髙田さんのジムにはなぜ海外からも人が集まるのか?【髙田一也のマッスルラウンジ 第56回】薩田有紀代さん③




大好評「マッスルラウンジ」。今回は千代田区飯田橋と港区田町に店舗を展開する、完全個別指導型パーソナルトレーニングジムBiP(ビップ)の代表取締役であり、太極拳の元世界チャンピオンという異色の肩書を持つ薩田有紀代さんが登場。3回目の今回は、それぞれのジムの会員層からパーソナルトレーナーとしての心構えに話が移っていきました。

「体が変わるとその人の人生も変わる」(薩田)
「トレーナーは生きざまを見せる仕事」(髙田)

髙田:薩田さんご自身のトレーニング事情は?

薩田:私は15年くらい太極拳をやっていましたので、その間は毎日やっていました。経営に携わるようになってから、時間が取れなくなって今は太極拳を一時的にお休みしているんですけど、一応、世界大会で優勝したこともあります。

髙田:すごいですね。

薩田:大会が2年に1回なんですけど、個人戦で2013年優勝、2015年準優勝、2017年優勝です。直接相手と闘うわけではなくて、演武ですね。フィギュアスケートのように、審査員が点数をつけるんです。個人戦と団体戦があって。

髙田:昔から太極拳をやられていたんですか。

薩田:社会人になってからですね。中学、高校は器械体操をやっていて。もともと体を動かすのが好きだったので、就職してから太極拳を始めました。

髙田:太極拳をやられていた期間はどんなトレーニングを?

薩田:ストレッチとか体操とか、股関節や足回りの柔軟性を高めるためのものとか、片足を持ち上げて蹴り出すゆっくりな動作を右足10回、左足10回3セットとか。あとはただひたすら宇宙の気を丹田に溜めるとかですね。

髙田:ウエイトトレーニングもやっていたんですか。

薩田:やらなかったんですよ。使う筋肉も違うと思うので、やっていたらよかったなと思いますね。私は中学、高校と器械体操部で段違い平行棒とかをやっていたので、もともと腕回りは少し自信があったんです。でも、それまでまったく自信がなかった下半身を鍛えて太極拳で優勝できたので、体ってやればやるほど変わるんだと実感できました。太極拳を習いに来てくださった80代の女性の方に、家でできる簡単な体操を教えて毎日やってもらったら、杖がなくても歩けるようになったんです。「人生が変わりました」とおっしゃっていただけて、すごくうれしくなりました。体が変わるとその人の人生も変わると知ることができて、体に携わる仕事ができたらいいなと思っていました。うちのジムで70歳、80歳向けとかもやりたいんですけどね。髙田さんのジムはどれくらいの年齢層なんですか。

髙田:幅広いですよ。上は70歳くらいから、下は中学生です。その中でも30代後半から50歳くらいが多いと思いますね。

薩田:うちも30代~50代が多くて、女性が6割ぐらいです。男女比はどれくらいですか。

髙田:おそらく男性のほうが多いと思います。

薩田:この近辺(新宿御苑)にお勤めの方が多いんですか。

髙田:いえ、うちの場合はいろいろなところから来てくれるんですよ。さっき来られていた方は静岡ですし。

薩田:え! 静岡? すごい。

髙田:他にも金沢とか岐阜とか、関西からも。埼玉、栃木あたりだと近いねくらいの感じですね。遠いところで言うと、インドネシアとか。

薩田:インドネシア!?

髙田:ニューヨークの方もいますし、LAの方もいますし。

薩田:すごい……。帰国の都度、ジムに来るみたいな。

髙田:そうですね。ジムを目的にして帰国していただくこともあります。

薩田:やっぱりファンがつくんでしょうね。

髙田:ありがたいことに、予約が全部埋まってしまうんですよ。今日もこの取材の時間だけは空けておいたんですけど、あとは休憩なしで回っていますし。でも、フリーの時もそんな感じだったんですよね。1日で13人とか。

薩田:1日13人!? 最低でもひとり1時間はかかりますよね。

髙田:もちろんそうですね。自分がどうしてもなりたくてなった仕事だったので、いただける仕事は全部受けたいじゃないですか。フリーの期間は8年くらいだったんですけど、10人~13人くらいを週6で教えていました。でも、一人ひとりのクオリティを下げたら終わりなので、ずっとテンションは張ってやっていましたけどね。その間にボディビルの大会に出たり、減量したり。先ほどお話ししたように、トレーナーって生きざまを見せる仕事だと思うんですよ。忙しい人たちに対して、どういう風に生活の中にトレーニングを入れてもらうかがポイントなのに、もし自分が「今、忙しいのでこれができないんです」と言ってしまったら、それこそ終わりだなと。だから健康管理も完璧にして。

薩田:疲れました、風邪で倒れました、今日はできませんとは言えないですよね。

髙田:絶対に骨折しても休まないとか、心構えを持ってトレーナーになったんです。そのくらいの気持ちじゃないと、たぶん人がついてこないだろうと思いましたし。実際に筋肉を切ってしまったとかいろいろあったんですけど、そういう状況でもどうやったらできるかを考えました。でも、トレーナーってそれが仕事だと思うんですよ。みんなができないと言うことでも、どうやったらできるかを教えることが仕事だと思っているので。それをまず自分がやってみせるということですね。

取材・構成・撮影/編集部

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP

薩田有紀代(さつた・ゆきよ)
株式会社BiP代表取締役社長。大日本印刷株式会社、株式会社クロス・マーケティングを経て2018/4~BiPに参画。会社員時代から、太極拳の武術的動きの真髄を用いた身体の根本的な動かし方と、陰陽五行論に基づく考え方をお伝える活動を行う。印刷会社における研究所や工場の生産性向上・人材育成・教育の経験、消費者調査やマーケティング理論に基づき、独自の視点でBiPの経営を行っている。「人はなぜ、カラダを変えたいのか?」。人間心理に基づく、BiPオリジナルトレーニングメソッドを提供。
●太極拳実績
・2013年、太極拳世界大会優勝
(楊家老架式太極拳108式:白級個人戦・団体戦)
・2015年、太極拳世界大会。
黄級個人戦2位、藍級団体戦3位
・2017年、太極拳世界大会優勝
(楊家老架式太極拳108式:黄級個人戦)
BiP公式HP