糖質を完全カットして筋肉が萎えてしまったら、逆にリバウンドしやすい体になる
中野:それが違うんですよ。食事の前菜として出てくる感じです。飲み物はコーラですね。その後、ラーメンが出てくるみたいな(笑)。
石井:私は北里大学の糖尿病センターと筋トレの共同研究をやっているんですけど、糖尿病の人に対しても、どのくらいの糖質なら摂ってもいいかという判断は難しいようです。ですから一般の人の適量というのはなかなか明確にできないと思います。摂りすぎがよくないのは当然なんですけど、完全にカットして筋肉が萎えてしまったら逆にリバウンドしやすい体になってしまいます。その人の生活習慣によっても変わってくると思うので、ちょうどいいところというのは個々が試行錯誤するしかないような気がしますよね。
――万人に合う正解はない。
石井:そう思いますね。
中野:私も栄養指導をする時は、その人が炭水化物が好きなのか、糖を摂りすぎているという認識はあるのか、といったリサーチをした上で、自分で気づいていくように心理学的なアプローチを意識しています。でも、そこでいつもメディアの情報が邪魔をするんですよ。「中野さんはそう言うけど、テレビではこう言ってました」とか「ユーチューバーはこう言ってました」とか(笑)。最終的にどちらを信じるかは本人次第でいいんですけど、皆さんやっぱり迷ってしまいますね。
石井:実際には、本人が糖質をカットしているつもりでも食事にはそれなりに入っていたりしますから、体の中でどのくらいの糖が減ったかはわかりにくい面もありますよね。筋肉や肝臓が糖質をグリコーゲンとして貯蔵しようとする反応はけっこう強いんですよ。ですから摂取した糖質の余分なものがグリコーゲンとしてローディングされる状態がつねにキープされていて、体の中で糖質が余剰にならないようにコントロールされているのがポイントだと思いますね。
中野:余剰になってしまったら、どう消費するのかということですよね。そこで運動が効果を発揮する。
石井:余剰になった分は脂肪の合成にも使われますが、すでに太っている人は脂肪を合成するキャパがなくなってしまっています。すると処理できない糖質が残ってしまって糖化ストレスという悪いストレスを生み出してしまう。ですから脂肪にも余力がある状態――つまり倉庫として機能できるような状態にしておくことも重要ですね。