パラスポーツのゴールボールを体験しました~実技編【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第77回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 学生の皆さんは夏休みも残りわずか。宿題がまだ終わっていない方は頑張ってください。

さて、今週はゴールボール体験の後編です。実際にアイシェードを着用してディフェンス、シュートにチャレンジしてみます。まずはディフェンスから。ラインを触って自分が正面を向いていることを確認することが何よりの基本。明後日の方向を向いてしまっていてはゴールを守ることはできません。

シュートが来たら音で方向を察知してブロックするのですが、頭側、足側でそれぞれのポイントがあります。頭側にボールが来たときは必ず上の手(写真では左手)を顔の前に持ってくるようにします。

こうするのは顔にボールが当たるのを防ぐためです。前回のコラムで書いたようにボールは重くて硬いので、ものすごいスピードで転がってきたシュートを顔で受けてしまうと、ケガをしてしまいます。見えない中で顔付近にボールが来るのは本当に恐怖です。とにかくゴールを守るのと同時に自分の身も守らなければいけません。

顔に当たると大変!

足元にボールが飛んできた場合は、少し足を開いてブロックするようにします。バウンドしながら転がってくる場合が多いため、横になった体に少しでも高さを出して、上を通過されないようにするためです。

基本を教わったところで、実際に投げてもらってシュートブロックをしてみます。アイシェードを着用すると一切光が入らないため、周りはまったく見えなくなります。しかし、人間の五感というのはなかなか優秀で、集中して音を聞くとどこにボールがあるのかが意外とわかるものです。音が鳴ったほうへ体を滑らせながらボールをストップします。ちなみに肌が露出していると、床との摩擦で体を滑らせることができないので、大半の選手は長袖を着用、あるいはサーポーターなどをして摩擦を避けるようにしています。

ゆっくり投げてもらっているため、音が鳴ってから動いても十分に反応できます。実際の試合ではみんなで同時に動いて足音でかく乱したり、あるいはボールを曲げたりして、相手にコースを読ませないような駆け引きをしています。また、自軍ボールとなったら10秒以内に投げ返さないといけません。次々とボールが行き来するので、休む間もなくハードな展開が続きます。下の写真のようにお腹にボールが直撃してダメージを受けても、のんびり倒れてはいられないのです。

腹筋を鍛えていても痛いんです

ディフェンスに続いてはシュートです。投球のルールとして、投げた(転がした)ボールは、自軍のチームエリアとニュートラルエリアの両方でバウンドさせなければいけません。見えない中で、そこでバウンドするように投げるのは慣れないと大変です。この時も守備同様、ラインに触れて自分の体を正面に向けることが最初の一歩になります。

足でラインを確かめる

体が正面を向いていることを確認できたら投げてみます。自分ではけっこう前に進んで投げたつもりでも、実際にはラインよりもかなり手前で投げてしまっています。実戦ではこれでは全然ダメです。

 

およそ1時間の体験でしたが、視覚を奪われることで、ラインを触る触覚、鈴の音や足音を聞く聴覚といった、その他の五感の重要性をすごく感じることができました。トップ選手は目が見えているのでは?と錯覚してしまうくらいので早さで動きます。東京2020パラリンピックでは、世界のトップ選手のプレーをぜひ味わってみてください。

 

写真/矢野寿明

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。