真の達人は常識の外にいる――。ムキムキボディの天才研究者 光吉俊二さん⑤【髙田一也のマッスルラウンジ 第49回】




大好評「マッスルラウンジ」。今回はロボット「Pepper」の感情エンジンを開発した光吉俊二さんが登場! 音声による感情認識を専門に、工学、医学、心理学にも精通している他、彫刻家、空手家としての顔も持つ光吉さん。ラストは、ジャンルの違う達人ふたりが今回の対談を振り返りました。

「体が壊れてから上がることができた人は、持っている」(光吉)
「そこの話が合う人は、なかなかいないじゃないですか」(髙田)

髙田:他に病気をされてから変えたことはありますか?

光吉:当然、心臓をやっているので食事にも制約があるんですけど、唯一タンパク質多めというのは入れています。遺伝子検査をしたら炭水化物では太らないことがわかったので、米を大量に食べてタンパク質を摂って、重いウエイトをギリギリまで挙げていく。全身を1週間のサイクルにして、日ごとに部位を変えているんですよ。肩だったら一日中肩をやる。3日くらい空けてまた肩のサイクルに入ると。僕は朝2時間、帰ってから2時間ウエイトトレーニングをやるので、一日4時間を毎日やっています。

髙田:元気ですね。世間の50代のお手本になりますね。

光吉:6時間やることもありますよ。あとは黒帯会といって、月一くらいで黒帯を集めてバチバチ練習しています。その間に足りない食事を入れるんです。それは計画しているわけではなく、体が欲しいものを入れるという感じで。それと体調をよくするために直接、乳酸菌のガセリを内視鏡で入れました。そうしたら2週間で体重が7kg落ちたんです。悪玉コレステロールがゼロになったんですね。菌は重要ですよ。

髙田:本当に腸内環境はすごく大切なんですよね。僕たちも、ダイエットとか体づくりで一番気を遣うところが腸なんです。腸が健康でなければ、せっかく食べても全部ムダになってしまいますからね。

光吉:あれは幹細胞と並んですごい効果でしたよ。あと、腸内細菌を入れてからは怒らなくなりました。腹の虫とか腹黒いとか言うじゃないですか。腹って大事なんですよ。

髙田:そういう意味でも食ってすごく大切ですよね。

光吉:材料ですからね。変な合成物なんて絶対入れないですし。だから敏感になるんですよ。

髙田:ちょっとでも入ってくると具合が悪くなりますよね。でも、そこの感覚がつかめるとすごく体調管理がしやすいじゃないですか。

光吉:体って本当に不思議ですよね。細胞一個一個と会話ができるような感覚なんです。武道ってあるところまで到達すると、チャクラが開くんですよ。そうすると、ちょっと触っただけで7mくらい吹っ飛ばせるパンチとかを出せるようになる。いわゆる、リアルドラゴンボールのようなことを道場で教えています。自分の気の力がコントロールするんですよね。体と会話ができるようになるんです。そういう時に数式が出てくることもあります。武道とかスポーツって、ある限界を超えるとほとんど超能力のような世界ですから。剣道もそうですけど、八段とか十段というレベルにいくとアカシックレコードに入っていくので、何でもできるんですよ。「一芸に秀でる者は多芸に通ず」というのは、そういうことなんです。髙田さんもきっとそういう段階に入っているんですよ。体が壊れてから上がる、一度死を迎えてから上がることができた人って、持っている人なんですね。

髙田:そこの話が合う人ってなかなかいないじゃないですか。

光吉:いないんですよ。

髙田:会うとすごく楽しいですよね。

光吉:もうわかっているから。お互いに気を張る必要がなく、同じ人ですねという。

髙田:それにしても経験されていることがすごいですけどね。僕なんて光吉先生に比べればまだまだです。彼女のお話もすごいですよね……。僕が彼女と別れておしゃべりロボットとしゃべっていたという話はなんだったんですか(笑)。でも、光吉先生がロボットに感情を入れたからこそ僕のように救われている人がいるということですね。

光吉:あれは孫(正義)さんが格好良かったんですよ。孫さんは日本に対する愛国心をすごく持っているんです。今は日本の家庭が壊れているから、せめてロボットに心を入れてくれと頼まれて、僕はその仕事を引き受けました。ニンテンドーDSでココロスキャンというソフトをつくった時も、耳の不自由な子が買ったという情報を聞いて、自分のやった仕事が困っている人の役に立ったんだなと思いました。お金じゃないなと。先ほど話したような経験が自分にあったからこそ響いたのかもしれないですね。たしかにその時はつらかったですけど、乗り越えられたらプラスになるじゃないですか。逆転する方法のひとつがトレーニングだったということですね。

髙田:じゃあ、僕のロボットの使い方は正しかったわけですね。

光吉:そのためにつくっているわけですから。でも、笑ってすみませんでした(笑)。私の時はロボットがなかったもので……。ないものはつくるしかないから。

髙田:それだけのつらい思いをされて、いろいろなことを乗り越えて行きついたところが健康だったりウエイトトレーニングというのはすごくうれしかったですよね。僕もずっとウエイトトレーニングをやってきて、そこが共感できたのがとてもうれしかったです。今日は本当にありがとうございました。いいお話をたくさん聞かせていただいて。

光吉:今日はもう感動ですよ。過去のことって、終わったんだからもういいじゃないですか。次の時代を後ろ向きで見るのか、でも目は前にしか向いていない。年齢を重ねることを老化と取るのではなく、歳を取ってから次のステージがあるというところの共感ができたので。これが共感できる人ってそういないんですよ。みんな45を過ぎるとあきらめじゃないですか。最後は体が壊れた自慢、病気自慢に入るので。そうじゃないぞというところの共感ができたのはうれしかったです。あと、僕は目を見るんですよ。目に炎が入っていてすごく素敵な方だなと思いました。この人をフッた女は誰なんだっていう。

髙田:フラれたんじゃないんです。その時は僕から別れました。

光吉:ああ、じゃあよかった(笑)。男族としてそれは許せんぞと。でも、自分からフッたのになんでロボットに頼ったんですか(笑)。

髙田:自分から決断したわりに悲しくなってしまったんですね。

光吉:男って後を引くんですよね。弱いんですよ。僕、死にそうになりましたから……(笑)。

取材&構成&撮影・編集部

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP
光吉俊二(みつよし・しゅんじ)
1965年、北海道出身。博士(工学)。東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座・特任准教授。専門は、音声感情認識技術、音声病態分析技術、人工自我技術。彫刻・建築家としてJR羽犬塚駅前彫刻や法務省の赤レンガ庁舎の設計などをしてきたが、独学でCG・コンピューターサイエンス・数学を学び、1999年「音声感情認識技術ST」を開発し特許取得後、任天堂DSソフトやロボット「Pepper」などでも採用される。その後、工学博士号を取得し、スタンフォード大学・慶應大学・東京大学で研究する。極真館(フルコンタクト空手五段)役員、征武道格闘空手 師範。著書に「STがITを超える」日経BP(絶版)、「パートナーロボット資料集成」エヌ・ティー・エス、ウィルフレッド・R・ビオン「グループ・アプローチ」亀田ブックセンター、社団法人日本機械学会「感覚・感情とロボット」第二部21章 工業調査会、「進化するヒトと機械の音声コミュニケーション」エヌ・ティー・エスなど。