筋力トレーニングが一般に広く普及してきている昨今。とはいえ、世の中には様々な情報があふれ、どれを信じればいいのか選択が難しいもの。VITUP!はつねに信頼できる情報を意識してお届けしているが、さらに向上心のある人には専門家の書籍やセミナーなどを活用し、ノウハウを吸収することもオススメしたい。
今回は、埼玉県草加市に5月1日にオープンしたベルクススポーツジム草加谷塚店にて行なわれた、ボディビルの現役チャンピオン・鈴木雅のセミナーの模様をレポートする。
ゴールデンウィーク初日の4月27日、埼玉県草加市に5月1日にオープンしたベルクススポーツジム草加谷塚店にて、全日本ボディビル選手権9連覇中の絶対王者・鈴木雅が「バルクアップと絞りの両立」をテーマにセミナーを開催した。ジムオープンを記念して行なわれたこのセミナーには、ジム会員を中心に約40人のトレーナー・トレーニーが集合。前半の講義パート、後半の実技パートで現役チャンピオンから直接指導を受けた。
前半の講義パートでは、バルクアップのトレーニングのためにまず「フォームの大切さ」を伝えるところからスタート。正しいフォームとは何か?という指導のなかで『見た目がきれい』と思われる方もいるようだが、鈴木の言う正しいフォームは「解剖学に従って、しっかりと動かせているか、理にかなっているか」だと言う。
「筋肉の付き方と、体の使い方を覚えて正しいフォームでトレーニングを行なわないと、筋肉に刺激を与えることはできません。例えば、ダンベルフライが苦手だ、なかなか胸に効かないと言う人がいますが、そういう人は肩が出てしまっています。この状態だと、力学的に言うと、胸は収縮しますけど重さが胸にかかっていません。重力運動なので、どのように力がかかっているのか、胸の筋肉の収縮のためにはどうしたらいいのか。ダンベルフライなら、重さに従ってヒジを開いていくような動きでやると効いてくると思います」
背中のトレーニングを行なう際にも、腕の引き方や、ワンハンドとツーハンドの違いによって効き方が変わってくることを、ホワイトボードを使ったり参加者に実践してもらったりしながら説明。肩幅や肋骨、鎖骨の形などの違いによっても、同じやり方でトレーニングを行なっても効き方は違うと伝えた。つまり、自分の体の特徴もしっかりと知ったうえで、本当に効くやり方、すなわち正しいフォームでトレーニングを行なうことが大切だということだ。
その他にも、座った状態でのトレーニングの際の骨盤の位置、ベンチプレスの足の置き方や股関節の開き方・角度、トレーニングによっては目線を一つ変えるだけでも効き方が変わってくることなど、さまざまなトレーニングにおいて効かせ方を変える方法について説明していった。
さらに、「トレーニングの命と言っていいものだと思います」として話しはじめたのは、グリップの重要性だ。
「よく、指であまり握らない方がいいと言われたりもしますよね。指で握ると、手首を返しやすくなります。クローズグリップでのベンチプレスなどをやってみるとわかりやすいと思いますが、楽に返せるぶん、腕橈骨筋を使ってしまう習性があります。
今度は中手骨、指の付け根当たりで握ってみてください。自然に手首が返り、動きづらくなると思います。そうなると腕橈骨筋、つまり前腕を使いづらくなります。サイドレイズでも同じで、指で握ってしまうと、腕橈骨筋で挙げるようになってしまいますが、手のひらの真ん中あたり、小指側から中指下の手のひらで握るような感じで手首がちょっと返るような状態にすると、腕橈骨筋の負荷が少なくなります。グリップ一つにしても握り方が変われば効いてくるところが違うということです」
トレーニングに関する話はここでひと段落し、テーマは、絞りのための「食事」へと移っていく。
「一番大切なのは、カロリー計算がきちんとできているか。一般的にどれくらい摂ったらいいというのがよくありますが、人によってぜんぜん違ってきます。いっぱい食べても太らない人もいれば、ちょっと食べると太る人もいます。1日に自分がどれくらいのカロリーを消費しているのかを覚えておくといいでしょう。基礎代謝よりカロリーを摂らなければ確実に体重は落ちますが、必ず頭打ちになりますし、摂ったタンパク質をエネルギーに使ってしまうので、筋肉量が落ちてしまいます。なるべく、基礎代謝以上は摂るようにしたほうがいいと思います」
カロリー計算の基本の話の後は、「食べるもの」について。減量をするためにはPFCバランス(タンパク質、脂質、炭水化物のバランス)を元に「何を摂るべきか」を考えるのは大切だと話すが、そのなかで特に大切なのは、「自分に合うもの、合わないものを把握すること」だと話す。一般的に玄米から炭水化物を摂るのがいいという声も多いが、鈴木の場合は白米とオートミールから摂っているという。
「私の場合、玄米だとなぜか全くパンプしないし、お腹も張るんです。あと浮腫んでしまいます。やはり体が受け付けてないということですね。消化している感じもしません。だから、体の反応がいいものを摂るようにしています。体の反応がいいとは、『汗をかく』『パンプする』ものです。肉類も同じで、私の場合は鶏肉をあまり摂らず、牛肉やサーモンを多く摂っています。基本的に食べではいけないものはないと思いますが、自分に合わないものは必ずあります。減量をしていくのであれば、少し自分に敏感になってみてください」
最後は食事の「タイミング」について。これについては「自分のプライベートを明かしているようでちょっと恥ずかしい……」と話しながら、鈴木の一日の生活の中でどのタイミングで何を摂っているのかを細かく解説。朝7時半に起床し、夜2時半に寝るという鈴木が「夜1時に牛肉とご飯を食べているし、朝は卵を8個くらい食べている」と話すと、会場から笑いの空気に包まれた。「食べるタイミングは大切ですけど、夜に炭水化物を摂っていけないという決まりはありませんから」と鈴木。
トレーニングと食事についての濃密な講義パートは90分という時間を感じさせないほどあっという間に終わり、最後は質疑応答へ。参加者から多くの質問が飛び、一つ一つ丁寧に回答して講義パートは終了した。その後はサイン会や、参加者との写真撮影や個別の質問に応じた後、ジムエリアでの実技パートへと続いていく。
文・撮影/木村雄大
取材協力/ベルクススポーツジム草加谷塚店
ベルクススポーツジム草加谷塚店
〒340-0024 埼玉県草加市谷塚上町271-1
ベルクスタウン草加谷塚 B棟
鈴木雅(すずき・まさし)
2016年 世界ボディビル選手権80kg級優勝、アーノルドアマチュアボディビル選手権80kg優勝。さらに2010年から昨年まで、全日本ボディビル選手権で9連覇中。