態になり、後ろに偏れば猫背になりやすくなる。

足裏はある程度の広さがあるため、足首から上の姿勢が崩れていてもなんとかバランスをとれてしまうのだ。

もし足裏に竹馬の足ほどのスペースしかないとしたら、正しい位置に重さが乗っていなければ立っていることさえできない。

重さの乗る範囲をあえて狭くして正しい重心の軸を作り出す方法が「つま先立ち」だ。

つま先立ちメソッドの発見は偶発的だった。ある走り幅跳び選手の足首を試合前にゆるめたところ、柔らかくなりすぎて結果が出ないことがあった。それはなぜなのかを考えたという。

「接地する時、無意識に足首やヒザを固めるタイトネスがどう働くかを考えると、体を持ち上げようとする力と、下がろうとする力がつり合ってそうなります。しっかり力を受け止めて押し返している足には硬さと強さが生まれます。体重が乗る範囲を狭くすると、股関節も使える。これは理論を完全には理解しなくても、やってみると感覚でつかめます」(飯田氏)

つま先立ちでしっかりした重心の軸ができると、骨盤のちょうどいい位置、ニュートラルなポジションが自然にわかってくる。歩く、走る、自転車を漕ぐといった基本的な動きがラクになり、個別のスポーツでもパフォーマンスの向上が期待できる。

上手に地面を押すことで下半身は上半身を効率よく持ち上げる。つま先立ちでつかむ感覚は、こうした体のしくみにのっとっているから、誰もが理解しやすい。

では、基本のつま先立ちのやり方を紹介しよう。

(1)足の指先は真正面を向けて、腰幅で立つ。

(2)かかとをゆっくりと上げていく。かかとは上げすぎない。少し浮かす感じでもOK。靴の前3分の1くらいに体重をかける感じ。

(3)今度は体を低くしていく。足首・膝・股関節が、すべて90度になるくらいまで曲げて体重がしっかりと乗るように意識する。

(4)足裏をしっかりと押しながら足首・膝・股関節をまっすぐ伸ばし切るような感じで立ち上がる。

(5)立ち上がった状態からゆっくりとかかとを下ろす。

これを繰り返すと「つま先立ちスクワット」になる。

次回からは実際の指導にそって、アライメントトレーニングを詳細に見ていこう。

飯田潔(いいだ・きよし)
1969年、東京都出身。「フットトレーナーズ」代表取締役。元日本オリンヒック委員強化コーチングスタッフ。元全日本スキーチーム・テクニカルスタッフ。カラダの動きを考えたシューズ選びやインソール作り、アライメントトレーニングなどでプロアスリートから一般の方までをサポートしている。著書に「つま先立ちで若返る!」(文響社)など。
(株)フットトレーナーズ

取材&文/押切伸一