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アスリートの食のステータス向上を目指す!【サッカー日本代表・長友佑都専属シェフ・加藤超也氏インタビュー】




東京マラソン2019の参加者及びすべてのランナーをサポートすることを目指したプログラム『#amexrun for 東京マラソン 2019』の一環として、2月9日(土)に行われたイベントの講師を務めた、加藤超也氏。そもそも彼は、なぜ料理の道へ進み、長友佑都の“食トレ”のサポートをするようになったのか?

アスリートの“食”をサポートをしたい
その思いからSNSで直接アタック

――現在は長友佑都選手の専属シェフとしてご活躍されていますが、そもそも料理の道へ進むことを決めたきかっけを教えてください。

加藤:きっかけの一つは、私の父親が建築家であったことです。幼い頃から、親が手掛けた建築物を実施に見て、モノづくりやデザインをすることに触れ、自分で自由に設計し、アイデアが形になるのは非常にかっこいいなという思いがありました。

――建築への道へ進もうとは思わなかったんですか?

加藤:高校は建築学科でしたし、親の事業を継ぐつもりで建築士を目指すという志はありました。ただ高校卒業が近づくにつれ、残念ながらその道にあまり興味が持てず、何か違った形でモノづくりや表現として発信していきたいと思うようになっていたんです。

――でも、すぐに料理の道へ進んだというわけではなかったんですね。

加藤:はい。高校卒業後は今とは畑違いの業種の企業に就職したのですが、そこで4年務めた末に、やはり表現の道へと進みたいという強い思いが出てきました。そこで決めたのが料理だったんです。22歳のときに会社を辞め、神奈川県内のレストランで働くようになりました。

――その後修行に励み、イタリア料理店でシェフに就任したとのことですが、長友選手の専属シェフになるに至った経緯は?

加藤:当時勤めていた横浜のレストランに中澤佑二さん(横浜F・マリノスなどに所属した元サッカー日本代表選手、2018年シーズン終了後に引退)がよく来てくれていたこともあって、アスリートを食の面からサポートしたいと思うようになり、資格取得などで準備を進めていました。ただ当時は“アスリートの専属シェフ”という職自体が成り立っていたわけではなく、どうやって選手にアプローチしたらいいのかわからずにいたときに、長友選手がコンディショニングのために食事にこだわっているということをSNSで知ったんです。

――そこで長友選手に連絡を取ってみることに。

加藤:僕自身、アスリートをサポートしたいとは思っていましたが、“選手自身も同じ気持ちで取り組んでくれる”というのを条件にしていました。その点、長友選手はまさに食への意識が非常に高い方だったので、そのときはやっていなかったSNSのアカウントを作り、彼だけをフォローして、メッセージを送ってみました。送ったのは夜中の3時頃だったのですが、翌朝9時頃には「興味あります」と返事がきたんです。

――いきなりメッセージを送ってきた相手にしっかりと返事をくれたんですね。

加藤:後に本人から聞いたのですが、“なぜアスリートの専属シェフになりたいか”が明確で、そのための資格取得など今日明日では絶対にできない準備を進めていた点に、情熱を感じて興味を持ってくれたようです。

――熱い思いが通じて長友選手との二人三脚がはじまったんですね。2016年夏にサポートをはじめた当時はイタリアのミラノ、そして今は移籍によりトルコのスタンブールに在住していますが、それぞれ環境はかなり違って難しいところもあるのではないですか?

加藤:そうですね。トルコはイスラム教ということもあり、豚肉が一般的に売っていないという問題があります。またイタリアと違い、なかなか日本の食材が手に入りません。動物性のタンパク質を摂りたいと思ったときに、選択肢が鶏肉か牛肉になるというのは難しさがありますね。豚肉があったほうがチョイスの幅が広がるので。

――逆に、イスタンブールで良かった点はありますか?

加藤:目の前が海で、新鮮なお魚が毎日水揚げされることです。それはミラノにない環境です。彼に「ミラノとイスタンブールのどちらかいいか」と聞いたら、「新鮮な魚が食べられるほうが幸せだから、断然イスタンブールのほうが好き」と言っていました。

――セミナーの中でも、魚介類から良質なタンパク質、脂質を摂るのはオススメだとおっしゃっていましたね。

加藤:はい。魚にはオメガ酸系脂肪酸が含まれていて、それは体にとって必要な必須脂肪酸、つまり摂らなくてはいけないものなんです。それを多く含んでいる魚を、日本ではスーパーに行けばお刺身として買えるのは素晴らしい環境です。手軽に生魚を買って食べられる国は、僕が今まで行ったことのある国ではほぼありません。調理をしなくても、少量のごはんとマグロのお刺身を食べる、それだけでも良いリカバリーになります。

今後の目標は“食”のステータスの向上

――長友選手の日々の食事をサポートされていますが、献立はある程度先まで考えておくのか、あるいは日々変えているのですか?

加藤:日ごとに変えます。というのは、やはり本人のコンディションや気分がどう変わるのかはわかりませんし、それに合わせて柔軟に対応するのが食事だと思っています。常にその日の状況や本人の希望などを聞いて綿密にコミュニケーションを取ったうえで、献立を決めるようにしています。

――今日のように、加藤さんがトルコを離れているときはどのようにしているのですか?

加藤:奥様と連携を取りながら作ってもらっていますね。

――長友選手から掛けられた言葉で、印象に残っているものはありますか?

加藤:最近の話ですが、彼は昨年10月に肺気胸のケガをして、ドクターからは全治2ヶ月と言われました。早くても実践復帰は1月頃になるとのことでしたが、結果的に予定より早く復帰でき、1月に行われた日本代表のアジアカップにも出場できました。そのときに「ここ2年間ケガなくプレーできていることも含めてすべてシェフのお蔭だ」と言ってくれて、それは僕自身のモチベーション、バイタリティになっていますね。

――最後に、今後の目標を教えてください。

加藤:1つは、彼が2022年のカタールワールドカップに出ると公言している以上、一心同体の気持ちで僕も一緒にやっていくこと。もう1つは、食事のステータスをもっと上げていきたい。コンディション作りのためには食事が大切だと、より多くのアスリートの意識を変えていただくのが僕自身の役割だと思っています。また、選手の意識が変わっていくことで、僕のような仕事も増えていけば嬉しいと思います。

取材・文・撮影/木村雄大

加藤超也(かとう・たつや)
1984年1月22日生まれ。2006年から4年間イタリア料理の修行を積み、2010年からは神奈川県横浜市のイタリア料理店「Cucina Pinocchio」にてシェフに就任。2016年7月より長友佑都の専属シェフに就任し、現在はトルコ・イスタンブールと日本を行き来しながらサポートに従事。その他、岡崎慎司(レスター・シティFC/サッカー)、富樫勇樹(千葉ジェッツふなばし/バスケットボール)、田渡凌(横浜ビー・コルセアーズ/バスケットボール)、涌井秀章(千葉ロッテマリーンズ/野球)の妻である押切もえなど、さまざなアスリートに関わる料理サポートを実践している。

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