2005年大阪選手権での予選落ち。そのくやしさをバネに、それ以降は一年間1日も休みなくトレーニングを続けている辻田勲選手。トレーニング量を増やすことで、ようやく結果がついてくるようになったそうです。マグナムフィットネスセンターで黙々とトレーニング中の辻田選手を直撃しました。
――ボディビルを始めたきっかけはなんですか。
辻田:高校生の時、学校にバーベルやコンビネーションマシンがあったんです。運動部の生徒がトレーニングをするためのものだったのですが、それをこっそり使っていました(笑)。朝昼晩と3回やっていましたね。本格的にジムに入ってボディビルを意識したのは高校を卒業してからですね。
――初めてボディビルの大会に出たのはいつですか。
辻田:2005年大阪選手権ですね。予選落ちでした。自信をもって出たのですが全然ダメでしたね。その時、周りを見てね、「これは本気でやらなアカンねんな……」と思いましたね。
――大きな大会で初めて入賞したのはいつですか。
辻田:翌年(2006年)の大阪選手権で5位に入れました。その一年間はがんばったんで、「いけるやろ!」とは思っていました。
――そこでボディビルダーとしての自信がついたんですね。
辻田:いやいや、まだまだ同じレベルの人がいっぱいおったんで、自信なんかつかなかったですね。少し自信がついたのは全国大会(2007年日本クラス別選手権85㎏級6位)に入賞してからですね。練習でも入賞している選手たちよりもがんばったという自負がありましたからね。
――辻田選手は年中無休でトレーニングをしているそうですが、どうしてなのですか。
辻田:2011年の西日本選手権で予選落ちした時ですね。結果が出なかったので、「これじゃダメだ。何年経ってもこのペースじゃ追いつかない」と思ったんです。そしたらトレーニングは増やすか減らすかしかないでしょ? だから増やしたんです。
――仕事をしながらトレーニングを続けることは大変だと思うのですが、調整はどのようにしているのですか。
辻田:仕事もやりますがトレーニングもやります。あとは家に帰ってゆっくりする残りの時間を減らすか、寝る時間を削るかしかありませんね。でもそれは僕が特別なんじゃなくて、僕より上の人はみんなやっていますよ。そうでなかったらあんな体ができるわけない(笑)。「どんな練習しとるねん!」って思いますもん。
――そこまでボディビルに賭けるのはなぜですか。
辻田:「もう少しでタイトルが取れる」と思って……そんな状態が何年も続いている感じですかね。
――そのタイトルの魅力はなんですか。
辻田:うーん……。別にお金をもらえるわけじゃないですしね……。ただパンフレットに名前が載るだけですけど(笑)。特別な価値観があるわけじゃないですね。
――自分の体を見られる快感があるとか。
辻田:あまりないですね。「ボディビルをやってるぞ!」みたいな感じを出すのは嫌いなんです。いつもこっそりとやっています(笑)。
――夏場にタンクトップで歩いたりはしないのですか。
辻田:しないです。恥ずかしいんで、なるべく目立たないように、長めのシャツを着ています(笑)。
――奥様やご家族はボディビルをやることについて何か言っていますか?
辻田:ひんしゅくを買っていますね。大会終わるたびに「もう辞めるんやろ?」とか言われます。返事はしませんけど(笑)。
――食事の管理とかはどうしているのですか。
辻田:減量に入ったらずっと同じものをつくってもらっています。鶏を蒸すだけなんですけど(笑)。それをポン酢で味付けして、後はサラダを食べるくらいです。
――ボディビルダーの定番メニューですね! 減量の時、「焼き肉を死ぬほど食べたい!」とか思いませんか。
辻田:減量に入ると思うこともありますけど、僕の場合、普段は体重を落とさないように食わなくちゃいけないので、むしろ早く減量に入りたいくらいです。放っておくと体重が落ちてしまうので、100㎏をキープできるようにどんどん食べなくちゃいけないんですよ。だから食うのがしんどいんですわ。普段は体重を落とさないように炭水化物とかも関係なく食べるようにしていますね。
――職場のみなさんはボディビルをやっていることは知っているのですか。
辻田:バレましたね。大会前になったら真っ黒に日焼けするし、名前を検索したら出てきますから。
――真っ黒の日焼けのまま出社するのですか。
辻田:隠している場合じゃないのでそのまま行きますね。昼休みも太陽が出ていたら肌を焼きますよ。前は見られるのが嫌やったけど、そんなのなりふり構っている場合じゃありませんからね。でもみんな同じだと思いますよ。みんな会社では白い目で見られながら同じことをしていると思います。
――今後の目標を教えてください。
辻田:ジャパンオープン選手権のタイトルを取れていないので(2012年11位、2013~2016年3位、2017年4位、2018年3位)、取りたいですね。他にもアジア大会とか世界選手権にも出たい気持ちはありますが……こればかりは人が決めることですから、選ばれるように努力するしかないですね。
【辻田勲のトレーニング】
取材・撮影/神田勲
1969年6月24日、兵庫県出身。ジャパンオープン選手権2012年11位、2013~2016年3位、2017年4位、2018年3位。高校時代からトレーニングに目覚め、ボディビルの世界に入る。2011年の西日本選手権で予選落ち以降、トレーニングは年中無休、一日も休まず行なっている。